2/4
夜の戦い①
夏葉は刀を鞘から静かに取り出した。浮浪者は地面を蹴り飛ばすと凄まじい速さで移動した。
その時に爪かなにかで引っ掻いたのだろう。
夏葉のスカートが切り裂かれていた。
「お前は魔物か?」
「答える義務は無いね。神崎さんよう。あんたを食べたらどんな味がするかなあ」
浮浪者は引き攣るように嘲笑う。ボロボロのフードから覗かせる顔はとても人とは呼べないものだった。
「何人喰ったんだ?」
刀を握りしめ、夏葉は空を睨む。
「数えてねえよ~!喰って喰って喰いまくったぜ。赤ちゃんだろうが女だろうが、俺は差別しないのさ。全て平等に食い物だからナア」浮浪者は舌をべらべらと揺らしながら爪で地面を切り裂く。夏葉は刀を握りしめ臨戦態勢に入った。
路地裏の夏葉の右手にあるレンガ造りの建物がみしみしと悲鳴をあげながら崩れ落ちた。
浮浪者はまるで土竜のように地面に入り込み逃げた。
ガラガラガラガラ
煙が湧き出ながら瓦礫の山ができた。割れたレンガの欠片を蹴り飛ばし、夏葉は刀を地面にぶっ刺した。
ははは、阿呆が地上でがむしゃらに攻撃したところでこの俺には届かない。