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「あとで触らせてもらったんですけど、めちゃくちゃ柔らかかったんで拗ねました」

「すみません……私のレベル不足で……」


 素材もいいとこ揃ったというので、そういえばまだ見せたことのない刀を確認してもらった。

 そこでしばし打ちのめされたヌル子ちゃんは、慰めるまでもなく立ち直り、うっひょーと折られた刀の断面を舐めるように検分した。舐めるように、というか、ちょっと舐めてた。……必要な工程だったのだろう。


 それで、僕の刀の復元についての見解がコレ。


「そもそも剣っていうのは、熱で溶かした鉄を型に流し込んで作るんです。断面を見てください」


「……なんか、均一だね」


「そうです。流し込んだ時にできた縞模様も少しありますが、大体均一ですね」


 それでこちらなんですが、とヌル子ちゃん。

「二層……?」

 Vの字を二つ重ねたような模様だ。


「フフン。素人さんにはそう見えるでしょうが、よーく観察すると、木の年輪のように何重にも織り重なっていることがわかります。ね?」

「言われてみれば、……そう、かも?」


 もう一つフフンと鼻を鳴らすと、ヌル子ちゃんは胸を張った。小柄ながらも凹凸の強調されたラインがより際立ち、黒のインナーが悲鳴をあげている。


「そんなわけで。なんでこうなってるかわかんない以上、今の私にはまだ無理です……」

「うん。待つよ」

「……ハイ」


◆◆◆


「なんで同じ部屋なんですか⁉︎ 2回目ですよ⁉︎」

「ヌル子ちゃんが女の子だから……」


 第二界層、温泉宿にて。


 人類がほぼ完全に掌握しているのは、草原の第一と荒野の第二まで。食糧や資材はこの辺で大体賄われており、大体の探索者はこの二つで活動している。


「まぁ、試作試作でいくらお金あっても足りないのは事実ですし、節約のためなら仕方ないと思いますけど……」


 森林の様相を呈している第三界層からは魔物も一段階パワーアップしており、そことの境目に宿を用意すれば、ちょっと第三を覗いてみようという探索者も助かるという構図だ。


「だからって、変なことしたら許しませんからね!」


 僕たちの当面の目標は、ヌル子ちゃんが直してくれた刀を持って、二人で第五界層にあるというクロームスミス家の拠点にたどり着くことだ。


 無謀なパーティがいたずらに踏み込んで酷い目に遭わぬよう、ギルドではパーティをランク付けして出入りできる界層を制限している。僕たちはそのために、実績を積み上げないといけないのだった。


「温泉行ってくるね」

「どうぞ。私もあとで行きますけど、覗かないでくださいよ!」


◆◆◆


 いい湯である。

 健康とか肩こりとかはよくわからないが、大人たちがありがたがる気持ちもわからなくはない。


「……ふぅ」


 どうして、ヌル子ちゃんはあんなに相部屋を嫌がるのだろう。

 僕のことが嫌いなのだろうか。

 本当に、僕は実家に認められるための手段ってだけなのだろうか。


「ぶくぶくぶく……」

 イヤな気持ちを吐き出すように、気泡を立ててみる。


 ……これで晴れたら苦労はしない。やっぱり、あとで聞いてみよう。


「わー! すごい広ーい!」

「! やぁ、ヌル子ちゃん! ちょうどよかった」

「うわァアアアァアァーッ⁉︎」


 なにがあったか、ヌル子ちゃんはとても驚いて、足を滑らせてしまった。


「危ない!」

 とっさに落ちてた石鹸を拾い、足の下に置いて滑走。倒れかかったヌル子ちゃんを抱き止める。


「……ふぅ。よかった」

「〜〜っ! ヘンタイ! ありがとうだけどヘンタイ! 覗くなって言いましたけど、逆転の発想ですよ! ヘンタイ!」


 ヘン……タイ……。




「待って待ってヌル子ちゃん。話がわからない。ヘンタイとはどういう言い草なの」


 僕はヘンタイなのか?


「なんで女湯でそんな堂々としてるんですか!」

「ヌル子ちゃんだって堂々としているだろう! 女性らしい身体で、とても立派だ!」

「どヘンタイ!」

 頬を張られた。全然痛くないが、心は少しズキズキする。


「女湯でそんな態度をとる男の人なんて、ヘンタイ以外の何者でもありません!」

「男の人⁉︎」

 男の子だって?


「えっ?」

「ちょっと、ちょっと待ってヌル子ちゃん……誤解だ」


 触れているヌル子ちゃんの体が冷えてきていたので、そのままお姫様抱っこで湯船へ。


 その上で、僕は彼女の前に立ち姿を晒した。


「え? 無い?」

「な、…………無いといえば、無い」

 こんな形で性別を証明する日が来てしまうとは。

 日頃の粗野な態度のせいだろうか。改めなければ。


「いえ、その。前々から男性にしては線が細いとは思っていましたが……」


「そりゃ僕も、女の子にしては背も高いし、筋肉質だし、胸もないし、髪も短いし、改善できるところはしようとしたさ」


「かい、ぜん……?」

 ヌル子ちゃんは放心寸前だ。誤解を解くためにも、早く復帰してほしい。


「あ、はい。はい。ヌルレイン、わかりました。はい。すみません、ずっと男の人だと思ってました」


「うん。こっちこそ、なんかごめん」


「……」

「ヌル子ちゃん?」


「ちょっと待ってください。女の人だってわかって、その……しばらく、顔見れそうにないです」

「どうして……」

 今日中に勇者の追放してくるヤツと再開する部分まで投稿できたら……と思います


「戦闘だと無敵なのに女の子相手だとからっきしな子、いいよね」と思っていただけましたら、画面やや下にブックマークとか☆☆☆☆☆マークとか感想とか色々あるので、背中を押す感じて触っていただけると幸いです

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