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クリック・ファンタジー ~私の連打はすべてを滅ぼす~  作者: C-Low
第一章 目覚め、森、異世界! ~人類最弱から成り上がれ!~
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スキルを試してみよう

ステータスの諸々を確認し終え、無事にスキルも発現できた。

これで私も異世界チート主人公の仲間入りだー!!


「ふふふ、【破壊の指先デストロイ・フィンガー】ッ!!」


スキルを発動しながらビシッ!! っと厨ニなポーズを決める。特に意味はない。


うーん、嬉しすぎてテンションがおかしくなっているみたいだ。

無視を決め込んだとはいえ、まだサバイバルのリスクは解決できたわけじゃない。

一旦冷静になって、生命線であるこのスキルを把握しなきゃ。

すーはーすーはー。


「ふぅっ。よし! 生き残るためにがんばるぞー!」


切実である。

落ち着いたらちょっと焦ってきた。だが無駄な焦りは判断を鈍らせるので禁物だ。

まずは【破壊の指先デストロイ・フィンガー】の効果を実験しよう。


スキル説明には『クリックした対象のHPを減らすことができる』とあった。

スキルを発動しながら指先で突けばいいのかな?


ダメージは『能力値』に依存とも書いてあったけれど、これは未開放だからエラーになっている。

つまりそのうち『能力値』なるものが解放されるのは確実……だけれど、これ鶏が先か卵が先かみたいなことにはなってないよね……?

もしかして『能力値』を参照できないからダメージ0とか……?



「ううむ! 案ずるより産むが易しっ! 最初の犠牲者はキミだっ!」


判断要素がないのでとりあえず突いてみよう。

記念すべき初の獲物に選んだのはそこら中に生えている雑草だ。


しゃがみ込み、手近な雑草をスキル謹製手袋の真っ白な指先でつんつんしてみる。


「つん、つん、つん」


指先が触れるたびにそこから微弱な光の粒のようなエフェクトが散る。

スキルの判定はされてるみたいだけれど……。


「なかなかっ……倒せっ……ないなっ……!!」


 しばらく突いても光の粒が舞うだけで変化はない。

 もう手の動きもつんつんからダダダダダと連打に変わっている。

 うーん? これは壊せないのかな?


「あっ!! き、消えたっ!!」


 根本的な勘違いの可能性を考えそろそろターゲットを変えようかと思ってきた時、突如突いた場所にしか出なかった光のエフェクトが雑草全体から発せられ、やがて雑草そのものが光の粒へと分解されて消滅したのだった。


「やったよー!! 私倒したよー!!」


 今日から私も雑草スレイヤーだ!

 大変不名誉な肩書にも胸を張りたくなるような達成感が溢れ出る。


 大丈夫、このスキルはちゃんと機能する。

 何はともあれスキルの使い方もわからないまま息絶えるという最悪の事態は避けられた。



「あとは早く"強化要素"をアンロックできれば……」


 強化。

 それこそクリッカーをインフレに導く最も重要な機能。


 倍率を上げられる"転生システム"も大事だが、0になにを掛けても0であるように基礎のクリック威力を決定する"強化要素"はなくてはならない。

 某クッキーを無限に焼き続けるゲームであれば、クリックに応じて手に入るポイントを使いクッキーを焼く人員や建物などの施設を購入していく。


 そうすることで、クリック単位の入手ポイントが増えたり、クリックせずとも自動でポイントが得られるようになったりするのだ。

 私が今、たかが一房の雑草の駆除ですら苦戦しているのも、恐らくこのクリックの威力の基本数値となる要素が解放されていないからだろう。

 RPG式のレベル制の可能性もあるけれど、あらゆるクリッカーゲームに共通する基本要素なのでこれがないハズはあり得ない、と思うけれど……。



「今のところ、『能力値』っていうのが最有力候補かな」


 最初の討伐(?)を経ても未だロックされたままの機能に期待を寄せる。


「とにかく、【破壊の指先デストロイ・フィンガー】は敵を倒せる。あとは強くするだけ」


 まだ私の運命は安全圏に到達できていないけれど、スタートラインには無事に立てたようだ。


 赤ちゃん時代から丹田で魔力を練るとかよくわからない闘気を知覚するとか、悠長なことを要求される大器晩成型スキルでないことは非常に助かった。

 今日明日にでも、なんなら数秒後にですら死ぬ可能性がある今の私には、可及的速やかなスキル強化が必須。


 まぁクリッカーは数字的には大器晩成型のゲームではあるけれど、それは成長曲線が凄まじく初期とは比較にならないほど跳ね上がるからというだけであって、成長のハードルが高いわけじゃない。

 むしろ(これが適切なバランスであれば)しっかりクリックしていくことで順当にインフレしていくのだ。

 伸びにくくなる難所もあるけれどそれは序盤ではない。



 「1日だけ、このスキルの育成に全てを賭けるっ……!!」


 人間が水分を摂らずに生きていられる時間は約3日がいいところだという。

 早めに飲水を確保したいけれど、命がけのギャンブルに挑むには私はあまりに弱すぎる。


 私に残された時間は僅かだが、幸いクリッカーの成長倍率はそこらのRPGの比ではない。

 恐らく各機能が解放されるチュートリアルレベルの慣らしを終えるだけでも、貧弱JKが異世界定番のゴブリンとかウサギといった雑魚モンスターに余裕で勝てるようになる……なるはずだよね……?

 とにかく、衰弱して探索が困難になる前にスキルを強化できれば勝ちは決まったようなものなのだ。



 あとは私の心が折れずに雑草をつんつんできるかどうかだけ。

 ここさえ切り抜ければ、バラ色の異世界ライフが私を待っている。


「まずは能力値ないし強化機能のアンロック! やったるぞーー!!!」


 決して負けられない戦いが幕を開けるのだった。

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