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“魔術雑用課”の三角関係  作者: 桐城シロウ
第一章 彼と彼女の始まり
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2.彼は戦争の英雄“火炎の悪魔”

 





 ピチチと、どこか遠くの方で小鳥が囀る。穏やかな春の陽射しが、彼の鮮やかな赤髪を照らしていた。その光を受け、艶々と美しく光り輝いている。魔術新聞では、血のように赤いと称されて面白おかしく囃し立てられていたけれど。私には夏の夕暮れ時のような、そんな美しい夕日色に見えた。



 そして今現在、足元には初対面の戦争の英雄がいる。しかも何故だか、こちらの両手をがっしりと握り締めている。確かに、アーノルド様以外の()()()な男性と恋がしたいとは思っていたけれど。



 ああ、たぶん、神様。これは私が待ち望んでいたような出会いではないと思います────……。








「……ごめんね、レイラちゃん。こういうことはもっと、段階を踏んですべきなんだろうけど」

「いや、それを理解しているのなら。こんなことして欲しくなかった……」



 彼が淡い琥珀色の瞳を伏せ、憂いに満ちた声で呟く。その動きに合わせて、長い赤髪がさらりと揺れ動いた。どうやら後ろでハーフアップにしているらしい。象牙色の額も滑らかで綺麗だ。軍人らしい筋肉質の体と精悍な美貌は、いかにも年配のご婦人受けしそうなもので。手を握られながらも、何となく林檎の花やカモミール、初夏の海辺やジンジャークッキー辺りが似合いそうな男性だと思った。



「あまりにも君が可愛いすぎて、つい。我慢が出来なかったんだよ……」

「我慢とか、そういう問題ですかね? あと、今すぐ私の手を離して下さい」



 そして彼は就職希望者の筈だが、紫色のネクタイに黒いスーツ姿だ。何故だろう……。それに、先程見ていた履歴書とは全く違う人物である。あの少々頭髪が心許無い、人畜無害の気弱そうなロバート・ゴードンさんは一体どこへ行ったのだろう?



 彼が街の牛乳配達屋さんをしていたようには見えない。それにしては筋肉が多過ぎる。



「そういう問題だよ、レイラちゃん。ひとえに、君が可愛いすぎるからいけないんだよ……」

「うわ、アホくさ。というか、普通に気持ち悪い」

「レ、レイラちゃん……!!」



 ショックを受けた顔で、ぎゅっと両手を握り締めてくる。戦争の英雄“火炎の悪魔”にしては、随分と乙女的な仕草だった。



「そんなどうでもいい、下らないことなんかよりも。私が面接する予定のロバート・ゴードンさんは?」

「あれはね、レイラちゃん。俺が偽造した履歴書の人物だから、そんな人はいくら待っても来ないんだよ?」



 足元の彼がにっこりと美しく微笑み、甘い声を出す。その幼い子供に言い聞かせるような声に苛立って、思わず眉を顰めてしまった。それに彼はあっさりと言い放ったが、れっきとした犯罪である。



「貴方はどうして、履歴書を偽造してまでここに? 一等級国家魔術師である貴方がわざわざこんな、“魔術雑用課”と呼ばれるような所で働かなくとも……」



 一等級国家魔術師とは、王侯貴族の要人警護を務めたりする程の雲の上の存在だ。私も取得している国家魔術師資格とは、国から魔術を使ってもいいと認められた、いわば一般人の魔術事故と魔術の不正使用を防ぐ為のものである。



 上から順に、一等級、二等級、三等級、四等級と、四つの等級に分かれていて、この資格を持たない者は魔術の使用が認められず、人外者との契約も許されない。魔術を誰かに教える場合でも、この国家資格が必要となってくるのだ。



 ちなみに私は三等級国家魔術師で、アーノルドは一等級国家魔術師である。彼は()()()()()気が向いたからこの取得するまでに最低十年はかかるとされている、一等級魔術師資格を取ったに過ぎず、堅苦しい職場を嫌って“魔術雑用課”の部長を務めているような変人だ。



 それなので、間違っても一等級国家魔術師はこんな所で働いてはいけない。それに何よりも、彼は軍人として戦場で活躍していたような人だ。



 この日常魔術相談課で戦闘能力が必要な場面といったら、仲の悪い姑を肥え太った豚の姿に変えてしまい、この糞豚を何が何でも屠殺場送りにするのだと言って、激しい抵抗を見せる若奥様を鎮圧する時であったりとか。



 危ない新興宗教の信者である中年男性が、血走った目で高価な魔術書を大量に抱えて盗み出し「これは浄化作業なんだ!」と叫んで火をつけようとしているのを取り押さえたりだとか、()()()()そんな場面でしかない。



 流石の私としても戦争の英雄“火炎の悪魔”に対して、そんな場面に対処してくれとは言い辛い。彼には初対面でのプロポーズも含めて、全てを諦めて欲しい。そんな私の問いかけに彼は、困った顔をして淡い琥珀色の瞳を彷徨わせていた。



 やがて意を決したかのように、こちらを強く射抜いてくる。



「俺は、その。レイラちゃんに、街で働いている君に一目惚れをしてしまって……それで毎日一緒に働けたら幸せなんだろうなぁって、そう思って」

「へっ!? ひっ、一目惚れって、わた、私にですか!?」



 こちらの動揺を見てくすりと笑い、両手を再び、強く強く握り締めてくる。その優しい口元の微笑みに、ほんの少しだけ心臓が飛び上がってしまった。



「そうだよ? だから俺は、君が今の婚約者さんと結婚してしまう前にと思って、プロポーズしにやってきたんだよ……」



 退廃的な美貌と、細く引き締まった筋肉質の体。煌く銀髪と、滑らかな褐色の肌からは常に色気が滴り落ちている。人当たりが良い性格も、女性から熱狂的な支持を得る理由の一つ。



 そう、私の婚約者であるアーノルド・キャンベルの通称は“女殺し”だ。彼はリオルネ都民の間でも美しいと評判の男性である。そんな希代の色男であるアーノルドと部下兼婚約者の私は、街に出ると囲まれるので、彼はそれをどこかで目にでもしたのだろうか?



 しょっちゅうバディが不在になってしまう私の為に、アーノルドは臨時のバディとして同行してくれるので、もしかしたらその時に見かけたのかもしれない。



 なにせ日常魔術相談課の職務規定では、魔術犯罪を防ぐ為に、現場へと赴く国家魔術師は必ず二人以上でと定められているのだ。大抵の一般人は魔術を扱えないので、魔術師同士がお互いを見張るシステムとなっている。



 よって決まった相手と仕事をこなしてゆく、バディ制度が他の「魔術装置及び魔術道具修理課」と「人外者及び魔生物被害相談課」、「魔術犯罪防止課」の部署でも導入されているのだが。



 私のバディはみんな、アーノルドに惚れて失恋して、あっという間にやめてしまう。といった訳で今回の面接は、私のバディを雇う為のものなのだがどうにも()()()()()()()()使い勝手の悪そうな、戦争の英雄が来てしまったようだ。



「あー、えーっと。申し訳ありませんが貴方の言う通り、私には婚約者がいますので……それに何よりも、戦争の英雄である貴方なら、もっと他に沢山の素敵な女性が、」

「っ俺は! 絶対にレイラちゃんがいいの!! あとそれから、俺の名前は戦争の英雄なんかじゃない、エディ・ハルフォードって名前がちゃんとあるから、レイラちゃんにはエディって呼んで欲しいです!」



 かっと、見開かれた瞳に思わず頷いてしまう。



「えっ!? わっ、分かりました。それでは、エディさんと呼ばせて頂きますね……?」

「うん、そうして貰えるとすごく助かるよ。あとそれから、俺をこの場で今すぐバディとして雇って欲しいです!」

「あの、ちょっと待って下さい。立て続けに色々と、そんなに要求をしてこないで下さいよ……?」

「何で? 俺は一等級国家魔術師だし、雇っておくと何かと便利だよ?」

「そ、それはそうかもしれませんが……!!」



 エディが不思議そうな表情で首を傾げ、子犬のような瞳で見上げてきた。鮮やかな赤髪が流れ落ち、さらりとした美しい艶を放っている。思わずごくりと唾を飲み込み、その美しい赤髪に触れたいと思ってしまった。



 それが色事めいた欲求なのか、美しいものに触れたいという好奇心なのか。あまりよく分からずにただただ、ひたすらに見惚れていた。するとエディがふっと、妖しい微笑みを浮かべる。こちらの手を柔らかく握り直してから、淡い淡い、琥珀色の瞳が細めた。



「……それに俺は、君の為なら()()()()するつもりなのに?」



 ぐっと低くなった甘い声に、心臓がびゃんと跳ね上がってしまう。彼が両手の温度を確かめるように、柔らかくじっくりと、大きな手で包み込んできた。そのこちらの肌を堪能するかのような、艶かしい触れ合いに心臓がばくばくと騒がしくなる。



「なっ、なんでもって。それ、それは」

「文字通り何でもだよ、レイラちゃん。ほら、俺に何かして欲しいことを言ってごらん?」

「べっ、べべべべ別に私は何も望んだりなんかしませんっ! 貴方にして欲しいことなんて何も無いですっ、だい、大丈夫です! じゅう、十分間に合っておりますからっ!」

「そうは言っても俺は、レイラちゃんの為に何かしてあげたくて、堪らないんだよ……」



 くっと妖艶に逸らされた顎に、まるでキスでもねだっているかのような細い琥珀色の瞳。両手を力強く引かれ、至近距離で彼の恍惚とした表情を見つめていた。半開きになった薄いくちびるから、微かな吐息が吐き出された所で、私の心臓は限界を迎えた。



「わっ、私はっ! エディさんが私のバディとして普通に働いてくれたら、それだけでもう、十分なので……!!」

「本当に!? それじゃあ、俺のことをバディとして雇ってくれるんだね? どうもありがとう、レイラちゃん!」

「へっ? あっ、あの……?」



 エディがぱっとこちらの両手を離して、足元から素早く立ち上がる。黒いスーツの埃を手で払い、「これで任務は完了した」とでも言いたげな表情にようやく、自分が色仕掛けに引っ掛かったことを理解する。



「よっ、よくも。私を騙してくれましたね……!!」



 体を震わせ、背の高い彼を精一杯強く睨んでみると、愉快そうに眉毛を持ち上げてから、淡い琥珀色の瞳を煌かせて笑う。



「どうしたの、レイラちゃん? そんな風に涙目で睨まれると、俺としても何かと困るんだけどなぁ」

「大いに困って下さい、エディさん。貴方に騙されたので猛烈に今、腹が立っています……」

「いや、今のは別にそういう意味じゃなくって……まぁ、それはいいや。俺は別にレイラちゃんのことを騙してなんかいないよ?」



 エディが、ちょっとだけ困ったように首を傾げている。またしてもその表情に腹が立って、声を荒げてしまった。



「うっ、嘘です! 堂々とした嘘吐きがここにいます!! 何もあんな、あんなことをしなくったって……」

「だってさ、ああでもしない限り君は、初対面でプロポーズしてきた俺を不採用にしてしまうだろ? だからあんな風に迫っただけで、俺がレイラちゃんと結婚したいのは本当なんだけど……?」



 エディは何が悪かったんだろうと、不思議そうに首を傾げている。どうやら彼は本気で理解していないらしい。レイラが紫色の瞳を剣呑に、すっと細める。



「……あのですね、エディさん? 私にはアーノルド様という婚約者がいるので、先程のような触れ合いは断固拒否です!」

「そっか。それじゃあ君は、その婚約者を愛しているんだね?」

「へっ!? あいっ、愛してですか……!?」



 素っ頓狂な声を上げると、エディが困ったように眉を下げた。私が困惑気味に首を傾げると、彼も同じく困惑気味に首を傾げてみせる。



「だって、君の婚約者なんだろ? それとも、レイラちゃんはその彼のことがあんまり好きじゃないのかな?」

「ああ、なるほど、そういう話で……って!! 私はアーノルド様のことが好きです、ものすごくしっかり愛しておりますとも!」



 ばっと片手を上げて主張したが、もう既に遅かったらしく。目の前のエディが美しい顔を覆って、ふるふると両肩を震わせている。



「どっ、どうかしましたか? どこか、体に悪いところでも……」

「れっ、レイラちゃんの嘘が下手くそ過ぎて滅茶苦茶可愛い!! 俺と今すぐに結婚して欲しい! 俺の天使……!!」

「うっ、うそじゃありませんよ、ほんとうですよ?!」

「動揺して声が裏返ってる。物凄く可愛い、誤魔化すのも下手くそなんだね!」

「わ、悪口! それはもはや立派な悪口です、今すぐ私に謝って下さい!!」



 顔から両手を離して、満面の笑顔で罵ってくるエディに憤慨して、そのがっしりとした両腕をがくがくと揺さぶってやる。彼とはかなりの身長差があるので、肩に手を伸ばせなかった。腕が痛くなりそうだ。とは言っても私は、いたって平均的な身長なのだが。



「っあはは、ごめんごめん! はー……レイラちゃんが可愛すぎてつい。本当にごめんね?」



 夏の盛りの太陽のような、爽やかで眩しい笑顔にうぐっと喉が詰まってしまう。ふと気が付けば自分は、初対面の戦争の英雄にすっかり心を許していた。おまけに何だか距離も近くなっている。



「……でも、良かったよ。それを聞いて物凄く安心した。それなら俺にも、ある程度のチャンスが残されてるってことだよね?」

「おわっ!?」



 ぐいっと手首を引っ張られて、腰に手を回される。まるで、彼とこれから一曲踊るかのような体勢だ。あまりのことに困惑して彼を見上げると、にっこりと満足そうな微笑みを浮かべた。距離がとても近い。男性らしい硬い手のひらとムスクのような甘い匂い、顎を引いてこちらを見つめてくる、精悍な顔。思考が真っ白になって、時が止まる。



 硬直していると、エディがくすりと笑った。



「どうしたの、レイラちゃん? 顔がすごく赤いけど、俺がこうして触れているからかな?」



 淡い琥珀色の瞳が煌いて、蕩けるように細められる。更に近付いてくる。あっという間に、くちびるが触れてしまうような距離だった。



「ちっ、ちちちち近い近い!! 近いです! いまっ、今すぐ離れて下さい……!!」

「顔が真っ赤ですごく可愛いね? もっと見たいな、見せてくれる?」



 こちらを覗き込んできたエディに苛立って、後ろへと全力で仰け反る。



「そっ、そんなのは当然でしょう!? ここまで近いと、エディさんが相手じゃなくても赤くなりますけど!? なんなら、女性にこうされたってドキドキしますけど!?」



 全力で仰け反っているせいで、腰がとても痛い。傍から見たらくすりと笑われてしまうような、そんな体勢になっている気がする。それに心なしか、先程までの甘い空気が霧散した気がする。良かった。



「……レイラちゃんは本当に、俺を落ち込ませる天才だよなぁ~」



 こちらの腰を支えたまま、溜め息を吐く。そんな物憂げな雰囲気を出されても、こちらとしては困るだけだ。



「うぐっ、この体勢は物凄く嫌いです! 私にはアーノルド様という婚約者がいるので今すぐ離れて、」

「その婚約者は、君に婚約指輪すら贈っていないのに?」

「っそれは、って、おわっ!?」



 ぎゅいんと仰け反っていた体を戻されて、今度は先程よりもずっとずっと、距離が近くなる。鼻のすぐ先にエディの顔が見えて、彼がこくりと息を飲み込んだ。



 何かを話せば吐息が触れてしまうような距離に、全ての思考が停止する。



(あ……)



 彼がそっと両目を閉じる。この先の展開は、流石の私でも手に取るように分かる。彼にはとても申し訳ないがここは一つ、“火炎の悪魔”の丈夫さを試してみようかと思う。



「せーのっ、そいやぁっ!」

「あだぁっ!?」



 そんな勇ましいかけ声と共に、がつんと衝撃音が響き渡った。つい先程まで静かだった応接室に、二人の呻き声が上がる。ピチチとまた、遠くの方で鳥が囀った。



「……あの、あのさ、レイラちゃん? 一つ、聞いてもいいかな……?」

「っぐ、な、なんでしょう? エディさん? さ、先に言っておきますが、今の頭突きに関してのく、苦情は受け付けていませんからね……?」



 じんじんと痛む額を押さえつつ、何とか言葉を返してそちらを見てみると、彼も彼で痛いのか、涙目で額を押さえていた。いい気味だ。



「俺はさ、君のことが。レイラちゃんのことが好きなんだけど……?」

「で、ですから、こうしてその気持ちを額で打ち砕こうと、多大な犠牲を払ったのですよ?」

「っぐ、可愛い……!! 俺と今すぐ結婚して欲しい、俺のことを早く好きになって欲しい!!」

「流石は“火炎の悪魔”ですね、その丈夫さは既に、戦場で保証され済みでしたか……」

「あれ? もしかしてこれって、俺がこのまま止めを刺されるパターンかな?」



 彼の馬鹿げた言葉に溜め息を吐いて、じろりと鋭く睨みつけてやると、流石の彼もその場の空気を読んだらしく気まずそうな顔となる。



「あー、あの。俺が調子に乗ってしまって、大変申し訳ありませんでした……」

「次にこのような真似をしたら、即刻バディを解消します。それが分かったら、」

「えっ!? 俺がバディになってもいいの!?」



 驚愕の声を上げて、前のめり気味に迫ってきたエディにたじろいでしまう。予想外の反応だった。これではまるで、彼が本当に私のことが好きなように見える。



「は、はい。私がエディさんに騙されたとは言えども、採用すると言ったも同然なので、きちんと採用するつもりですよ?」

「やったー!! 物凄く嬉しい、ありがとう、レイラちゃん! 俺は君の為なら何だってするつもりだからね?」



 満面の笑顔のエディにぎゅっと両手を握り締められ、私も思わず、眉間にきゅっと皺を寄せてしまう。



「日常魔術相談課の職務規定通りに働いてくだされば、それだけで結構です! そいやっ!!」

「あだっ!? もしかしてレイラちゃんって、かなりの恥ずかしがり屋さんなのかな……?」

「リーヌ川に沈められたいのでしょうか? 春の水面に、その赤い髪がさぞかし映えることでしょうね?」

「大変申し訳ありませんでした……反省する気も前言撤回する気もありませんが、どうか俺のことを全部許してください……」

「それは謝罪ではなく、ただの我が儘なのでは……?」



 こうして、彼と彼女は待ちに待った運命の出会いを果たした。この時の彼女にとってまだ、彼は()()()戦争の英雄にしか過ぎない。



「あっ、そうだ! レイラちゃん、俺と連絡先を交換してくれない?」

「そうだじゃありませんよ……絶対に嫌です、断固拒否です!」

「えー、それじゃあ、魔術手帳の術番だけでも教えて欲しいなー……」

「それを教えたらもう、連絡先を交換したも同然なのでは? 以上で説明は終わりですが、()()()()()に関して何か質問はありますか?」

「明日の仕事帰りに、俺とデートしてくれない? あとそれから、その制服って俺のサイズはあるのかな……?」

「余計な質問を混ぜ込んで下さいよ、鬱陶しい」

「めっ、めげないもん! 明日からよろしくね、レイラちゃん!」

「あー、うー、今からでも採用取り消しにしようかな……」

「えっ!? なんで、一体どうして!?」





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