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穏やかな革命 ~Adiabatic Revolution~  作者: 刃竹シュウ
第2章 思い出(科学部)
9/36

ボーイズ・ミート・ガール

時は遡って、効率厨メンバーが高校に入学する春のことである。


天仁町の果樹園農家で育った少年が、北央高校の制服を身に着け入学式に出かけようとしていた。


「コースケおにいチャン、いってらっしゃい!」

「コースケおにいチャン、きおつけてね!」


「行ってきます、陽菜ひなもえ、いい子にしてるんだゾ。」


幼い妹達の頭を撫でると、米村は制服のネクタイを確かめて玄関で靴を履く。


「コースケ、母サンも父サンも入学式には行けないケド、ゴメンネ。」


「気にしないで、母サン、今日は果樹園の方がどうしても手が離せないんでしょ。」


と言って、玄関の引き戸をガラッと開けた。


外には米村と同じく北央高校の制服を着た、辻永周が待っていた。


「米村君、おはよう!」


辻が声を掛けると、米村は、バッと後ろを振り向く。


「陽菜、萌、あぶないお兄さんが外にイル、隠れて!」


妹たちが母親の後ろに急いで隠れる。


「誰があぶないお兄さんだ!」


辻が大声でツッコむ。


「キャー」

「キャー」


妹たちは声を上げて家の奥に走り去って行った。


「ふぅ、ロリコンから妹たちを守るのも一苦労ダナ。」


「僕はロリコンじゃない!」


そんな辻を見て、


「エイシュウくん、コースケが失礼なことばかり言ってゴメンネ。」


と謝る米村の母親。


「あ、いえ、いつものことなんで、気にしないで下さい。」


辻はそう言うと、


「入学式遅れるから早く行こう!」


「そうデスね。母サン、行ってきマス。」


「行ってらッシャイ。」


米村と辻は中学時代からの親友だ。フィリネ人の母親に育てられた米村は発音にクセがあり、人と関わることが苦手だった。辻は米村にとって気兼ねなく話せる数少ない友達の一人であった。そんな親しい彼らだが、互いの名は苗字で呼び合っていた。今さら下の名前で呼び合うのも照れくさいのである。


二人が天仁町駅行きのバスに乗ると、米村は携帯を取り出した。


「念願の携帯デス。辻クンのはG-Phone?」


「僕も米村君と同じ、Cyborg携帯だよ。」


二人は昨日ダウンロードした「ぷにクエ」を始める。


「ぷにぷにクエスト(通称ぷにクエ)」は、落ち物パズルゲームである「ぷにぷに」に、カードゲームの要素を加えた新しいジャンルのゲームで、同じ時期にサービスが開始された「パズル&モンスター(通称パズモン)」と同じくアプリストアで人気が出始めたゲームだった。


バスが天仁町駅に到着すると、二人は定期券アプリを起動して改札口でかざす。ピッと音がして開いたゲートを通過し、陸橋の階段を上って電車が到着するホームに向かって歩いて行った。

北央市行きの電車のホームに到着すると、彼らと同じ制服を着た少年が携帯を見ながら電車を待っていた。


ひょいと、後ろから覗くとその少年はパズモンをやっていた。


「由川君、おはよう!」

「おはようございマス。」


辻と米村が声をかけると、少年は振り向いた。


「あ、辻君、米村君、おはよう。」


「由川君も、携帯買ってもらったんデスか?」


「うん、おばさんに、北央市に通うんだったら持ちなさいって言われて。」


「早速ゲーム入れたんだね!」


「あはは、、まあね。」


そこへ北央市行きの電車が到着して、ホームで待っていた人々が一斉に乗車した。由川たちも、乗車すると電車は北央市に向かって出発した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


北央高校の体育館で、入学式が終了すると生徒たちは、それぞれ自分達のクラスに向かって行った。


「3人とも同じクラスになって良かったね。」


由川、辻、米村が、教室に到着すると、中では生徒達が同じ中学同士でグループになって話していた。そんな中、窓側の席で誰とも話さず頬杖をついて携帯をいじっている少女がいた。


 すごい美少女がいる!(辻)


 ラノベのヒロインじゃないデスか、、、(米村)


 こんな可愛い子、現実にいたんだ、、、(由川)


三人がそんなことを考えていると、教室の前の扉がガラッと開いて担任の教師が入ってきた。


「はい、皆さん席について! 」


三人は、慌ててプリントに書いてあった自分の席に着く。

米村が廊下側の一番後ろの席、辻が真ん中くらいの前の方の席、由川が窓側の少女の一つ前の席だ。


入ってきた女性の教師は、黒板に自分の名前を書き、今日からよろしくと伝えると、廊下側の生徒から一人一人自己紹介を述べるように言う。


「米村幸助デス、趣味はゲーム全般デス。よろしくお願いしマス。」


「天仁中学から来た辻永周です! 実家はお寺をやってます! よろしくお願いします!」


「えっと、由川誠です。読書と、、ゲーム、、が好きです。よろしくお願いします。」


由川が自己紹介をして席に着くと、後ろの席の少女が、すくっと立ち上がった。


「三宅優子です。 南州から引っ越してきました。 こっちに来て一番びっくりしたのは、春なのにすごく寒いってことカナ? ビックリしちゃった、ふふっ、よろしくネ。」


ペコリと頭を下げて席に着く。すると後ろを向いて優子の挨拶を聞いていた由川と目線が合う。

優子がニコっと微笑むと由川は真っ赤になって前を向いた。


 すごくいい匂いがする、、、お、落ち着こう、、、そうだ、教科書でも読もう、、、


由川が国語の教科書を開いて、ひたすら文字を読み、心を落ち着かせていると、いつの間にか担任がホームルームの終りを告げていた。


「今日はこれで終りです。気を付けて帰ってください。」


 終わった、、、とりあえず米村君のところに行こう


由川は立ち上がり、ふらふらとした足取りで米村の席に向かうと、米村はさっそく携帯を取り出して「ぷにクエ」を始めていた。そこへ辻も加わる。


 僕もパズモンやろうかな


由川も携帯を取り出しゲームを立ち上げる。そこへ後ろから、すすすっと近づく影があった。


「パズモンやっているの? そっちは、ぷにクエ?」


「うわ!?」


思わず仰け反る由川の目の前に、三宅優子が顔を近づけて立っていた。


「ごめんなさい、びっくりさせちゃった? 実は私もゲームが好きなの。」


そう言ってニッコリ微笑む。固まる由川の横で、辻が頬を紅潮させる。


「三宅さん! ゲームが好きなんですか? 僕らもゲーム好きなんです。」


米村はゲーム画面からチラッと視線を優子に移すと、


「何のゲームが好きなんデスか?」


と尋ねる。


「そうね、パズモンも、ぷにクエも好きだけど、今一番の注目はレンクロかな?」


「おー、レイン・クロニクル、もうすぐリリースされる携帯アプリ初の本格RPGデスね。」


米村が即反応すると、


「そう! これまでの携帯アプリの常識をくつがえす画期的なゲームシステムやねん、、なの!」


優子は少し興奮して携帯を取り出す、


「それにイラストも、めっちゃ、、すごく、、いいんだよ? これ見てみ、絵師さん豪華やろ、、でしょ? 」


と携帯のブラウザでゲーム紹介サイトを見せる。


「声優さんもすごいんやで、、のよ! あとこのPV見てみ?」


レンクロのプロモーションビデオを再生する。


「めっちゃ、ぬるさく動くやろ? こっから敵がぶわーて出て来よんねん、そんで味方のライン越えられたらゲームオーバーや、 こんなふうに味方のメンバー同時に動かせんねん、画期的やろ、ほんでな、ピリラっちゅう妖精がこんなふうに途中でマナ運んでくんねん、そんでマナたまったら必殺技打てんねん、必殺技のカットインもええわー、、、」


ポカーンと優子を眺める由川と辻、ニヤニヤしながら頷く米村。


優子は、はっとすると、


「あちゃー、もうええわ、めんどくさ、うちの標準語デビュー、短かったわー」


そして、由川の方を向くと、


「前の席の子、名前なんやったっけ?」


「えっと、よ、由川です、、、」


「由川くんか、ほんなら、よっしーな。」


そして辻を向く、


「そっちの坊さんは、名前なんやったっけ?」


「僕は、辻永周です!」


「エイシュウ、かっこええなー、んじゃ、永ちゃんな。」


そして最後に米村を見ると、


「そっちのヒョロっとした兄ちゃんは、なんやったっけ?」


「米村デス。」


「よねむら、、、ん-、なんか眠そうな顔しとるし、ネムな。」


あっという間に3人にあだ名を付ける。


米村はお返しにとばかりに、


「じゃあ、三宅優子さんは、ゆうこりん、デ、、」


と言いかけると、


「却下」


と優子が否定する。


「ナゼ?」


「その呼び名は、ちょっとしたトラウマあんねん。」


「じゃあ、何と呼べばいいんデスか?」


「そうやな、中学んときは、みやちゃんとか、おみやとか呼ばれとったな。」


「じゃあ、おミヤさんデ。」


「ええで、それで。」


北央高校入学式の日、こうして、3人の少年と一人の少女が出会った。


過去エピソードまだ続きます。

スペック:

 由川:166cm, 56kg, A+

 米村:172cm, 58kg, B+

 辻:168cm, 61kg, O+

 優子:158cm, 46kg, O+


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