自分の発明した魔法とかでエロい目にあわされる魔女の助手
「助手君! 助手君!」
「なんですか?」
「ついに完成したよ!!」
「何がです?」
「触手生物」
呼ばれて向かった研究室。
かつて天才と評された魔女は屈託のない笑みを浮かべてそう言った。
隣にはピンク色をした無数のしなる触手を生やした異形の怪物がいる。なるほど、たしかにこれは触手生物だ。
「……」
……こいつ、何作ってんの?
思わずため息が溢れた。
かつてこの魔女は国お抱えの魔導師として数多の有用な魔法を開発し数えきれないほどの人を救った。その成れの果てがこれだ。
女騎士あたりがどエロイ目に合わされそうな風貌の触手生物の隣でへらへら笑っている姿には痴性こそ感じれど知性はまるで感じられない。なんなら隣の化け物の方が賢そうまである。
おそらくげんなりしているであろう俺の表情に何を勘違いしたのか嬉しそうに魔女が口を開いた。
「ほら、最近の世の中って私みたいに真面目に生きてる人にとっては実に生きづらいでしょ?」
真面目に生きてるつもりだったの?その有り様で?図々しいぞ。
「だからさ、私は『癒し』が必要だと思うんだよね。で、色々考えてみたけどやっぱり癒し系最強は『心を癒してくれるペット』と『体を癒してくれるマッサージ』だと思う」
「……まぁ、たしかに」
「合わせてみたらこうなった」
「二度とかけ算しないでくださいね」
パッと見からして失敗作なんだよ。
大体こいつのどこに癒し要素があるんだよ。見てるだけでSAN値削られる見た目してるだろうが。
「そんなにダメかなぁ? よく見るとけっこう可愛い顔してるよ?」
「顔どこだよ」
思わず敬語を忘れる。
全体的に触手まみれで顔どころか胴体も足も見えないんだよ。
魔女はそんなこちらの疑問なんて聞こえてもいないらしく変わらずしまりのない笑みを浮かべて熱弁を振るう。
「あと、この子の触手ヌメヌメしてて変な粘液出てるからさ、この触手でマッサージしてもらったらたぶん気持ちいいよ。オイルマッサージの亜種みたいな感じで」
「たぶん一般的にはヌメヌメしててなんかよく分からない粘液出てる触手で触られるのは避けたいことだと思いますよ」
「理解できないものを理解しようとせずにただ拒絶するのは愚かなことだよ」
しまりのない笑みを潜め、極めて真面目な顔で魔女はそう言った。
うんうんそうだね。でも、人は愚かなものだから。あと、得たいの知れない触手生物作る奴はもっと愚かだから。
「急に真面目な顔でそれっぽいこと言わないで下さい。一瞬かっこいいこと言ってるのかと思っちゃったじゃないですか」
時には逃げることも大切だ。特に意味分からん触手生物からとか。
なんか愛着湧いてるらしいけど、その粘液ほんとに無害なんだろうな。
「ま、そういうわけだからさ。とりあえず私がこの子の触手マッサージを受けてみることにするよ」
どういうわけだよ……。
「えっと……じゃあとりあえず掌をお願いできるかな?」
触手生物に向かって右手を出してそう告げる魔女。
どうやらバッチリ知性はあるらしく触手生物は体を一度うねらせるとそのまま触手で包み込んだ。
何てこった。作った奴より聞き分けありそうだぞこいつ。
「……あっ。……これっ……凄い……っ。凄い……気持ちいいっ」
予想外の触手生物の有能さに驚いていると魔女がビクッと体を震わせるとらしくもないか弱い声で小さくそう呟いた。
微かに頬を上気させリラックスしているのが端からも見てとれる。
さっきは頭ごなしに否定してしまったけれど、これを見るとどうやら間違っていたのは俺らしい。見た目を除けばこの触手生物の癒し効果はたしかなようだ。
「ところで……助手君……っ」
「何ですか?」
「何だか全身が凄く熱くて気持ち良くなってきたんだけど……」
「……は?」
ちょっと待てよ。
頬が上気してるのは血行が良くなったからとしても目がとろんとしてるのはどういうことだ。
「何だか……全身……敏感に……ひゃんっ!?」
一本の触手が魔女の首筋を這う。
飛び上がるような過剰な反応を示したかと思うとそのまま魔女は地面に座り込んでしまった。
そのとき魔女の腕は右も左も既に触手に掴まれていて、力なく震える足へと触手が向かっているところだった。
「ひぇっ……ら、らめぇ♡♡ 耳は弱いんだってばぁ♡♡ 助手君たしゅけてぇ♡♡」
「…………」
たぶん粘液に催淫物質でも含まれていたのだろう。
とりあえず助けてめちゃくちゃ説教した。
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