番外編 アーノルド・キャンベルの着せ替え人形
「俺が笑いものにされたのなら、お前も笑いものにされるべきだと思うんだ、俺!!」
「はぁ? エディ? お前は、一体何を言って」
「あー。あの時、アーノルド様、風邪で休んでましたもんね~」
「あの時って、どの時なんだよ? レイラ」
「あの時はあの時ですよ、アーノルド様。ライさーん? 一緒に、アーノルド様で遊びませんかー?」
「えっ!? 俺もっ! 俺も俺もっ! アーノルド部長で遊びたいなぁっ、レイラ嬢ーっ」
「はいはい、ジーンさんもですね? それじゃあ、皆でアーノルド様で遊んでみましょうか!」
「ちょっと待って、レイラ? 俺の意見はどうなって、」
「無いに等しいですね、そんなもの!!」
「レイラちゃん、可愛い、好き。俺と結婚して欲しい……!!」
「君も君で相変わらずだねぇ~、エディ君よ……」
ジーン提案「よくある執事服と兎耳」
「いや、待てよ? これ? 馬鹿みたいなこの、兎耳を付ける必要は、どこにも無かったんじゃあ……?」
「あっはははは!! 部長、何だかその手の店にいる、イケメンの店員みたーいっ! あはははっ」
「ジーン、お前な? この俺に、こんなものを着せといてよくも」
「いや、でも何か、女性に盗撮されてそうな感じですよね、アーノルド様~」
「レイラ? 何だ、お前? その感想は」
「分かるよ、レイラちゃん。何だかそんな感じだよね~」
「ね~」
「えっ? 一体、どういうことだ?」
「あー、そうだなぁ。ええっと、アーノルド君? そう、つまりはその。色気があってとても美しいんだが、その頭に装着した兎耳のせいでそう、何だか、隙のある感じに仕上がっているんだよ……」
「そうそう、女性に食い物にされてる感じだね~、ははっ」
「丁寧な説明、どうもありがとうございます、ライさん……はーあ」
「落ち込んでいる暇はありませんよ? アーノルド様? 次行きましょう、次」
「それじゃあ次は俺がいいなぁ、俺が!」
「エディ、お前。嫌な予感しかしないんだが?」
エディ提案「パティシエ服」
「うわっ……何か毒盛ってそう。秘密の使命を帯びた、他国のスパイみたい!」
「何だよ、その感想は? エディ。お前、俺に着せておいて」
「いや、それよりはどっちかと言えば、几帳面に生クリーム絞ってそうじゃない?」
「あー、確かに。ジーンさん。キッチンのシンクとか、ぴっかぴかに磨き上げているタイプだし、店の女性客に言い寄られて、戸惑ったように笑って、後で何でケーキを集中して作れないんだろうって、就業時間後に、その帽子を外して、椅子の上で落ち込んでいるタイプ……」
「れ、レイラ……細かすぎやしないか、それは? ライさんはどう思いますか? この服装について」
「そっ、そうだな? 大変よく似合っていると思う……だが確かに、ケーキを作るよりも泣いている女性を抱き締めている方が、よく似合いそうな感じで」
「はぁ……」
「それじゃあ、次。次は私ですねーっとぉ!」
「それもまた、嫌な予感しかしないな? レイラ?」
レイラ提案「黒い神父服」
「うっわ!! 駄目だ、これ、絶対に絶対に、信者の女の子をたぶらかしてるやつ!絶対にこれ、胡散臭い笑顔で金品を巻き上げて、平然と済ました顔で、神に祈って待っていましょうだとか、悲劇が起きた時にこそ、善人面して、聖書片手に祈ってる腹黒神父!!」
「れっ、レイラ!? お前っ、さっきから酷くないか!?」
「いや、でも何か、職業選び間違えたなって感じはするよ、この人……」
「エディ。お前も、お前でな……!!」
「いやぁ、何か胡散臭いし色気が物凄い~。少なくともどうしましたか? って振り返られたら、後で裏切られそうって、そんな不安に滅茶苦茶襲われそう」
「何だよ、ジーン? それは」
「うーん、どうしてだろうな? 確かにアーノルド君の笑顔は、いつも卒が無くて爽やかなんだが。その、黒い神父服で笑うと、その、色気が不穏さに変わってしまうというか何というか……」
「いや、あの、ライさん? 本当に、俺に気を遣わなくても大丈夫ですからね?」
「そっ、そうか? いや、でもな……ああ、次は私の番か」
「ライさんの安心感が物凄いですよね、エディさん」
「ね」
「お前らはもうちょっと見習え、もうちょっと」
ライ提案「この間エディ君が着ていたという、黒い本革のボディースーツ」
「あっ、駄目だこれ……未成年の女の子が近寄っちゃいけないやつ。そもそもの話、若い女性が傍にいたら、犯罪臭しかしないやつ。何か秒で妊娠してそう」
「ジーン、お前な? ちょっと下品でどうかと思うぞ?」
「いや、何か。ジーンさんの言うことが正しすぎて……駄目だな、これな」
「エディ。お前もかよ……」
「思った以上に、色気が凄まじいですね……これ。褐色の胸元を出したら逮捕されそう。少なくとも、女性は全力で目を逸らすべき」
「レイラ……笑いものってこういうことかよ」
「う、うーん。確かにこれは、私のチョイスが悪かったかな……すまない、アーノルド君。君はおそらく世の女性の為にも、その格好で外に出ない方が良いと思う」
「らっ、ライさん!?」
「本当にその通りですよね……何かもう、若い女の子が傍にいたら、全力で逃げてーっ! って叫びたくなるような、そんな卑猥なものに見える」
「レイラ、お前な……はーあ。もう帰りたい気分で一杯だよ、本当に」




