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生徒会長の憂鬱  作者: 茅葺クッキー
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放課後の一室

登場人物紹介

************************************

三浦みうら 荘二郎そうじろう・・・鷹の丘中学校生徒会長

澄水すみず 太一たいち・・・生徒会副会長

池表いけおもて 一茂かずしげ・・・一年副会長

金沢かなざわ 由宇ゆう・・・書記

大崎さん(おおさき)・・・副書記

綿部わたべ 日影ひかげ・・・一年副書記

田末 砲現三郎之助(たすえ ほうげんさぶろうのすけ)・・・生活委員長



放課後。鷹の丘中学校生徒会長三浦荘二郎は生徒会室に居た。


3年5組の隣にひっそりと構えるこの教室は使用することがない一般生徒からしてみれば「謎の部屋」であった。だが生徒会役員になっても、その謎は深まるばかりであった。


部屋の中には折り紙の本、カン潰し、バレーボールにメガホン、インク、メモ帳、進路関係の書類、数学の小テスト・・・。生徒会とは無関係な物資を無理やり棚に詰め込んだ生徒会室は、アニメや漫画に出てくるような優雅なイメージとはかけ離れている。



「なあ、俺部活行きたいんだけど」



そう切り出してきたのは副会長の澄水太一だ。明るく接しやすい性格で周囲からは“すみたい”と言って慕われている。


会議前だってのに「部活に行きたい」など生徒会活動に消極的な姿勢を示す彼もかつては選挙演説会で場をわかせ民衆の支持を得た一人だった。



中学校であっても選挙公約とやらは守られないものらしい。


彼が打ち立てた公約「ゆるゆるスポーツ大会の実施」は恐らく守られることはないだろう。周りはそんな公約、覚えていないし、当の本人も実現する気すらなさそうだ。



「澄水先輩、それは流石に自分勝手すぎ」



そう文句をつけているのが1年副会長の池表一茂である。1年生は仕事が無いに等しいもんだから、鍵を取りに行ったり返しに行ったりと、雑用に勤しんでいる。彼の場合は生徒会室の整理がなってないことが不満のようでいつも棚の整理整頓や床掃除をしているイメージがある。



そんな池表に先立って、ということで三浦と綿部が「生徒会室を綺麗にする」と池表に宣言し、放課後に二人で掃除をしようとした。だが、どういうわけか調子に乗ってしまい、生徒会室がかえって汚くなってしまって池表に怒られたのは今となってはいい思い出のようだ。



三浦がふと時計をみると12時34分であった。この部屋の時計は狂っているのだ。針が逆行し急に謎の音が鳴り出す。不便ではあったが見ていて面白いのでそのままにしておいた。


澄水と綿部と池表の口論はいつの間にか談笑に変わっていた。


書記の金沢さんは静観を決め込んだか、さっきから黙って動かない。



会議がいっこう始まる気配がないのは副書記の大崎が来ないせいである。


どことなくチャラくした雰囲気を醸し出している彼女は、夜に街をほっつき歩いているという噂まで流れてくる。生徒会活動にはあいさつ運動と会議ぐらいにしか出席しない大崎に対して印刷担当の綿部はいつも文句を言っている。



「靴なかったわ」



靴箱から戻ってきた生活委員長の田末はそう三浦に告げた。



「そう。ありがとう」



軽く礼を言う。大崎は既に帰ってしまったようだ。



生活委員長の田末は眼鏡をかけたひょろ長い男だ。水泳部の部長でどこかやる気のなさを感じさせる雰囲気をまとっていた。


だが何かと人を笑わせる男で結構生徒会の中心人物でもある。



「大崎さん帰ったみたいだからもう始めようか」



会議と言っても評議だけのミニ会議みたいなものだ。軽いジョークを澄水が飛ばしてその場が涼しくなる。



会議の内容は冬休み中に行われるアルミ缶回収についてだ。これには評議としてはちょっと苦い思い出がある。後日行われる評議委員会で各クラスの学級委員に説明する内容を確認する。



精神的にしんどい思いをしている三浦だが、こんな風に生徒会で動いているときだけは楽になれた。


だから三浦は毎日のように生徒会に通っている。あの苦しみを分かち合った仲間と一緒にいるだけで十分だった。



あと一ヶ月で冬休みがやってくる。暖房の効かない生徒会では活気の暖を取れた。


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