27.彼の思惑と彼女の激しい動揺
「そんな訳で俺はっ! もう少しだけレイラちゃんに好かれたいので、皆さんからちょっと、彼女の情報を収集しようかと思いまっす!!」
その言葉を聞いて、日常魔術相談課の職員たちはお互いに顔を見合わせた。むんと、強い使命感に満ちた表情のエディが仁王立ちしている。その手には可愛い花柄の手帳とボールペンが握り締められていた。
その場にいた全員の記憶が正しければ、あの可愛い花柄の手帳とボールペンはレイラ嬢が常日頃から愛用しているものである。どうやらエディは文房具までお揃いにしたいらしい。
昼休憩中だったミリーとジーン、マーカスとジェラルドはそれぞれのデスクで思い思いの食事を口にしていた。
ミリーは近くのパン屋で買ってきたバケットのチェダーチーズとベーコンのサンドイッチを齧り、その隣で愉快そうにエディを見つめているジーンは細長いグリッシー二を食べている。そしてエディとレイラの席に座っている、ジェラルドとマーカスは同じサラダをつついて食べていた。
これはスモークサーモンと茹でタコ、ぷりっぷりの海老にアボカドとカボチャと塩気のあるベーコンが入ったサラダだ。男二人でああでもない、こうでもない、と比較的ひねくれた評価をサラダに下しつつ、フォークでつつき回している。
そして頼まれてもいないのに、常にマイペースなエディが紺色のボールペンを顎に当てて話し出す。
「いえね? 俺としてもその、最近、ようやくもう少しぐらい、レイラちゃんとの関係を進展させたいなぁだとか、彼女との距離をもう少しだけ縮める必要があると、そう思いついてですね……」
「まぁなぁ、レイラ嬢とエディ君は距離どころか、普通に拒絶されてがっつり嫌がられているからなぁ……」
黒髪のジェラルドが美しい眉を顰めて、アボカドの欠片を取り除きつつ口にする。そんな言葉を聞いてマーカスも頷いた。
「だよなぁ~? むしろ俺達は何で、エディ君の心が折れていないのか不思議で仕方がねぇよ~」
平凡なマーカスは隣の美しい友人がぽいぽいっと、追い払っていたアボカドを掬い上げて口元へ運ぶ。この二人は丁度、好きな食べ物と嫌いな食べ物が正反対なのでこうしてサラダを分け合って食べているのだ。
そんなマーカスの言葉を受けて、流石のエディも胸元を押さえてよろめく。
「うっ!! おっ、俺だってそりゃあ、傷付く時だってありますよ!? でもね、俺はね!?」
「それでも、レイラ嬢のことを愛しているからかなー? エディ君?」
うっとりするような甘い微笑みを浮かべ、金髪碧眼のジーンが白い片手を上げる。ぽりぽりとだるそうにグリッシー二を食べ進めているバディを眺め、ミリーがきゅっと眉間に皺を寄せた。
「こらっ、ジーン? 人の話は最後まで聞く! 途中で遮ったりしちゃあ、エディ君に申し訳無いでしょう?」
「うえ~、ミリーちゃん……ごめんなさ~い」
全然謝る気が無いジーンを見て、ミリーはまったくもうとでも言いたげにジーンを睨みつける。しかし顔を上げて、部長机の前で佇んでいるエディを優しく見つめた。
「でも、珍しいわね! エディ君がそんなことを言い出すだなんて……よっぽどレイラちゃんに酷いことでも言われたのかしら? その、息が臭いから近寄らないでくれ的な……」
「ミリーさん、俺。口臭ケアはきちんとしている方ですよ? 毎回、お昼ご飯を食べた後にちゃんと歯を磨いています」
意外にも口内を清潔に保っていたエディを見つめて、その場にいる一同は眉毛を持ち上げた。エディはそんな全員の視線を受けて、誇らしげにふふんと胸を張ると、得意げに突っ込み所満載の話をし始める。
「俺はね、皆さん? いつ何時レイラちゃんとキスしてもいいように、昼食後の歯磨きは絶対に怠らないようにしているんです! まぁ、俺、外でよく飯を貰って食っているんで、あんまり、その、効果は無いのかもしれませんが……」
そこでエディが赤髪を揺らして、悲しげに俯いた。伏せられた睫は長く、こちらの庇護欲をそそってくるもので中年女性が見たら「まぁ~! 可哀想に! お菓子でも食べる!?」と叫んで駆け寄ってきそうだ。
それなのでミリーはそんなエディを見て優しく微笑んでいたが、隣のジーンは腹を抱えて笑っていた。その向かいの席に座っているジェラルドとマーカスは遠い目をしつつ、その話は聞かなかったことにして海老と茹でタコを交換する。
「そうね? 人生、何があるか分からないんだし……レイラちゃんがその、エディ君とキスしたいなーって思ってくれる可能性もあるにはあるし、この惑星に隕石が降ってくる可能性だって同じくらいきちんとある訳なんだし……」
「あれ? もしかしてさらっと今、全否定されました? 回りくどくてあんまりよく分からなかったんですけど、俺、ミリーさん……」
「それはきっと、エディ君の気のせいよ? エディ君?」
そんな言葉を受けて、流石のエディも困惑したようにぽりぽりと頭を掻く。
「まぁ、いいや。という訳でこの哀れで健気な俺に、レイラちゃんの情報をありったけ下さい!!」
「え~? まったく気にしないスタイルで行くんだ? いいねぇ、エディ君! 俺は君の不毛な片思いを非常に応援しているよ~?」
「ジーン、あんた、そう言うのなら、もうちょっとちゃんとエディ君を応援してあげなさいよ……」
ぐだぁっとデスクに突っ伏したジーンを見て、ミリーが呆れた表情で話しかける。
「うーん、情報たってなぁ~。そもそもの話、エディ君はさ、レイラ嬢と一体どうなりたいの?」
難しそうな顔をしたマーカスに問いかけられ、エディがきょとんと不思議そうな表情を浮かべた。彼はそんな顔をすると少しだけ幼く見える。
「えっ? それは勿論俺は、初日での自己紹介の時に申し上げた通りその、レイラちゃんと仲良しラブラブ夫婦になりたいと、そう心から願っていますが……?」
「えっ? あれって本気だったんだ…………?」
マーカスが少しだけぎょっとしたような顔で聞き返す。それを見てエディは苦笑し、ボールペンを持ち直すと片手だけで器用に手帳を閉じる。
「本気じゃなきゃ、あんな風には言いませんよ、マーカスさん? でも、そうですねぇ……」
何やら気難しそうな表情で考え込む。綺麗な紺色のボールペンを、顎先にあてた彼はそうしていると落ち着いた青年に見える。実際のところ、彼が陽気に無邪気に明るくはしゃいでみせるのはレイラ嬢の前でだけだった。これは誰も指摘したりしないし、特に疑問に思うことでも何でもないがエディはレイラ嬢がいないと、静かに座って仕事をしている。
とは言えども、誰かと話して笑ってぽりぽりとお菓子を食べたりもしているが。そんなことを考えつつも一同は、突然黙り込んでしまったエディを見守っていた。
「……マーカスさんがそう思うのなら、その、彼女も俺のことをそんな風に思っているんでしょうか? だから今でもああやって、あんな風に俺を拒絶しているのかなぁ~……」
「ん~、それはないんじゃない? だってさぁ、レイラ嬢、いっつも嬉しそうなんだもん。エディ君と一緒にいてさ~。あーあ! うらやまし~、俺もレイラ嬢とデートに行きたーいっ」
「あんたはまったく、本当に懲りないんだから……昨日、泣いてたっていう女の子とは一体どうなったの? ねぇ?」
「平手打ち四回で手を打って貰ったよ? 大丈夫、今回は刃物沙汰にはならなかったから!」
ジーン・ワーグナーが誇らしげにピースサインを作ってみせる。それを見て、少々かちんときたミリーがぱしっと、愛のある頭の叩き方をしていた。ジーンは「あいてっ!?」と言いつつも、さして痛くない叩き方に白い頬を緩ませている。
彼女は姉のような存在のミリーに、こうして怒られて窘められるのが好きなのだ。そんないつもの光景をあっさりと無視して、エディがマーカスとジェラルドに向き直る。
「とりあえず俺は、もう少し彼女についての情報が欲しいんですよ、ジェラルドさんにマーカスさん? この中でレイラちゃんと個人的な付き合いがある方は?」
その日のレイラはちょっぴり憂鬱だった。今日の天気が初夏だと言うのに、ほんの少しだけ肌寒くて、鬱々とした灰色の曇り空であることも原因の一つである。
しかし彼女には、それよりもう少しだけ切実な理由が存在していた。
(あーあ、どうしよう? 何て言おう? あれから結局、ちゃんとお礼も言えてないし……)
ちらりと、隣を歩くエディを見上げる。今朝から雨が降ったり止んだりと不安定な天気だからか、しきりに欠伸を連発している。今も何度目かの欠伸を済ませるとふと、こちらの視線に気が付いて穏やかな微笑みをふっと浮かべた。
「一体どうしたの、レイラちゃん? 俺に何か言いたいことでもあるのかな?」
「あー、いや、別に、そういう訳じゃないんですけどね……」
お礼なら、別にもう言わなくてもいい。あの時に私は、エディさんにきちんとお礼を言ったのだし、勝手に気まずくなるようなことでも何でもない。それなのに、やたらと彼のことが気になってしまうのは一体どうしてだろうか?
(やっぱりあんな風に縋って、泣くべきじゃなかったよなぁ……)
彼がいつまでもしつこく言い寄ってくるのは、私の態度が原因なんだろう。
(あんな風にその、甘えて縋ったりしているからエディさんも。いつか私が振り向くんじゃないかって、そう勘違いしてしまうんじゃあ、ないだろうか……)
レイラは黙り込んだまま、エディの隣を歩いていた。珍しく彼はそんなレイラを見ても、穏やかな微笑みをそっと優しく浮かべるだけだ。もう少し「どうしたの? 何かあったの?」と、優しく問いかけてくれるかと思ったのに。やたらと体が重たかった。ここのところ私は、毎日エディのことを考えているような気がする。
(気が付かなかった。こんな風に毎日、誰かの態度を気にしていると。人間、疲れてくるもんなんだなぁ~……)
ややぐったりとした気持ちで、エオストール王国の路地裏を歩いていた。エオストール王国の街並みは入り組んだ細い石畳にカラフルな家々が立ち並んでいたり、はたまた車と馬車がひっきりなしに行き交う、広々とした道路に緑豊かな並木道があったりもする。
しかし今は、薄暗い路地裏をエディと一緒に治安パトロールも兼ねて見回っている最中だった。困っている都民がいたら依頼を受けるのだが、基本的にこうしてのんびりと歩くだけである。だからこそ日常魔術相談課は“魔術雑用課”などと呼ばれて馬鹿にされ、他の部署からは「楽でいいよなぁ~」と羨ましがられるのだ。
黙って低い階段を降りていると、隣を歩くエディが楽しそうにとんとんと靴音を響かせていた。ふと上を向くと、建物の隙間から薄い灰色の曇り空が見える。美しい青空が見たかったレイラはそれを見て、かなり落ち込んでしまった。
上を向いたからか、それとも近頃のレイラがエディのことを考えてばかりだからなのか。うっかりその足を滑らせてしまい、あっと声を上げる間もなく足首に嫌な痛みがずきりと走る。
「っと!? だいっ、大丈夫!? レイラちゃんっ!?」
「え、エディさん……」
エディに体を支えられ、ずるりと足を滑らせる。背後のエディがこちらの両腕を掴んで、階段から落ちそうになった所を助けてくれたのだ。エディがほっと、深い溜め息を吐く。
「ごっ、ごめんなさい、エディさん。その、ついうっかり、ぼーっとしてしまって……」
「いいや、大丈夫。どう? どこも怪我したりとかはしていない? どこか、足首に痛いところは?」
「なっ、ないです、大丈夫です……」
どっ、どっ、どっ、と階段から転げ落ちそうになったのも手伝って心臓がやけに騒がしい。お腹の底が甘くふわふわとしていて、その感覚に焦ってエディから離れる。
「あっ、ありがとうございます、エディさん……その、本当に」
「いいや、大丈夫だよ? レイラちゃん。良かった、君に何も怪我が無くって……」
エディを見上げてお礼を言ってみると、彼はいつものように淡い琥珀色の瞳を優しく細めた。そして、蕩けるような微笑みを浮かべてこちらを見下ろしてくる。
いつもいつもそれを見て私は、胸の奥がきゅっと狭苦しくなる。その熱に酷く戸惑ってしまう。エディから向けられる、蕩けるような眼差しにいつだって全力で逃げ出してしまいたくなる。
照れ臭くなって顔を伏せていると、そんな様子のレイラを見てエディがふっと腕を伸ばす。こちらの頬に優しく触れて、そっと頬を包み込んだ。乾いた指先に戸惑って見上げてみると、エディが今にも泣き出しそうな表情を苦しく浮かべていた。
(こんな苦しそうな表情、初めて見た……)
いいや、初めてではない。アーノルドも、外にずっと出たがっていた幼い私を、屋敷の中に閉じ込めて大事に大事に愛していた父のエドモンもまた、エディと同じような表情でこちらを見下ろしていた。どうしてみんな、揃いも揃って同じような表情でこちらを見下ろしてくるのか。
エディに尋ねようと思ったその瞬間、苦しく振り絞るような声が落とされる。
「どうしてレイラちゃんは、いつまで経っても俺の気持ちに……」
するりと、乾いた指先で頬をなぞられた。自分の肩がびくりと跳ね上がって、心臓がばくばくと激しく鳴りだしている。ああ、もう、いっそこのまま全てを忘れることが出来たらと無意識に願って、呆然と魅入られたかのようにエディを見上げていた。
エディがほんの少しだけ、自嘲するみたいにくちびるの端を歪ませる。それからこちらを、苦しみと愛おしさが入り混じった表情で切なく見下ろしてきた。
「ねぇ、レイラちゃん……俺。君の本当の気持ちが知りたいよ」
その思わぬ意外な言葉にはっと驚いて、レイラは紫水晶のような紫色の瞳を瞠る。エディの手に自分の手を重ね、その苦しそうな表情を見上げた。ああ、初めて見る。こんな表情は。
「わたしの、本当の気持ち、ですか……?」
「そう。レイラちゃんの、本当の気持ち」
エディがするりと、こちらの首筋を撫で下ろして変な声が出そうになった。ごくりと唾を飲み込む。首筋も頬も熱くて沸騰してしまいそうだ。何もかもどうしたらいいのかよく分からない。エディがそんなこちらに構うことなく、淡い琥珀色の瞳を苦しそうに歪ませて首筋にそっと触れてくる。
「レイラちゃん、本当は俺のことを一体どう思ってる? ……今の状況も何もかも全部、ひっくるめて無しにして、君がただ、普通の女の子だったら?」
(私が、普通の女の子だったらって、それは一体どういう……)
それはレイラが人殺しではなくて、義兄のアーノルドとも婚約者ではなくて、という意味なんだろうか? そこまでを呆然と考えていると、エディが両腕を伸ばしてぎゅっと抱き締めてきた。
「あっ、あのう!? エディさんっ!? 私にはアーノルド様という婚約者がいて、」
「っそれじゃあ、あいつがいなかったら? もしもあいつが、レイラちゃんと俺のことを、きちんと祝福してくれるとしたら?」
「エディさん、それは、エディさん、それは……」
どう答えたらいいのかよく分からなくなって、泣き出しそうな気持ちでぎゅっとエディを抱き締め返した。彼の背中に手を回すと、滑らかな赤髪が手の中でするりと滑り落ちてゆく。
ふんわりと、いつもの南国の果樹園のような甘く濃厚な果物の香りが漂ってくる。シトラスにペパーミント、シダーウッドが混ざったような甘い香りだ。強く強く、縋られるように抱き締められて何故か、エディの気持ちに応えなくてはという焦燥感に駆られる。
正体不明な愛おしさと切ない苦しみにそっと蓋をして、両目を閉じていた。こんなにも胸が狭苦しい。このどうすることも出来ない苦しみと、喉が詰まってしまうような愛おしさから逃れたくて逃れたくて仕方が無かった。
「っエディさん、それでも私は、アーノルド様を選びます! だって私はエディさんのことなんか好きじゃないんだもん……」
「レイラちゃん。君は一体、どこまで残酷な女の子なんだろう…………!!」
苦しみに喘ぐような低い声で、エディがレイラの体を先程よりも強く強く抱き締める。そして耳元にくちびるを寄せ、甘い囁きを落としてきた。
「それでも俺は、絶対に諦めたりなんかしないよ、レイラちゃん? だから早く、俺のことを好きになって?」
エディの熱い吐息が落ちてきて、ぞくぞくとした甘い震えが腰に走る。ああ、嫌だ。誘惑に負けてしまいそうだ。
「っならない! 私はそれでも絶対に、エディさんのことなんか好きになんてならないもん…………!!」
「駄目だね、君は。こんなにも、俺はいつもいつも我慢しようとしているのに、そうやって、やすやすと俺の限界を越えるようなことばかりを、そう、言ってきて……」
エディが意味が分かるような、分からないような、そんな物騒な囁き声と共にちゅっとこちらの首筋にキスをしてくる。そして軽く噛み、舌を這わせてきて吸い付いてくる。
「っエディさん、ちょっと待って、それは……!!」
「大丈夫だよ。首筋に跡をつけるだけだから」
「いや、それって、何も大丈夫じゃない……ひゃんっ!?」
抗議しようと思ったその瞬間、柔らかく耳たぶを噛まれて変な声が出てしまう。心臓がばくばくと鳴り響いている、どうしよう? どうしたらいいんだろう?
「っエディさん、ちょっと、ちょっと待って、本当に……!!」
「待てって言われて、お利口に待てるのなら最初からこんなことはしていないよ? レイラちゃん?」
この状況におよそ似つかわしくない、飄々とした明るい口調でエディが囁いた。また首筋に吸い付かれ、ちゅっちゅっとリップ音が鳴り響く。
(いやっ、ちょっ、これ、本当に一体どうしたらいいんだろうか…………!?)
エディの前歯が首筋に当たって、その感触に体が震えてしまった。そのまま硬直してしがみついていると、エディが調子に乗ってしまったのか腰に手を回してくる。
「わぁっ!? ちょっ、ちょっとエディさん!? 変なところ、触ったら本当に承知しませんからねっ!?」
「変なところって、一体どんなところかな? レイラちゃん? 俺に詳しく教えてくれる?」
「まっ、またそんな、減らず口を叩いてきて!!」
「減らず口を叩いてきて…………」
ショックだったのか、両腕がふっと緩む。その隙にばっと腕を振りほどいて逃げ出して、階段を一気に駆け下りた。散々だ、今日はもう。散々な日だ。先程までのエディの体温が首筋に染み付いていて、頬がかっと熱くなってしまう。
階段を降りきってから見上げてみると「しまったな~」とでも言いたげに苦笑して、ぽりぽりと首筋を掻いていた。そんなエディを階段下からきっと睨みつける。
「次っ!! またそんなことをしでかしたら即刻、エディさんとのバディを解消しますからねっ!?」
「わーっ!? ごめんよ、レイラちゃん!? 今のは流石に俺が悪かったからさ~って、ちょっと待ってよ、レイラちゃん!? 俺を置いてどこに行くつもりなの、ねぇ!?」
「知りませんっ!! もうっ、エディさんなんか本当に知りませんっ!」
「ごめんって! レイラちゃん、本当にごめんって!!」




