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“魔術雑用課”の三角関係  作者: 桐城シロウ
第一章 彼と彼女の始まり
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日常魔術相談課劇場 白雪姫

 





「はい、とうとうこの時が来ると思っていましたよ、私は!!」

「悪いな、レイラ。主人公に抜擢されたばかりで悪いが、森へと追放されてくれないか?」

「あーのる、じゃなかった、お義母様? 一体どうしてですか?」

「先程俺が鏡で占ったところ、お前がこの国で一番美しい娘だと、そう出たからだ。つまり」

「つまり?」

「お前がいなくなれば、この国で一番美しいのはこの俺となる」

「いや、あの、あーのる、お義母様の方が断然美しいと思うんですけど……?」

「ジーン、じゃなかった。鏡からしたらそうらしい」

「はぁ、まぁ、そうでしょうね……」

「と言った訳で、お前は森へと追放だよ、白雪姫」

「やる気が無いな~」

「当たり前だろう? こんな、女王役だなんて……」

「物凄く似合ってますけどね、ドレス姿」

「おい、やめろ。レイラ。撃ち殺されたいのか、猟師に?」

「いいえ……」









「アーノルド君、じゃなかった、女王陛下に念の為に貴女を殺せと、白雪姫。その、私は命じられてやって来たのだが……?」

「うーん。ライさんは、いや、猟師さんは無理ですよね、そんなこと」

「ああ、無理だ。こんな、罪も無い娘さんを殺すだなんて……!! しかもそれが義母とは言えども、母親からの、そんな、命令だなんて」

「実際の猟師さんも、こんな感じだったのかなぁ~」

「レイラじょ、いや、白雪姫。しかし、森は何かと危険が多い。本当は私が付き添って、国外へと逃げおおせるまで、付いて行ってあげたい気持ちでいっぱいなんだが」

「いや、大丈夫ですよ? そこまで無理をしなくっても、」

「だからせめてもの、この、サバイバルグッズ一式を持っていって欲しい。中には干し肉とドライフルーツと水とナイフとロープと、寝袋と、それから虫さされの薬と胃腸薬と、毒キノコの見分け方図鑑が入っているから、」

「うわっ、重たっ!? えっ、すっごい、これ背負って森の中を歩くの……!?」

「すっ、すまない!! 白雪姫、やっぱり私が今すぐその中身を詰め直して、」

「いやっ、もう、本当に大丈夫なんで!! 文句言ってすみませんでした!!」




 といった訳で、白雪姫は森へと逃げて行きました。




「おっ、重たい! 思ってたのと何か違う、思ってたのと何か違う、思ってたのと何か違う……!!」




 そして重たいリュックを背負いながらも、小人さんの家へと辿り着きます。




「あっ、ああ、ようやく明かりが見えてきた……!! ようやくこのリュックを下ろせる、ようやく休めるんだーっ! やったぁ!」

「うわっ!? 何かすっごい荷物を持った娘さんがやって来たぞ、おい!」

「ジェラルドさん、じゃなかった、小人さん。ここに一晩泊めて頂けませんか?」

「俺が後で、エディ君やアーノルド様に殺されそうな台詞を言うのはやめて欲しいなぁ、本当にもう!」

「あらあら、大丈夫よ? だって、この私もいるんだもん!」

「みっ、ミリーさぁん……!!」

「さっ、疲れたでしょう? 白雪姫。どうぞ入って休んでいって下さいな?」

「ありがとうございます、そうさせて頂きます~!!」





 そんな訳で、白雪姫は過保護に甘やかされます。



「いや、あのっ、私だって掃除ぐらいは……!!」

「いやいやいや!!俺らが後で、アーノルド様やエディ君に殺されちゃうんで!! ねっ、ねっ!?」

「そうっすよ、レイラ嬢!? いや、白雪姫! あなたはどうぞ、ゆっくり休んでいて下さい!」

「えっ、え~? そんな、大袈裟なことを言って」

「いいからいいから、レイラちゃん? ほぅら、美味しいコーンクリームスープが出来ましたよー?」

「何か、こんな生活を続けていると、太ってきちゃいそうだなぁ~……あ、美味しい」

「良かった~! スープのお代わりも、まだまだ沢山あるからね?」

「わーいっ、やったぁー! 小人さん、ありがとう!」










「何? 白雪姫が、まだ死んでいないだと? それはまた、一体どうしてだ」

「いやぁ、人選ミスなんじゃないですかね~?」

「鏡よ、鏡。この国で一番美しいのは一体誰だ?」

「今もなお、生きている白雪姫でぇーすっ」

「よし、殺そう。今度こそは確実に、毒林檎でも食わせて確実に殺そう」

「うわっ、執念深-いっ!」

「叩き割るぞ、ジーン? じゃなかった、お調子者の鏡め……」

「待って、怖い!! 部長ー、今俺、手ぇ塞がってるんで~!」

「だからこそじゃないか、ジーン? いや、鏡よ鏡」

「うわぁ、とんだパワハラだよ~、まったくもう」

「こっちの台詞だ、こっちの」







 そんな訳で、女王は老婆に化けて、白雪姫の下へと向かいました。




「っくそ、こんな所でぬくぬくと暮らしてやがったのか! ……あー、ごほんごほん。どなたかいらっしゃいますかー?」

「はーい? あのう、小人さんなら皆さん、森へと働きに行っていて、」

「いやいや、娘さん。私はただ、この美味しい林檎を売りつけにきただけだよ」

「あの、訪問販売ならお断りで」

「まぁ、いいから。ちょっと見ていってくださいよ、娘さん。ほらっ」

「わっ、わ~! 美味しそう! つやっつやしてる~!」

「一口、試食でいかがですか? 今ならお安いですよ~?」

「何かこれも、思ってたのと違う……!! でもまぁ、いいや。折角だし美味しく頂きます!」

「どうぞ、どうぞ。かなりちょろいな、白雪姫」





 白雪姫はとうとう、老婆のすすめる林檎を断りきれなくて、食べてしまいました。




「っぐ、これは! 試食だと騙して、私に毒林檎を食べさせましたね……!?」

「今更気が付いてももう遅いぞ、白雪姫? これでようやくこの俺が、この国一番の美しい人間となるんだ……!!」

「いや、もう、私なんかよりも、美しいと思うんですけどね~」

「いいから、黙って死んどけ。黙って」

「ふぁ~い、これ、意外とおいひいれふよ、アーノルド様……!!」

「死んだ筈の白雪姫が寝そべってむしゃむしゃと、毒林檎を食うんじゃない!! 没収!!」

「あっ、ああ~。証拠隠滅されてしまったあぁ~……」






 そして家に帰ってみると、そこには。




「あっ、ああ~!! 白雪姫~!!」

「だからあんなに、知らない人から食べ物は貰っちゃいけないよって、あんなにもよく言い聞かせていたのに~!!」

「大丈夫!! どうぞ安心して下さい、優しい小人の皆さん!!」

「うっわ! 王子の登場、はっや!!」

「気合い、入っているわね、エディ君……!!」

「えっ? これ、一体どうすんの? まだ、白雪姫の死体を棺おけに詰め込んでないんだけど?」

「硝子の棺と言えよ、硝子の棺と。マーカス、お前、そっちの足持ってくんない?」

「えっ!? 俺がレイラちゃんを、いや、意識を失った白雪姫を城へと持って帰りたいんだけど!?」

「何かとまずいから、その発言!!」

「もういいから、王子は黙ってろよ!?」

「部長に怒られる俺らのことも考えてくれって感じっすよ、本当にまったくもう!!」

「あら~、非難ごうごうね~」

「えっ、あっ、はい、申し訳ありませんでした、小人の皆さんたち……」




 そして、嘆く小人たちの前に現れたのは。




「はいはい、テイクツー、テイクツー!! エディ君は、はいっ! そこの茂みから、馬に乗って颯爽と現れてー?」

「マーカスさん、馬操りにくいです……何もこんな、茂みから現れることもなく、」

「はいはい、もういいからそういうのは!! ほらっ、エディ君じゃなかった、王子様には白雪姫がいるだろ!?」

「あっ、そうだった!! レイラちゃん、レイラちゃん!! 俺がレイラちゃんとキスして起こす、俺がレイラちゃんとキスして起こす!!」

「こんな欲に塗れた、王子様って本当に嫌よね~。はーあ。まったくもう」




 そんな訳で、唐突に現れた王子様は。




「っはい!! もう起きたーっ! これでいいでしょう!? キスしたことでってことで!!」

「うわーっ!? レイラちゃん、そんなっ!? 俺っ、折角君の王子様役になれたというのに!?」

「うわっ、白雪姫、今の腹筋力が凄かったなぁ~」

「な。エディ君が棺に手をかけて、開いた瞬間だったもんなぁ」

「と言うか今の目覚め方って、白雪姫というよりかは、ゾンビなのでは……?」

「レイラちゃん、よっぽど嫌だったのね~。エディ君と、お芝居でもキスするのがね~」




 白雪姫を見事に生き返らせたのでした。




「っぐ!! ちょっと待って下さいよ、エディさん!? 一体、どこに手を回しているんですか!?」

「いや。どこって、お腹の辺りかな? ちょっ、痛いよ、レイラちゃん!? ほらっ、ここで白雪姫は王子様と一緒に無事に、国外逃亡しましたよーって、話だから本当に……!!」

「やっぱり白雪姫、何か思ってたのと違ったー!! 誰なの、本当に? 今回の配役を考えた人はー!」







 END







 その後の舞台裏にて




「お前だったのかよ、エディ!? 今回の配役、考えたの……!!」

「いや。何か前回のが本当に、猛烈に腹が立ったから、復讐的な感じで……?」

「っくそが!!きょとんとした顔をするなよ、鬱陶しいな!?」



「ライさん、このスープ、中々美味しいですね~! ドライフルーツも美味しいです! あっ、マンゴーとピタヤまで入ってる!!」

「ああ、そうなんだ。レイラ嬢はその、フルーツが好きだと、アーノルド君からそう窺ったものでな……」

「ありがとうございます~! わ~! 嬉しくて美味しい~!」




「なぁ、あれ。どう思う?」

「いいんじゃないか? ほのぼのとしていて……」

「いや、そっちじゃなくてエディ君だよ、ジェラルド君!!」

「あんだけ睨みあってんの、俺らどうしたらいいんすかね、ミリーさん?」

「うーん、どうもしなくていいんじゃないかしら? 殴り合いの喧嘩でもさせておけば」

「っあははは! さすが、ミリーちゃんだよね~! というか今回、出番が少なくて不満~! 俺も、レイラ嬢がキスで起こす王子様役がしたかった~!」

「いい加減に懲りなさい、あんたも……」






 日常魔術相談課劇場「白雪姫」配役発表



 白雪姫役 レイラ・キャンベル

 王子役 エディ・ハルフォード


 女王役 アーノルド・キャンベル

 鏡役 ジーン・ワーグナー

 猟師役 ライ・ロチェスター


 小人役


 ジェラルド・オースティン

 ミリー・クック

 マーカス・ポッター

 トム・キンバリー





 次回の上映予定 二章の終わり頃


 その他は未定





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