表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

オトナアシスタント

「本当によかったんですか、ヒナギクさん」


 第三と第四の境目も近付いてきたところで、ヌル子ちゃんが尋ねてきた。


「よかった、って……なにが?」

「あの男の人のことですよ。仕返しとか……」

「そのときはそのときだよ。今までの分はさっきのでおしまい。向こうが蒸し返すなら、僕も応えるさ」

「……ふぅん」


 どこか飲み込めないような様子で、ヌル子ちゃんは立ち止まり、両手を伸ばした。


「少し疲れました。おぶってください」

「いいよ」


 第三界層に来て昨日今日のヌル子ちゃんが、ここまで来れただけですごいのだ。おんぶの一つや二つ、とも思ったが。


「まだ話すなら、向かい合ってほうがいいだろう」


 せっかくなので、横抱きにする。これなら顔も近いし、ヌル子ちゃんの顔も近いし、ヌル子ちゃんが見られる。


「お、おひ、お姫……さま……」

「お姫様?」

「…………ありがとうございます……」


 ……気を失ってしまった。


◆◆◆


 第四界層にだけ生えている、夜にぼんやり光るというスイセンを一輪摘んで、ヌル子ちゃんとギルドへ。


「はい、確かに。勇者マサムネ・ヒナギクさま、鍛治師の……あら、ヌルレイン・クロームスミスさん! あらあら、でしたら目的は第五界層ですね?」


「ええ。これからよろしくお願いします、……えっと、」

「はい。マサムネさま専属のギルドアシスタントの、クエス・アンスウェルと申します。クエスと気軽にお呼びください」


「すみません。よろしく頼む、クエスさん。あと、ヒナギクと呼んでほしい」

「クエスさん、よろしくお願いします」

「はい、ヒナギクさん、ヌルレインさま」


 化粧品の匂いが蠱惑的なクエスさんは、ガチガチに凝り固まった肩を鳴らしながら小首を傾げた。


「…………」

 ヌル子ちゃんのじっとりとした視線が、僕に突き刺さる。


「必要でございましたら、勇者さま向けに第四界層以降の案内もございますが、いかがですか? 内容が内容なので、ヌルレインさまには席を外してもらうことになりますが……」


「……? 僕ひとり、ですか?」

「はい。うふふ……」

 クエスさんは妖艶な仕草で唇を舌で湿らせ、意味深に微笑む。


 敵意は感じないので悪いようにはされないと思うが、どうなんだろう。と、ヌル子の様子を窺うと、

「ふぬぬぬぬぬぬぬ……」

 すごい形相でクエスさんを睨んでいた。


「フフン……」

 それを見て、クエスさんも大人の余裕を見せつけるような得意顔だ。


 僕にはわからない領域で、二人の戦いが繰り広げられている――。


 これからお世話になる人だし、こんなに早くヌル子と仲良くなってくれたようで嬉しい。


 少し寂しいけれど、そんなことを伝えてもしょうがないだろう。


「ヒナギクちゃん、22時までには帰ってきてくださいね」

「あら、そんなに早く? 仕方ないことですよね、お子様ですからね」

「うぎぎぎぎぎ…… 」


 いいなぁ。僕にも姉妹兄弟がいたら、こんな感じだったのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ