湖岡町攻略
資源管理システム(RMS)の運用が開始されてから半年後、天仁町の隣の湖岡町に自給生活協会の支部が設立された。支部の運営委員は大山のあみだくじで第2パーティーとなった孝之、隆一、辻の3名である。第2パーティーの残りの一人であるシェンは社会情報庁に戻り本州からリモートで支援することになった。支部の一般会員は隆一の妻の咲さんと工務店の仲間たちとその家族である。
湖岡町はかつて鉱山の町として栄えていたが近年は廃坑となり、代わりに半導体や医薬品などの製造会社を誘致していた。隆一たちは鉱山の労働者が住んでいた廃墟のアパートを安価で買い上げ、工務店の皆で改装し電力自給システムと上下水モジュールを設置して支部の生活棟としていた。食料や生活必需品などは大型運転免許の輸送スキルを持った者が天仁町の資源保管棟から代理で受け取り輸送する役目を引き受けていた。鉱山のアパートは全部で4棟あり食堂と銭湯も備えていた。隆一たちが改装したのはアパート1棟と食堂、銭湯で、他の3棟のアパートも工務店の仲間たちで順次改装する予定であった。
今まで天仁町の医務室で行っていた診療所はRMSによる予約制となり、孝之が週に2日ほど天仁町に帰る日に診療するようになった。また孝之が湖岡町にいるときでもオンラインでリモートの診察を受け付けていた。
第2パーティーのミッションの一つは、医薬品を持続的に確保することである。由川が運営委員会で指摘したように自給生活協会で医薬品を一から製造するのは困難であったため、湖岡町にある製薬会社から譲り受ける計画をしていたのだ。
最初に彼らが試みたのは、以前、隆一と由川がソーラーパネル会社と契約したのと同様に協会の電力自給システムと上下水モジュールの使用ライセンスを供与する代わりに医薬品を無料で受け取ろうというものだった。しかし製薬会社は既にソーラーパネルと蓄電池を用いた発電システムを導入しており、水も高品質の純粋装置を使用していた。そういう訳で交換条件となる切り札が使えなかったので契約することはできなかった。
製薬会社との会合から帰宅して、孝之、隆一、辻の3名はアパートの食堂で反省会を開いていた。
「やっぱり2匹目のどじょうはすんなり手に入んねえよな。」
隆一はRMSで予約したビールを飲みながら愚痴る。ちなみに和皇国ではアルコール分10%以内なら自家醸造の酒類を製造できるので自給生活協会ではワインやビールも作っている。
「隆一君、まあそう気ぃ落とさんと。辻君もお疲れやったな。」
孝之はそう言って辻のグラスにビールを注ぐ。辻はRMSでビールを予約できるだけのレベルはないので、これは孝之の奢りである。
「いえ、僕は何もしてないので。」
辻は項垂れていた。製薬会社との会合の席で辻はただ座って話を聞いているだけで終わってしまったのだ。
なんで僕だけこっちのパーティになっちゃたんだろう、、、
大山のあみだくじでパーティーの組み分けが決まったときから辻は憂鬱だった。
米村君も、由川君も、おミヤさんもいない。結局僕はあの3人がいないと何もできないんじゃないのか?
辻がそんな風に考えながらビールをチビチビと飲んでいると隆一の奥さんの咲さんが料理を持ってやって来た。
「今日はお疲れさま、鰻丼作ったから食べて元気だしてね。」
そう言って、てんこ盛りのご飯に鰻がたっぷりとのった丼をテーブルに置いた。鰻は天神町の食料生産棟で養殖したものだ。貴重な食材なのでレベルの低い辻は予約できないが孝之と隆一が辻に分け与えてくれたのだ。ちなみに辻は現在レベル4、隆一はレベル15、孝之はレベル23(支部ができてレベルの上限が30に上がった)である。辻は自分のふがいなさに益々申し訳ない気持ちになる。
「まあ飯でも食って気持ちを切り替えようぜ。」
「せやな、腹が減っては戦もできん言うしな。」
二人が食べ始める横で辻は俯いたまま料理に手をつけようとしない。
「辻ッチ、遠慮することないんだぜ、冷めないうちに食え食え。」
「辻君、ご飯一粒に七人の神様おるんやで、こんだけのご飯粗末にしたらバチ当たるで?」
隆一と孝之の言葉に辻は二人の好意を無にする方が逆に失礼だと思い直し、
「ありがとうございます、頂きます。」
と言って頭を下げると鰻丼を食べ始めた。
咲さんは3人が食べ始めたのを見届けるとお盆を置いて隆一の隣の席に座る。そして正面でもそもそと食べている辻の顔を眺める。
「辻ちゃん、 やっぱり優子ちゃん達といっしょの方が良かった?」
辻は咲さんに自分の内心を言い当てられドキリとすると顔を上げて彼女を見た。明るくブリーチしたロングヘアーに薄めのメイク、透き通った栗色の瞳、そしてブラウスの上からも分かる大きな胸。
辻は以前、隆一に咲さんとの馴れ初めを聞いた時のことを思い出していた。咲さんは元々湖岡町の遊郭街で働いていて、隆一は咲さんの店に足しげく通って出会ったというのだ。
「ぼ、僕は、大丈夫です。 隆一さんが羨ましいです、咲さんみたいに綺麗な奥さんがいて。」
咲さんはテーブルに両肘を付けて辻のことを見つめた。そして辻が眼鏡越しに自分の胸に視線を奪われているのを見てフフっと微笑み、
「ずっと一人で寂しいんじゃない?」
と言うと、隣の隆一をチラッと見て何やら目配せをする。
「辻ッチ、咲で良かったら一晩貸してやろっか?」
「あたしが癒してあげるよ?」
辻は真っ赤になって、
「な、な、な、なに言ってるんですか二人とも!」
隆一が大雑把なのは知っていたが倫理的にあまりにも問題がある発言だ。
いや、咲さんもいいと言っているし、二人の合意の元では、、、
そんな考えがチラリと浮かぶが、ハッとして顔をぶんぶんと横に振る。
「だ、駄目です、そんなのは!」
隆一は澄ました顔で咲さんと顔を見合わせる。
「ん、じゃあ咲のいた店の子紹介してやるか?」
「そうね、米ちゃんが言ってたけど辻ちゃんは幼い感じの子が好きなんだよね?」
「ぼ、僕はロリコンじゃないです!」
お決まりのツッコミを叫ぶと、辻は一心不乱に鰻丼を掻き込み、ご飯が胸につかえそうになるのをドンドンと手で叩いて飲み込んだ。
「ご、ごちそうさまでした! おいしかったです!」
そう言って立ち上がり食器を持って洗い場に持っていくと、振り向いて三人にお辞儀をしてアパートの自分の部屋に戻って行った。
「ちょっと辻君には刺激が強すぎたんちゃう?」
と孝之が去り行く辻を見ながら言う。
「慌ててもちゃんと食器を下げてくれるのね。辻ちゃんってほんとにいい子。」
「真面目で素直でいい奴だよ、辻ッチは。」
咲さんと隆一は辻の後姿を見ながら何とか辻にいい子を見つけてあげようと心に誓うのであった。
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その夜、孝之はPCのオンライン会議でシェンと定期連絡を取っていた。
「シェン君、そっちの方はどないな感じ?」
シェンはRMSの端末を現在のキャリアの電波を使った携帯から専用端末に移行する案を模索していた。理由は二つある。ひとつはキャリアに支払う利用料金を無くしたいから。もうひとつはRMSのネットワークを専用回線にしてセキュリティを強化したいと考えていたからだ。
シェンは社会情報庁とWHC(和皇高速通信)で共同開発した構内ネットワークを使用した法人向け携帯のβテストを自給生活協会で行うことを計画していた。
「こちらの方はなんとかなりそうです。自給生活協会の敷地に専用のアクセスポイントを設置して、試作機の端末を200台借りることになりました。借りている端末は5年後には減価償却されてほぼ無料で協会に譲渡される予定です。」
シェンの報告に孝之は、
「えらい順調やな、さすがシェン君や。湖岡町の支部にもアクセスポイント置いてくれるん?」
「はい、専用端末のアクセスポイントは本部と支部の両方に設置します。天仁町と湖岡町の間にある光ケーブルの一つを協会用の専用回線で使えるように手配していますので本部と支部の間でも外部回線を経由せずに通信可能になる予定です。」
「専用端末は外部に電話かけたりインターネット見たりはできんの?」
「協会の敷地内であればゲートウェイを通して外部回線にアクセスできるので電話もネットもできます。敷地外に出るとアクセスポイントに接続できなくなるのでキャリアの電波が使える携帯が必要です。」
シェンの説明によると、協会の敷地外に出る旅行者はキャリアの電波が使える共用の携帯電話をRMSで予約して借りられるようにするそうだ。もちろん個人で利用料金を払ってこれまでどおりキャリアの携帯を持つことも自由だ。
「全員専用端末にしたらどんくらいお金節約できるん?」
「外部の回線の使用料と本部支部間の光ケーブルの使用料を合わせて年間100万円くらいです。今までキャリアに払っていた利用料金は一人年間6万円、200回線で1200万円ですから、年間で約1000万円の節約になります。」
シェンは説明を終えると孝之に尋ねた。
「ところで、そちらの医薬品の確保の方はうまくいきましたか?」
孝之はトホホといった感じで肩をすくめる。
「今日、製薬会社と会合したんやけど、契約は無理やったわ。あちらさんの工場にはもうソーラーパネルと蓄電システムがあるみたいなんや。水道もえらい高価な純水製造装置持っとったで。」
「そうですか。プランBの方は?」
「そっちはまだ時間かかりそうや。」
プランBとは、医薬品の有効成分である原薬(API)のうち植物由来のものを協会の食料生産棟で作って製薬会社に提供し、その見返りに製品となった医薬品を貰おうという計画であった。
「プランBやと、自動制御の部分は第1パーティーの米村君に頼むことになるから、CPの取り分はあっちと半々になるやろうな。」
シェンはPCの画面の中の孝之の顔がほろ酔い気味に赤くなっているのを見て、
「孝之さん、少し酔ってます?」
と尋ねた。
「さっき食堂でビール飲みながら反省会してたんや。まあ辻君にはちょっとかわいそうなことあったんやけどな。」
「辻先輩に何かあったんですか?」
孝之は辻のパートナー探しのことをシェンに話すべきかどうか迷う。
「まあ、あれや、青春の悩み的な、あれや。」
シェンは孝之の意味不明な言葉にあえて追及はせずただこう言った。
「辻先輩のこと頼みます。大山先生によると辻先輩は大器晩成型みたいなので。」
「ほう、大山会長がそんなことを。」
「辻先輩は運を呼び寄せる何かを持っている気がします。」
孝之はシェンがそんな非科学的な事を言うのを意外に思う。
辻君の幸運か、、、
ぼんやりと考えながらパソコンの横に置いていた酔い覚ましのお茶を取って一口飲んだ。
シェンは孝之のそんな様子を見て、
「今日はこの辺にしますか?」
と尋ねる。
「せやな、次回は1週間後で。」
「はい、それでは、失礼します。」
シェンがオンラインの画面から消えると孝之はパソコンを閉じアパートの自室の畳に寝そべった。そして携帯を取り出しポイント加算レートを確認する。
<医薬品の生産 250万CP>
半年前より50万ポイント上がっていた。
AIはん、いい仕事しよんな
実際は多くの協会員は個人で貯金を持っているのでそれほど危機感を持っている訳ではないのだが。
鎮痛剤、少のうなっとたし買わんとな、、、
と考えながらまどろみに沈んでいった。
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それから3日後、製薬会社の夜間勤務のアルバイトの募集に一人の青年が訪れていた。
面接官は青年の履歴書を見る。
<辻永周><北央福祉大学卒業>
「君、大学卒業した後は何していたの?」
「自給生活協会で働いていました。」
「あー、あの自給自足の団体ね。 深夜の勤務になるけど大丈夫?」
「はい、大丈夫です。頑張ります!」
面接官は今回の募集の仕事内容が単純労働で急な欠員の補充だったのですぐに採用を決めた。
「じゃあ、明日から来てもらうよ。」
「よろしくお願いします!」
次の日の夜、辻は製薬会社の工場に向かい更衣室で支給された制服に着替えると年配の男性に案内されて作業現場に向かった。仕事の内容は製品の箱詰めだった。作業現場には年配の男性の他に、若い女性が一人いて既に作業を始めていた。
「本多さん、新人入ったからやり方教えて。」
案内役の年配の男性はそう言うと、自分は他のテーブルで別の箱詰め作業を始めた。
若い女性は作業の手を止めると辻を見た。
見た目は10代くらいの若さでセミロングの茶髪をヘアバンドで後ろに一本にまとめている。すっぴんでかわいい顔をしているが表情は暗く、辻を見ると、はあ、と溜息をつく。
辻はその女性にペコリと頭を下げると、
「初めまして、辻永周です。今日からよろしくお願いします!」
と挨拶をした。女性は制服に<本多早苗>と名札がついていた。
「そこにある折りたたまれた段ボール取ってきて。」
「はいっ!」
辻は壁際に積んであった折りたたまれた段ボールを一つ持って来た。
「その段ボールを組み立てて、底の部分をガムテープで止めて。」
辻が言われた通り段ボールを組み立てる。
「できました!」
「あとは、あっちから流れてくる箱を段ボールに詰めるだけ。」
「分かりました!」
早苗はその後は無言で自分の作業を始めた。辻は彼女のやり方を見て参考にしながら作業する。早苗は段ボールの中が一杯になると隙間に緩衝材を入れガムテープで閉じて、ロット番号が印刷してあるシールを貼ると、よいしょと持ち上げた。
「あ、僕持ちますよ?」
辻が言うと、早苗は手に持った箱をテーブルに降ろす。
「じゃあ、これ、あっち側に積んである所に置いてきて。」
「分かりました!」
その後二人はひたすら無言で箱詰めをし、一杯になった段ボールを辻が運んだ。
1時間ばかり作業すると年配の男性が、
「休憩だ。」
と言ってきた。早苗はテーブルを離れると壁際の床に座り携帯を取り出して見始めた。
辻はその横に座ると話しかけた。
「本多さん、何でこのバイト始めたの?」
早苗は横目で辻を見る。
「お金のために決まってるでしょ。」
早苗のすげない返事に辻はめげずに話しかける。
「ここの製品、バイトでも社員価格で買えるって知ってた?」
「知らないしどーでもいい。」
早苗はそう言うと、話しかけんなオーラを身にまとって携帯を見る。
休憩が終わると、また無言で作業が始まった。そんなふうに1時間ごとに休憩しながら朝まで作業が続いた。
その次の日からひたすら無言の作業が続いた。
そして1か月後、早苗はバイトに来なくなり、代わりに別の若い男性が新人で入ってきた。
「辻君、新人入ったからやり方教えて。」
「本多さんは?」
辻が現場を仕切っている年配の男性に尋ねる。
「辞めたよ。」
そうか、やめちゃったのか、、、
辻は早苗とはほとんど言葉を交わさなかったとはいえ寂しく感じるのだった。
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辻が製薬会社でバイトを始めてからしばらくして、ある日の午後、支部のアパートで隆一が青い顔をして孝之の所にやってきた。
「孝さん、辻ッチが倒れた、ちょっと見てくんないか?」
隆一が工務店の仲間とアパートの改装作業をしていて、辻はその手伝いをしていたのだが、作業中にいきなり倒れたというのだ。孝之は隆一に連れられて急いで辻の所に向かう。
「頭打っとるかもしれへんから動かさんといて。」
孝之は辻の脈を測る。脈は正常でゆっくりしたリズムで息をしていた。
「誰か毛布持ってきて掛けてくれへん?」
毛布を掛けられた辻は10分くらいして、ゆっくりと目を覚ました。
「辻君、孝之やけど、分かる?」
「あ、、、はい、分かります。僕、眠ってたんですか?」
結局、辻は睡眠不足と過労と診断された。
辻は孝之に付き添われてアパートの自室に戻った。
孝之は押し入れを開けると布団を出して畳の上に敷く。
「しばらく横になって安静にしとき。」
辻は言われるままに布団に横になる。
「辻君、ここしばらく夜にどっかへ出かけとったん?」
孝之が尋ねると、辻はちょっと間をおいて、
「製薬会社で夜勤のバイトをしてたんです。」
と打ち明けた。そして押し入れの中にある紙袋を指さして、
「それ、孝之さんに渡そうと思って、、受け取ってください。」
と言う。孝之は押し入れから紙袋を取り出すと中を覗いてみた。
「辻君、これ、、、」
そこには鎮痛薬や塗り薬などの医薬品が入っていた。
「僕にはこんなことしかできないから。」
孝之は辻が何を思ってこれを自分に渡したのかすぐに理解した。そして目頭が熱くなった。人情に篤い南州人の彼は辻の行いが心に突き刺さったのだ。
「辻君、おおきにな、ありがたく使わせてもらうわ。」
実際、鎮痛薬はストックが少なくなっていたのだ。
「せや、これも協会への貢献やから、辻君のCP上げて貰わんとな。」
「どうやってCP上げるんですか?」
「ポイント登録で、写真を添付して送るんや。僕が保証人になったる。」
辻は携帯でRMSアプリを立ち上げると孝之に手伝ってもらって買ってきた医薬品の写真を取った。そして孝之を保証人にしてCPの申請をした。
しばらく間があってRMSから反応があった。
<鎮痛薬 製品名**、医師 三宅孝之さんにより納品が確認されました、5000CP加算されました>
<塗り薬 製品名**、医師 三宅孝之さんにより納品が確認されました、3000CP加算されました>
「凄い! ちゃんとCP加算された。」
孝之は喜ぶ辻を見ながら、ふと何かを思いついた。
「辻君、ええこと思いついたで!」
「何ですか?」
「協会が提供できるんは電力自給システムだけやない、労働力もあるんや!」
孝之のアイデアは、協会員を製薬会社に派遣して働いてもらい受け取った給与で医薬品を購入するというものだった。派遣の給与の50%を福利厚生として協会に支払うという名目にするのである。もちろんその協会員には働いた分のCPを加算する。孝之は大山にこのアイデアを実行してよいか打診するとすぐに許可が下りた。
孝之は製薬会社に赴き製品の品質検査を行う役務契約を締結することに成功した。協会側が提示した契約価格が他の派遣会社よりも安かったからだ。そしてRMSのメニューの「その他」に以下の求人が出た。
<湖岡町製薬会社の品質検査業務 1日20000CP 定員3名>
AIが算出したポイント加算レートは協会の他の労働に比べて約2倍だった。
求人3名はすぐに埋まり毎月30万円分の医薬品が確保できることとなった。
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協会が製薬会社と契約をした翌月、第2パーティーの孝之、隆一、辻、シェンの携帯にRMSからミッションクリアの通知が来た。
<医薬品の生産ミッションをクリアしました、第2パーティーに250万CPが加算されました>
孝之:レベル23から25にアップ
隆一:レベル15から18にアップ
辻:レベル4から10にアップ
シェン:レベル13から16にアップ
「よっしゃー、やったで!」
孝之はガッツポーズをする。
「すげー、まさかこんなに早くクリアできるとは思わなかったぜ。」
隆一も興奮する。
「この手法を使えんのは製薬会社だけやあらへんで、湖岡町の製造業、制覇できるんちゃう?」
息まく孝之に、隆一が少し落ち着くと、
「派遣する人員を確保するために協会員を増やさねえとな。」
と言う。孝之も落ち着きを取り戻し、
「せやな、急いては事を仕損じる言うし、まずは拠点となる生活棟の拡充からやな。」
そして辻を見た。
「言うても、今回の功労者は、辻君や。」
辻は照れると、
「レベル上がってビールを予約できるようになったので良かったです。」
と頭をかきながら言う。隆一はそんな辻の肩に腕を回し、
「辻ッチにはご褒美をやんないとな。」
とニヤリと笑う。
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その夜、隆一、孝之、辻の3人は湖岡町の遊郭街を歩いていた。
「隆一君、ほんまにええんの?」
「今日は無礼講だしな、咲には店に連絡してもらってるから期待してもらっていいぜ。」
辻はそわそわと落ち着かず周りを見渡す。ピンク色のネオンに灯された妖艶な看板の店が並び、呼び込みの男たちが道行く人々に声を掛けていた。
「孝之さんもこういう店に入ったことあるんですか?」
辻が孝之に尋ねる。
「湖岡町の遊郭街なら病院の同僚と一緒に来たことあるで。」
「お、孝さんも男っすね。」
と隆一。
「はは、優子と二人暮らししとったら彼女も作れへんかったしなあ。」
孝之が大学病院の研修医をしていた頃、若い看護師の女性をアパートに連れ込んでいるところに優子と遭遇、ちょっとした修羅場があったのだ。
「お、この店だぜ。」
隆一が店の前で立ち止まると、女性の店長が迎え入れた。
「隆一さんお久しぶりですね、どうぞ中へ入って下さい。」
店長に連れられて3人が店の中に入る。
「んじゃ、俺はここで待ってるから二人とも楽しんできてくれ。」
孝之と辻はそれぞれ別の部屋に案内された。
「あっちの方の連れには若い子頼むわ。」
と隆一は辻が行った方を指さし店長にお願いする。
「新人でいい子入ったから、その子をつけますね。」
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辻は部屋に通されるとソファに座って待っていた。
心臓の音がドクンドクンと高鳴る。
とうとうこの時がやって来たのか、、僕どうなっちゃうんだろう、、、
しばらくして、ドアの前で店員が声を掛けてきた。
「お客様、お待たせしました。コノハちゃんです。」
ドアが開き女の子が入ってきた。
「初めまして、コノハです、、よろしく、、え?」
「あ、、」
そこには女子高生の制服にコスプレした本多早苗が立っていた。
スペック:
孝之:170cm, 64kg, A+
隆一:173cm, 63kg, O+
咲:161cm, 52kg, A+
早苗:154cm, 43kg, B+
最近多忙で投稿ペース落ちてきましたが、がんばります。