勇者打倒/fake braver→slash down & slag off.
数日ぶりに再開したフェブレイは、……なんというか、疲れ果てていた。
見栄っ張りで見せかけにこだわる人だったのに、何があったのか。
「ヒナギク……テメェのせいだぞ」
……なんだ?
「おかげさまで酷い目に遭った……あの二人も、オレを置いて行っちまった……!」
すらりと、ロクに手入れされてない剣を抜くフェブレイ。……あれが自慢していたクロームスミスの剣か。そう言われると、出来がいいのかも知れない。
「酷い目に遭ったのは僕の方だ、フェブレイ。どうして僕の刀を折った?」
「気に食わなかったんだよ、最初から! お前がヘンなヤツで目立ちそうだからパーティに入れてやってたが、つまんねぇことにこだわりやがって! 師匠との約束だ? 誇りある戦い? 誉れある生き方だっけか? 邪魔くさいから代わりに折ってやったんだよ! どうだ、スッキリしたんじゃないのか!」
…………。
「傑作だったぜ、あの時の顔は。今思い出しても、フフ……笑えるぜ。最高だった。あぁ? そりゃ新しい剣か? 貸してみろよ、またオレ直々にへし折ってやる……」
…………。
「なんとか言えよ、この疫病神! いなくなってもオレに迷惑かけやがって! ……また来ると思って待ってたんだぜ? パーティとでじゃなきゃお師匠さんは会ってくれないんだったもんな……。お前みたいなクソヤロー、オレ以外が面倒みるわけねーだろ!」
…………。
「だからよ、戻ってこいよ……なぁ。なぁヒナギク、なぁ!」
「あなた、最低ですね」
……ヌル子ちゃん?
「ヒナギクさんは、ずっと気にしていました。自分が悪かったんじゃないか、なにか迷惑をかけてたんじゃないかって」
「アァ?」
「そのときのことはわかりませんけど、あなたの態度を見てよぅくわかりました。あなた、最低です」
……ヌル子ちゃん、
「テメェにオレたちの何がわかる! パーティなんだよ、仲間なんだよ、オレとヒナギクは……。お前みたいな苦労も知らない、バカなガキとは違うんだ。……よく見りゃいい身体してんじゃねえか。今ここで裸になって謝れば、ヒナギクと一緒に囲ってやってもいいぜ?」
――――。
「もういい。聞くに堪えない。ヌル子ちゃん、これ預かってて」
「でも、向こうはクロームスミスの……」
「大丈夫。君の選んでくれた僕は、あんな奴に剣を使う僕じゃない」
「……はい!」
ペチペチくんをヌル子ちゃんに手渡し、その辺の枝を手折る。
「なんのマネだ? ふざけやがって、クソヒナギク!」
上段からの振り下ろし。僕はそれに、横払いで合わせた。
シン……と、清廉な金属音を響かせて、クロームスミスの剣は両断された。さすが鍛治の名家の商品だ、無駄な抵抗が一切なかった。
「これで刀の方はおあいこだ――」
まだ事態を飲み込めていないフェブレイの頬を、思いっきり殴り抜く。
「――そしてこれは、ヌル子ちゃんにひどいことを言った分」
◆◆◆
「一つ、答えさせてやる」
意識を取り戻したフェブレイに声をかける。
「くそッ、くそッ! お前なんかに……」
「一つ、答えさせてやる――と言ったんだ。余計な口はきくんじゃない」
軽めに威迫……首元に刃を当てがうイメージ……を投げてやると、フェブレイは命乞いでもするように薄ら笑いを貼り付けた。
「折った僕の刀の先をどこにやった?」
「……第四界層だ。赤い池に放り込んでやったよ……くっくっくっ……」
赤い池……湿地の第四界層の中でも特に異質な土地だ。探すとなると少し厄介だな……。
「ありがとう、フェブレイ。このまま大人しく帰るなら、第二界層までこの子たちに送ってもらうよう頼むけど」
毒陣が解かれ、アルファくんたちが近寄ってくる。太ももに擦り寄ってきたので肩の辺りを撫でてあげると、座り込んでしまった。……ヌル子ちゃん、その顔は嫉妬なの? 魔物に嫉妬するの……?
「この子たちに変な真似したら、ただじゃすまないから。どうする?」
「は、はい……おねがい、します……」
いぬ。
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