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セブンスコード  作者: 鳥島飛鳥
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2話 『炎の守護者 グレン・ホタル・シックス』(4)

夢庵怜奈

「……これがふかふかベッドですか。中途半端な触り心地ですね~」

「無茶言うなよ~。それでも特別品、バガリア鳥の羽毛だよ?」

 あたしは王様に与えられた部屋のベッドに腰掛ける。

 部屋は二十畳ほどあり、調度品なども豪華。だけど、あたしのマンション方が良い部屋だね~。

「はぁ……本当に勘弁してくれ……」

隣では『先輩の保険』のリンガーさんが、胃が痛そうな顔をして立っている。

 この人、そのうち胃潰瘍とかで倒れるんじゃないかな?

「それにしたってね~。あたし人質様だよ? もっといい物を頂戴よ~」

「はぁ。だから、それはこの国の最高級品だって」

「大したことないあぁ~イセリアも」

 やっぱり科学技術は前の世界の方優れている。ベッドひとつとってもふかふか具合が全然違う。そう思うと前の世界も悪くなかったのかな~。

 まあ、死んでも戻りたくないけど。

「いいです。こうなったらお料理に期待しますから」

「あまり城の料理人に期待して貰ってもね~。王が食事に興味がないから、そこまでの物は出ないよ?」

「はぁ~。つまんなーい。怜奈ちゃんはつまんないでーす」

「ため息を吐きたいのはこっちだよ。僕の地位はボロボロ。さらには部隊まで外されて、お嬢ちゃんのおもりだ。不問……って言ったのになぁ陛下」

「それについては深く同情します」

 だけどねぇ~。私のつまらなさよりは些細な問題なんだよね。

「ここには何もなーい。なにより先輩がいなーい。ちょっと暴れたーい」

「はぁ。そんなことを鼻歌混じりに言わないでくれよ……表で控えている兵士に聞かれたら、また僕の立場が悪くなるじゃないか」

「まあまあ。元気を出して下さい。この事態はすぐに終わりますよ」

「……キミ何かする気かい?」

 リンガーさんの目に警戒が宿る。何かお腹に抱えてそうだけど……所詮は王国の騎士かぁ……なんか失望。

「さあ、リンガーさんは撤収で! あたしは自分の部屋に先輩以外の男を長居させないことにしているんです! さあ出てって下さい!」

 わがままに騒いでみる。大半は本心だけど~。

 悪人ではないと思うけど……警戒をするに値する人物だ。

「はぁー……僕はリュウジ君の『命令』に縛られているから、キミを守らなければならない。だから、部屋の前で警護させて貰うよ?」

 疲れた顔でそれだけ言って、部屋を出ていくリンガーさん。

 あの人……本当に倒れそうだなぁ……ストレスで。

「やだやだ。この世界にもブラック会社って存在するんだ~。主に原因はあたしだけど」

 本当はあたしも先輩と行ければよかったんだけど……そうもいかない。先輩は大好きだけど、一緒に居てはできないことがあるから。

 それは先輩とあたしでは決定的に『違う点』が原因だ。

 それは――。

「……まっ。ここから初めますか……『イセリア王暗殺計画』を」

 あたしは――大好きな人たちの為なら、他の人間がいくら死んでも構わない。

ぶっちゃけ、先輩、ミセさん、グレンちゃん以外はどうでもいい。人なんて腐るほどいるんだし。

 大好きな人たちの為に自分の手を汚す。おっとなんかカッコいい!

「くすっ。あたしってヤンデレだね~」

 先輩には理解されないだろう。もしこんな女の子だと知られたら嫌われるかも。だから絶対に知られる気はない。

 だって嫌われの嫌だしね~。年頃の女の子って感じ~。

「くすっ。さぁて――何人来るかな『セブンスコード』は……」

 あたしは自分で言うのもなんだけど、悪女の様に笑った。

 ――先輩の影になることを決意して。


   ◇◇◇


豊田竜二。


 次の日の昼頃。

『お、おい……あ、あれ……メーアを狙った……金髪の女と……な、なんだ? あの赤い髪の女の子は……』

『赤い髪に……赤い瞳なんて珍しいな。外国人か?』

「見事に目立ってるな……」

 俺はミセ、グレンと共に王都の商店街に来ていた。ここは前の世界の、発展途上国の市場みたいな雰囲気だ。

 人間の他にも獣人といった亜人種も見かける。

 なんというファンタジー。周りからは美味そうな匂いもするし。

「……雰囲気いいな」

 技術は進んでいないが、大勢の人々がいて、活気もあり、食品から日常品まで様々な物が売られている。規模もかなり大きく、さすがはこの国最大の街だ。 

……あの王が納めている国とは思えない。

「外は見事に晴天、実にいい買い物日和だ」

『ヒソヒソ……あれよそ者』

『何しに来たんだ……?』

「……よし強がりは辞めよう」

 こういう変に注目を集めているのはマジでダメ……昔のトラウマがよみがえる。

 一気に帰って酒を飲みたくなる。

「昔コンビニ行っただけ指差されたりしたな……帰りたい」

「お兄さん泣き言を言わないで下さい……こっちまで悲しくなってきます」

「リュウジはメンタル弱いからね~。あはは……気持ちはわかるけどね」

「……女は強いなぁ~。俺一番目立ってないのに、酒が飲みたい」

「あっ。いいわね私も飲みたい! つい数秒前は強がったけど! もう飲まなきゃやってられないのよ!」

「……はぁ。だめです。真面目に『おとり』をやって下さい。私の『髪と目』はレインディアでは有名です。私を見つければ接触してくるはずです」

 グレンは疲れたようにため息をする。ごめんなさい……ダメ人間で。

 そう。ここには『おとり』で来ている。セブンスコードを引き釣り出すための……。

 そして――その成果は得られそうだ。

「……つけられてるな。街の野次馬とは違う気配がひとつ。これだけの『生命力』を放つ奴はそうは居ない」

「……! お兄さんわかるんですか?」

「しっ! 距離は離れているけど……相手はセブンスコードだ」

「ご、ごめんなさい……」

 ねばっこく……纏わりつくような気配だ。

 威圧感があり……グレンやミセに近い部分がある……様な気がする。

 ……これは当たりかもな。

「相変わらず、リュウジの感知スキル高いわね……恐らく生物が放つエネルギーを感じ取っているんでしょうけど……それにしたって強すぎる気がするわ……」

 ミセが興味深そうに頷く……。

「まあ、役にたつからなんでもいいけど……それよりも今俺たちをつけている気配が気になるな」

 ……正直不安要素が大きいな。相手の情報を何も知らない訳だし。

 せめて……同じ国のセブンスコードであったグレンとは、今のうちに別行動をとるべきか……? 

「……それでどうしますか? 私はお兄さんについていきます」

 俺の心配そうな視線を読み取ったのか、グレンは探るように聞いてくる。その瞳には意思が宿っている。

 思うところがあるようだ。自分と同じ存在が近くにいることに……。

 それは――興味からくることなのか、それとも――。

 はぁ。どちらにせよグレンを置いていく選択肢はなさそうだな。

「どうもこうもねぇ。会ってやろうじゃねぇか。世界を亡ぼす存在と」


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