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6話 神話、そして


大魔王の軍勢を倒し、王都に戻った俺達は、

ニゼルさんと国王に連れられ、城の客間に案内された。

城も復興の最中で、外壁もかなりボロボロになっているが城下よりは修復が進んでいる。


「……勇者がやられたのであったな。

人間では倒すことが出来ぬ……、正に神話の通りであったと言うわけか。」


「……こういってはなんだがな、勇者のお陰で大魔王の真の目的も知れたのだ。 彼らは良くやってくれた方だよ。」


ニゼルさんと国王とでトントンと話が進んでしまい、俺たちは話についていけていなかった。

なので、彼らの話を失礼ながら遮り、話を切り出す。


「あのー、そもそも神話って何の神話ですか?

それに大魔王の目的は地上の征服では?」


「そ、そうですよ!私達にも分かるように説明してください!」


俺に続き、クルシュも説明を求める。

ニコラスも神話と言って納得していたことから、人間には伝わっていないものかもしれない。


「そうだな、ではまず……神話について語るとしよう。

これはな、この世界に伝わる邪神とそれを利用したとある帝国の軍師、それを封印した神造生物に纏わるものだ。」


「神造生物と、邪神……、何やら物騒な単語ですね。」


「今から遥か1億年前の事だ、この頃は竜も地上で暴れまわっていた。 とある村に、手にすれば絶対の力を得られると言われた箱が存在した。

その箱が内包する魔力量は桁違いに高くてな、村では恐れられ、封印がされていたのだ。

その箱に目を付けたのが帝国、そこの軍師だ。」


「帝国の軍師……!聞いたことがあります、遥か太古にたった数日で帝国全体からの支持率が9割強にまで上昇し、戦争や内政でもその優れた頭脳で帝国を導いた天才と呼ばれていた人物です!」


ニゼルが説明を始めてから、クルシュは食い入るように話を聞いている。クルシュはこういったものが好きなのだろうか?

ニゼルの語りは続く。


「そう、其奴だ。 軍師はその村に事前に何も知らぬ妹を住まわせておき、箱を帝国に持っていくように指示をし、妹は快く引き受けた。 とある説ではここで既に軍師は箱の中身を知っていたと言われている。

妹の旅の道中、苦難の連続であったそうだが、ここで神造生物が彼女の味方をしたそうだ。」


「先程も出ました、その神造生物とは?」


「姿しか伝わっておらん。曰く、竜のようであった…と。

時折姿を変えるようで、どれが真の姿かは伝わっておらん。

それで、だ肝心の中身は…邪神だ。」


「邪神……!絶対神様とはまた別の神が……。」


「……恐らく、大魔王の目的は邪神の復活だ。

勇者が死んだのに甦らぬのはその為よ。」


この世界では勇者パーティー、精霊に選ばれたもの達は、たとえ力尽きたとしても魂さえ残っていれば甦ることが可能だ。

だが、甦ることが出来ても死んだときの記憶や甦ったことによる精神的ショックが大きいのが難点だ。

今回、勇者が死んだ、つまり魂が残らなかったから復活しなかったんだ。それが邪神と関係が……?


「邪神は神話通りであれば封印されたのだ。正確には軍師だが。

軍師はあろうことか邪神を取り込み、制御をも成し遂げた。

最後は劇件の末、神造生物が奴を封印、その時に封印のキーを勇者、賢者、あと一人は分かっておらぬが3人の魂の中に分割したのだ。その封印は子孫にも受け継がれる……。 勇者の魂が還ってこない理由がそれだ。」


……リディアも確か有名どころの賢者の子孫だと自慢してたっけ。

いつも大人びてるアイツが、唯一子供みたいな雰囲気になってたから印象に残っている。 死んじまったのか……アイツ。

封印に関係してないイライザとニシキは生きてるんじゃないか?

魂は戻ってきていないのだから魔界で生きているか、魔王城に囚われているのかもしれない、残りの一人を誘き出すために。


「しかし府に落ちん。何故、精霊はこの神話を人間には伝えぬのだ。

そも、奴等ならば事前に人間では倒せないと知り、対策が出来た筈では……?」


「それに大魔王をどうするかを考えねば。いつまた襲われるか」


ニゼルと国王は二人でボソボソと話し、考え込んでいる。


俺はアイツらが死んだって聞いたとき、何とも言えない気持ちになった。

追い出されたとはいえ、元はパーティーメンバーだ。そこら辺の気持ちが混ざって良く分からない感じになっている。

仇を討ちたいって思う一方、ほんの少しだが、清々したって気持ちもない訳じゃない。

俺が考えていると、クルシュが声を掛けてくる。


「ミシェルさん……、勇者の皆さん、居なくなっちゃったんですよね?」


「……、あぁ。」


「大魔王を倒す人……居ないんですよね?」


「そうだな。……どうしたんだ?クルシュ。」


「ミシェルさん、お願いがあるんです。」


クルシュが真剣な顔つきで姿勢を正して、こちらを見る。

思わずドキッとしたのは内緒だ。


「……私と大魔王討伐パーティーを組んでくれませんか?」


「………え?」


「だって、ミシェルさん。あの話を聞いてから雰囲気が更に暗くなっちゃったんですよ?

そんなミシェルさん見れられないんです。 恐らく、勇者パーティーの皆さんのこと考えてらっしゃいますよね?

なら、生き残ってるかもしれないお仲間さんを助けて、大魔王もやっつけて、見返してやりましょう!それならそのモヤモヤを取り除けるかもしれませんから!」


顔に出てたのか……、それにクルシュがこんなことを言ってくるなんて。

ちょっと勘違いしていそうだが、嬉しいことを言ってくれた。

彼女と討伐パーティー……、良いかもしれない。

それに人間じゃ倒せないし、何よりまた誰かと旅が出来るのが嬉しい。


「あぁ!分かった。

でもあんまり頼りにしてくれるなよ? 戦闘以外ではそこまでなんだ。

危険だと思ったり、嫌だと思ったら君の判断で逃げるなり、俺に言ったりしてくれ、直したりするからさ。」


「大丈夫ですよ。」


俺達は大魔王討伐パーティーを結成することを二人に伝えることにした。

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