1.どいつもこいつも全員馬鹿じゃないのか
「ええーっと、なんで俺。会ったばかりのセシリア嬢に強く睨まれているのかな……?」
「忘れたとは言わせませんよ、サイラス様。よくもっ、よくもっ、私だけのお姉様を襲ったりして……!!」
白い花柄ワンピースを着たセシリアがこちらの腕にしがみつき、困ったように笑っているサイラスをぎりぎりと睨みつけていた。小花柄ブラウスとベージュ色のキュロットパンツを着たレイラがふうと、深い溜め息を吐く。
(やっぱり失敗だったかなー、教えたの。まさか、セシリア様が水着選びに付いてくるとは)
ここはショッピングモールの時計台の下で、午前中だからか人は少ない。白いタイル床の上に立ったサイラスとエディは困ったように笑っており、それぞれ、白いTシャツの上から黒いジャケットを羽織っている。
(うわ、二人が並ぶと壮観だな……口が裂けても絶対に言わないけど!)
ああ、そろそろ。現実逃避も限界かもしれない。隣に立っている筈のアーノルドの顔が見れない。それに絶対に被りたくないからと言って、チェック柄シャツを着てきたのは愚かしい選択だと思う。夏も盛りを終えて、秋に向かっているとは言えども、恐ろしく似合わない────……。
「襲った? ……襲ったって一体。何の話ですか、サイラスさん?」
「うわっ!? お前っ、滅茶苦茶怒ってんじゃん!? やばいな、何その顔!? あ~、やっぱり普段の俺に対する態度は怒りじゃなくて、どちらかと言うと、おわっ!?」
「エディ、お前。いたよな? 傍に」
アーノルドは本気で怒ると真顔になってしまう。ごくりと唾を飲み込み、エディの胸倉を掴み上げているアーノルドの肩をぽんと叩いた。
「まっ、まぁまぁ。無事ですから、未遂だしもう終わった話なんだし、」
「お前もお前で、どうして俺に言わなかったんだ?」
こちらを振り向きもせず、アーノルドが静かな銀灰色の瞳でエディを見つめている。長い睫がふっと揺れ、こちらを見下ろした。
「どうして言わなかったんだ? ちゃんと説明をしてくれよ、レイラ」
「お兄様……ほら、落ち着いて? ここはレイラお姉様の可愛くて偉大な妹である私が、ちょっといっそ去勢手術でもしてみて、」
「ええ~? セシリア嬢って見かけによらず、大胆な性格だなぁ~。俺、君みたいな美人になら何をされても許せそう。跪いて忠誠を誓いたい」
「相変わらずちゃっらいですね、サイラス様は……」
じろじろとこちらを眺め回してくるショッピングモールの客に嫌気が差したのか、アーノルドは静かに溜め息を吐いた後、エディの白いTシャツをぱっと放す。
「ま、いい。後で俺と二人きりで話しましょうか、サイラスさん」
「え~? 嬉しくないなぁ、男からのお誘いは。こっちのセシリア嬢からのお誘いだったらいくらでも喜んで、」
「ちょっと、私の義妹に触らないで貰えますか?」
伸びてきた手を叩き落とすと、サイラスが途端に嫌そうな顔をする。エディと同じく鮮やかな赤髪を持っていたが、短く切り揃えられていた。そして、どことなく軽薄な雰囲気が漂っている。
「何だ? ……俺にブラコンだの何だのと言っていたが。お前だってシスコンじゃねぇか、ぐだぐだと口を挟んでくるなよ?」
「は? 私の愛情は健全そのものですが? サイラス様はちょっと頭がおかしいレベルのブラコンですよね? 人にシスコンだの何だの言う前に、自分のブラコンっぷりを直したらどうでしょう? まぁ、それだって手遅れなのかもしれないけれど」
レイラの言葉に対して、サイラスがにっこりと笑う。しかし、その淡い琥珀色の瞳はまるで笑っていない。こちらも負けじと、綺麗な微笑みを浮かべて迎え撃つ。やっぱり気に食わない、この男。少しはエディを見習えばいいのに。
「あっ、あの。二人とも、そのっ、レイラちゃん? 俺、君と水着を選びに行くの、そのっ、すっごく楽しみにしていたんだけどなー?」
「おっ、お姉様! 私のためにそこまで怒って下さってありがとうございます! でも、ほらっ? お姉様は今日、こちらのエディ様と愛を育むためにやって来たのですから、」
「おい、やめろ。何だ、その愛を育むってのは」
ぼやいたアーノルドがこちらの頭をぽんと叩き、疲れた様子で溜め息を吐く。
「レイラ、落ち着け。こいつのことは後で俺が殴っておくから。数発ほど」
「分かりました。じゃあ、もうやめておきますね……」
渋々と敵意を引っ込めていると、向かいに立ったサイラスが愉快そうに笑う。どうも、この男は常に笑顔を浮かべていないと気が済まないらしい。屑だ、屑。
「ははは、俺。目の前にいるんだけどなぁ~。まぁ、いいや。それじゃあ選びに行こうよ、水着をさ! あーあ、俺だって、エディと一緒に遊園地に行きたかったのにな~。最初に言い出したのは俺なんだけどな~。それをどこぞの糞女が乗っかって、」
「兄上? 何か言いましたか? 俺の気のせいですよね?」
エディが真顔で振り返ると、サイラスはにっこりと爽やかに微笑んでその肩を叩く。
「勿論だよ、俺だけの可愛いエディ君! お兄ちゃんが後でお前にソフトクリームでも買ってやろうか? ああ、そうだ。ソフトクリームと言えばお前は三歳の頃に、」
「今すぐ黙らないと強制送還する。分かったか?」
「……はい、分かったよ。黙る、黙るから……」
その落ち込んだ姿がエディそっくりで思わず笑ってしまう。ああ、でも。
「何でアーノルド様の連絡先を知っていたんですか? サイラス様?」
「エディに教えて貰った~、イェーイ。俺、噂の女殺しに会ってみたかったんだよね~! ははっ」
「そんな理由だったんですか……? というか噂って何?」
「噂は噂でしょ、アーノルド様。格好良いだの何だののやつですって。どーせ」
「やけに風当たりが強くないか、レイラ? まぁいい。行くか……水着を選びに」
「うーん。なるべく露出は控えたい気がするけど……かと言って、海でそれはちょっと勿体無いような気がする」
「俺はこっちの水着がおすすめかな! レイラちゃん!」
「エディ、それ。スポーツ用じゃないか……?」
エディが焦った表情で取り出してきたのは、明らかにマリンスポーツ用の水着だ。一切の露出が無い。サイラスが腕を組んで、不思議そうに首を傾げていた。
(分かりやすいなぁ、エディさんってばもう)
くすりと笑い、口元に指を当てる。すると、何故かエディが顔を赤くさせた。淡い琥珀色の瞳が戸惑って潤み、そっと水着をハンガーラックへと戻す。
「あっ、ああ。俺、ちょっとレイラちゃんにはあんまり露出して欲しくないというかその、」
「ブラジリアンビキニはどうだ? レイラ嬢」
「うわああ、それって何かもう。布地の意味あります?」
「あるある。陰部と乳首さえ隠しておけば、警察に捕まらないからさ~」
サイラスが取り出してきたぺらぺらの卑猥な、赤と黒の水着を見て虚ろな笑みが浮かんでしまう。すると、アーノルドがやって来て溜息を吐き、「却下です」とだけ言って奪い取ってゆく。
「あ~、何だ。やけに過保護だなぁ? アーノルド君?」
「やめてください、べたべたと俺に触らないでください」
「お姉様ーっ! こちらのっ、こちらのワンピースタイプの水着などどうでしょうっ!? 可愛いラベンダーカラーのフリルとリボンが甘盛りで、かつ清楚な雰囲気がお姉様によく似合っているかと!!」
「凄いな、シシィちゃん。息継ぎどこでしてんの?」
「さぁ、どこででしょうねぇ~……エディさん」
「ん? なぁに? レイラちゃん」
いいと思う水着はどれかなんて。聞くのはやめておいた方がいいだろうか、どうしようか? そうやって悩んでいると、エディがふっと困ったように笑って、こちらの頭を撫でてくれる。
「ごめんね、ぐちゃぐちゃ言ってたけど。俺と兄上の言葉なんか気にせずに、好きなのを選んでね?」
「えっ、あっ、はい……」
「エディ様! エディ様お好みの水着というのはありまして!? 柄とか形とか!!」
ひえっ、セシリア様。そんな呟きをごっくんと飲み干し、きょとんとした表情のエディを見上げる。
(ああ、何だろう。馬鹿みたいだ。こんなの。いちいち反応して気にかけて)
それなのに、胸がそわそわとしている。嫌だな、嫌だな。気が付きたくないな、怖い怖い。エディさん。
「俺は……そうだなぁ。うーん。レイラちゃんには可愛いレースとかフリルとか花柄とか。そんなのを着ていて欲しいけど……胸は出さずに足を出して欲しい! そう、まさしく今日のように!!」
「欲望全開だな、エディ……ほら、レイラ。これ着てこい、お前」
アーノルドが呆れた表情でやって来て、白いフリルの水着を押し付けてくる。それを受け取っていると、背後に立っていたエディがぎゃんぎゃんと騒ぎ出す。
「うわっ!? 陰湿、陰湿!! お前なぁ、レイラちゃんに選択肢は無いのかよ!?」
「陰湿~、陰湿~、やーいやーい!」
「ガキか、お前らは。いいから黙れ、鬱陶しい」
サイラスが笑顔で野次を飛ばしてくる。まったく、弟を応援する気があるのか無いのか。いまいちよく分からない。呆れて見つめていると、セシリアがこちらの肩を叩いて「お姉様……!! これっ、私の水着っ」と言ってきたので笑って受け取る。
「それじゃあ、これ。着てきますね、あとセシリア様おすすめの水着も」
「ありがとうございます、お姉様!」
セシリアがぱぁっと青い瞳を輝かせ、白い両手を合わせる。可愛い、サイラスでささくれだった心が癒されてゆく。
「ゆっくりでいいぞ、レイラ。あと、試着室はそこの角を右に曲がって大きな鏡が置いてある所の、」
「大丈夫ですって! 自分で探せますから! 過保護!!」
「そ、そうか……悪かったな、そりゃ。過保護で」
「すぐ拗ねるよなぁ、お前~」
「そんな面倒臭い男と結婚しても幸せになれないぞ~、俺の弟のエディの方が美形で賢くって可愛くて、」
「呪文のように唱えてくるの、本当にやめて貰えません? それじゃあ、行ってきまーす」
試着室の白いカーテンが完全に閉じたのを見て、サイラスが笑う。
(ああ、良かった。今日、無理矢理付いてきて)
俺が折角、アーノルドに連絡を取って計画したというのに。俺の大事な大事な可愛い弟のエディはよりにもよって、玄関先で俺を置いていこうとしたのだ。ふと後ろを振り返ってみると、異国の海のような青い瞳がこちらを見ていた。ほんの少しだけ濃いそれは気高く、こちらを強く睨みつけてくる。ああ、散々に嬲ってみたくなるなぁ。
「セシリア嬢? ……君のお兄様は、一体いつまでぐずぐずしているつもりなんだろう?」
「それはこちらが聞きたいぐらいですわ、サイラス様」
「おい、お前らな……」
「俺としてもそろそろ。……辛いんだけどなぁ」
嘘だ、辛いどころじゃないだろう。お前。ああ、可哀想に。あんな女になぞ縛られて。
「エディ……大丈夫だ、レイラ嬢もきっと、お前のことを好きになる。なっ?」
「本当にかな、本当にかな。兄上……婚約を解消しても、彼女が俺のことを好きになってくれないと何の意味も無いのに」
ああ、俺の大事な可愛い可愛い弟のエディ。俺がこの手で守ると決めたのに守り切れなかった。
『サイラス様、お母様は────……』
またあの時の繰り返しか。また何も守れないのか、俺は。
(いいや、そんなことは許さない。決して許してはならない。母上と同じ道を辿らせてなるものか、エディは幸せな結婚をするんだ。幸せな)
ああ、馬鹿な父上に母上。せめて、貴方達の愚かさと運命がエディに伝染していないといいが。
(愛する者の為にだなんてくだらない。反吐が出る。エディもエディだ、早く言ってしまえばいいものを)
それは彼女の平穏な日常を壊してしまうから。彼女が己の罪を知って慟哭してしまうから。エディ、エディ。俺の大事な可愛い弟。
「そう考えると彼女は本当に、薄氷の上で穏やかな日常を歩んでいるね? どうするんだろう、全てを知ったその時は」
「その時は。……エディの気持ちを受け入れるだろうさ、あいつも」
銀髪を揺らし、アーノルドが腕を組む。まるで、芸術家が魂を削って作り上げた彫刻のようだ。美しい。その滑らかな褐色の肌も長い睫も。エディが虚ろな表情で黙り込み、じっと試着室の方を眺める。淡い琥珀色の瞳がぼんやりと煌いて、その口が開く。
「嫌だ、俺は。……罪悪感なんかで結婚して欲しくない、だから一生黙ってる」
「俺は反対だよ、エディ。それでいいのか? 今すぐにでも喋ってしまえば、彼女だってお前のことを、」
「いい、俺は明日も。レイラちゃんが笑っていてくれたらそれで」
ああ、そうだろうよ。呑気な呑気なレイラ嬢はもう二度と、心の底から笑えないんだろう。それを知ると。気が付くとエディの胸倉を掴んでいた。エディが仄暗い表情で見返してくる。俺の弟、俺とそっくり同じ顔の弟。同じ日の同じ時刻に生まれたんだ、俺達は。今は唯一の、大事な大事な家族。
「はっきり言っておこう、エディ。彼女は傷付くぞ、いたくな」
「……そうかな? よく分からないや、俺」
「明日にでも話してしまえよ、エディ。明日も休みだろう? 早ければ早いほどいい……」
「絶対に嫌だ、言わない」
エディがふいっと目を逸らし、ただひたすらに試着室の方を眺める。ああ、エディ。エディ。
「馬鹿だよ、お前は。……俺はレイラ嬢が気の毒でならないな。俺が彼女の立場だったらお前を責める。自分を罵る」
「分かってくれるはずだ、レイラちゃんならきっと」
「黙っていてくれてありがとう」だなんて言うとでも? 彼女のことは嫌いだが、同情だけはしている。ああ、愛情なんて糞食らえだ。どいつもこいつも頭がイカれてやがる、思考回路が鈍っている。
「恋愛なんて、楽しんだ者勝ちだろうに……あーあ、まったく。といった訳でセシリア嬢? 俺と一緒にホテルのプールにでも行かないか? ほら、王族御用達の今年リニューアルする、」
「行きません。お姉様と一緒に行く予定ですの、私」
「さっきから俺の婚約者にちょっかいを出すわ、妹を口説くわで自由過ぎやしませんか? 後で殴るんで覚えておいてください」
「え~? はははっ」
どうしよう、変だったのかな。
(これ、脇腹が開いていたし……!! 露出が少ないと思っていたのに! アーノルド様の馬鹿っ!)
アーノルドが持ってきたのは一応、ただの白いフリル付きのワンピース水着だったのだが。
(それなのに、脇腹が開いてるってどういうことなの!? あと、一体どうして脇腹が開いているだけでこんなにエロく見えてしまうんだろう……)
ぱっくりと開いた脇腹には白いリボンが交差していて、胸元もややきわどく開いている。別に特別エロいだとか卑猥だとか、そんな感じじゃないんだけど。目の前に立ったエディが、その淡い琥珀色の瞳を見開いて、ぷるぷると震えている。言葉も出ないと言った有り様なのに、隣に立ったサイラスはじろじろと眺め回してくる。やめろ、顎を撫でるのは。変態感が凄いから。
「俺っ、どうしよう、俺っ、ちょっともう無理。誘拐犯が続出すると思う、これ!!」
「何で俺を振り返るんだよ、エディ。レイラを見とけばいいじゃないか、レイラを。生足が好きなんだろ?」
「いや、直視がなんか出来ないから……エロ過ぎて」
「えっ、えろっ!? ちょっ、着替えてきますっ!!」
慌ててカーテンをしゃっと引くと、サイラスが「俺は賛成ー! エディも嬉しそうだし! 目の保養!」と野次を飛ばし、セシリアもセシリアで「お姉様ー! 悔しいですけど、お兄様の選んだ水着にすべきですわ! エディ様の息の根を止めるのですっ!」と訴えかけてくる。息の根とは……?
「あのっ、私っ! これはやめて、セシリア様が選んでくれたものにしますね!?」
「もういっそのこと、海で泳ぐのを諦めない!? レイラちゃん!?」
「プライベートビーチだぞ、行くの。今回」
「っよしきた! 俺もその水着にして欲しいでーすっ! とりあえず、トムさんとかマーカスさんの視力を一時的に奪って、」
「おい、やめろ! この過激派が!! 何だよ? お前だって過保護じゃねぇかよ、おい……」
ううん、エディは賛成派か。
(それならそれで、ちょっと、これにしてみようかなぁ? でもなぁ~、でもなぁ~)
怖い、というか勇気がいる。それも沢山の。ああ、駄目だ。混乱している。ちょっと一旦落ち着いて思考を整理しないと。
「レイラちゃん、大丈夫? 顔が赤いみたいだけど? 気分でも悪くなっちゃった?」
「あっ、ああ。大丈夫です。どうも満場一致らしいので……この水着にしますね?」
「うん、いいと思う。よく似合っていたよ、レイラちゃん」
「あっ、いいのに。そんな」
エディが私のショルダーバッグを奪い取って、淡い琥珀色の瞳を煌かせ、悪戯っぽく笑う。いつもの鮮やかな赤髪が揺れて、何故か心臓がどきりと跳ねてしまった。
「いいの、いいの。ちょっとぐらい俺も、デート気分を味わいたいからさ? それじゃあ行こうか、レイラちゃん。もうあいつらみんな、レジに向かったみたいだし? ねっ?」
「あっ、ああ。ええっと、はい……」
すたすたと、上機嫌で水着売り場を歩いていく。鮮やかな赤髪が揺れて、また胸に鋭い痛みが走った。その鮮やかな色を見て、時折胸が痛むのは一体どうしてだろう。
「エディさん……」
叫んで手を伸ばして、泣いて縋ってしまいたくなるのは一体どうしてだろう。鳥肌が立って、それをぼんやりと眺めていた。誰かの悲鳴がこだましている。あなたは一体誰なんだろう。
「レイラちゃん? どうしたの? 早くおいでよ~」
「あっ、はい。ごめんなさい。ええっと」
「ん?」
「い、いや、何でもありません。行きましょうか!」
貴方の願いが私を苦しめていると、そんな誰かの呟きが聞こえたような気がした。でも、それは見る間に解け、私の中には残らなかった。ただ、正体不明の痛みだけが淡い恋心と共に降り積もってゆく。どうしようもなく苦しかった。




