虹
今にも降りだしそうな空模様。
はぐれた煙のような雲が、視認できる速さで流れていく。ぽつぽつと、遠慮がちに雨粒が落ちてきた。帰り道と雨雲の通り道が交わるところ、ぽつ、ぽつ、と。
手にしていた傘をひらいて、横断歩道で信号待ち。信号が青になると、傘の下に風がもぐりこんで、身体が空に引っ張られた。風をいなしながらも、たたらを踏んで小走りで横断歩道を渡る。
つと西の空を見やると、和紙のようにやぶれた雲間に、琥珀色の光があった。
「……天気雨だ」
歩を進めると、雨雲とは行く道を別ったようで。
東の空を見上げれば、白い雲が流れ来て、虹が架かっていた。
そこここに、雨上がりの潔さがある。
虹を見て、思わず走りだす。空を見上げながら、走っていく。