第63話 新日英同盟!?(後編)
アーノルド特使は、谷外務大臣との会談を振り返ったが、何も自らの悪い点を思い浮かべる事が出来なかった。
唯一、ナチスドイツのユダヤ人迫害について触れた時だけ反応を見せた谷外務大臣に、そこに何か在るとは考えたが。
アーノルド特使らは、谷外務大臣との会談の2日後、また呼び出された。
アーノルド特使らは、東京内の某所にあるホテルにいたのだ。
アーノルド特使らを乗せた車は、何処かに向かっていたがそれがアーノルド特使に教えられる事はなかった。
とある部屋
谷外務大臣
「ようこそ、アーノルド特使。
今日はきちんとお話することが出来そうです。」
アーノルド特使
「よろしくお願いします。」
谷外務大臣
「では、ここでしばらくお待ち下さい。」
そう言って、谷外務大臣は部屋を出た。
5分ぐらいたった頃、谷外務大臣は、5名の人を連れて戻ってきた。
谷外務大臣
「では、会談の前に我々を紹介しましょう。
アーノルド特使、こちらが日本の天皇陛下である。挨拶を」
アーノルド特使
「私は、イギリスから参りましたアーノルド・マリオンと申します。よろしくお願いいたします。」
そう言って頭を下げた。それに続いてイギリスの面々が挨拶を行った。いきなり天皇陛下が参った事に驚きはしたが、なんとか普通に対応した。
谷外務大臣
「そして、こちらから東條英樹首相、永野修身軍務大臣、陸軍の牛島満大将 、海軍の山本五十六大将、諜報担当の川上翔特務中将です。」
東條首相
「私が、首相の東條です。よろしく。
時間はたっぷりありますが、残りの四人について挨拶は省かせてもらいます。
はっきり言ってイギリスの提案には、私は賛成する事特ではないという意見が全ての大臣、ここにいる軍部の面々の意見です。
外交的に見ても、戦争戦術的に見ても、特ではありません。
まぁ、10年前ならば、利権の問題がなければ同盟を再び結んでもよかったのですがね。
ですが、我々日本は、全ての民族は平等という事を掲げています。
ここに居られる陛下は、その話の為だけにわざわざここに来ていただきました。
陛下、お話をお願いします。」
そう言って東條は陛下の方を向いた。
天皇陛下
「朕は、全ての民族、国家は平等でなければならないと考える。
その為には、ナチスドイツの横暴を認める事は許されない。」
東條首相
「アーノルド特使、そう言う事なのです。」
アーノルド特使
「我々は、どうなるのでしょうか?
陛下素晴らしいのお考えは、分かりました。」
東條首相
「永野軍務大臣説明をお願いします。」
永野軍務大臣
「私が、詳しく話させてもらいます。
あなた方特使らは、イギリス本国にきちんと送り届ける事は我々が約束しましょう。こちらからイギリスに派遣する人材とともに。
では、詳しい話に移りましょう。
こちらを見てください。
(ボードに貼り付けられた世界地図が出された。)
この地図を見るとヨーロッパの大半は、ドイツとその同盟国に占領されています。
ソビエトとイギリス以外ほとんどです。
アフリカは、なんとか連合軍が押さえたみたいですが。これからは維持し続けられるかどうか分かりません。
トルコは現在、イギリスとアメリカがなんとか押さえているみたいですが戦線が伸びきっています。ドイツも同様に戦線が伸びきってしまっています。どちらも伸びきった戦線の維持が大変であり、補給の途切れた方が負けるでしょう。イギリスが今インドで反乱が起これば、負け確実ですね。
親日国であり、中立であったトルコを戦場にしたドイツは許せませんから。艦隊だけでも我々が派遣出来ればよいのですが。残念ですが、今はアメリカがいますから無理です。
ソビエトですが、ドイツの陸軍がどれ程の兵力をつぎ込むかによりますが、このままでは早々都市を奪われ、あまり持たずに陥落する恐れがあるでしょう。
そして、我々日本にとってアメリカの太平洋への兵力の投入は、危機です。今は、南アメリカ大陸回り出ないと戦力を投入出来ないからよいのです。
我々が壊したパナマ運河は未だに修復出来ないのですから。どんなに早くても、後二年はかかりますから。
フィリピンはもうすぐ落ちますから問題ありません。
オーストラリアは、イギリスが説得してくれると言うなら問題ありません。
中国、満州に関しては、今の所全く問題はありません。
以上の通り問題は、ソビエトとアメリカだけです。
極東ソビエトについては、イギリスの仲介があるならば満州から軍をある程度撤退させてもよいでしょう。そしたら、ソビエトもヨーロッパに部隊を戻す事が出来るでしょう。
軍事的な事は、私からは以上です。」
東條首相
「このような感じでよいですかねアーノルド特使?」
アーノルド特使
「ありがとうございます。
イギリスは、ソビエトとの会談の準備とアメリカへの和平工作を行う事を約束します。そして、オーストラリアとイギリスは日本との戦争を終りにします。」
谷外務大臣
「そうですねアーノルド特使。
ソビエトとの会談はきちんとしていただきたい。
そして、アメリカとの和平工作を行って欲しい。我々には、停戦する用意はある、と伝えて下さい。
今、話題に上がりませんでしたが、オランダはどうなりますか?
イギリスには、オランダの亡命政権があるはずです。」
アーノルド特使
「オランダの亡命政権は、現在我々の事を知りません。
太平洋でのオランダの活動も止めるように約束しましょう。」
東條首相
「アーノルド特使、我々、貴国に駐英大使を勤めた重光葵をこの件の全権大使として派遣する。
無事に重光全権特使と共に本国に帰国し、この事をきちんと伝えて下さい。」
アーノルド特使
「東條首相、分かりません。
責任を持って本件を成功させてみます。」
永野軍務大臣
「貴殿の帰国は、日本に来たのと同様にシンガポールまでは飛行機で。
そこからセイロンのイギリス海軍基地までは、我々の戦艦が送る手筈になっています。セイロンから先も補給の状況により、我が海軍がお届けしましょう。」
アーノルド特使
「永野軍務大臣、ありがとうございます。」
谷外務大臣
「アーノルド特使、カルロス副特使は、あなたが条約を結ぶのに成功した場合のみイギリスに帰れる事をお忘れなく。
人質とは口が悪いですが、連絡が取れなくては困りますので。
立場は、臨時外交官として保証するので問題は起きないでしょう。」
カルロス副特使
「了解しました。
アーノルド特使、後はよろしくお願いします。
私は、日本に残ります。本国で条約を成し遂げて下さい。」
谷外務大臣
「アーノルド特使、よろしいですね。
細かい事はまだ時間がありますからこれから決めましょう。
シンガポールへ飛びのは、10日後ですから。」
アーノルド特使
「分かりました。」
陛下もいたため、この日は、これで終わった。
後日、アーノルド特使と谷外務大臣との更なる会談で細かく取り決め書類にされた。
アーノルド特使と部下そして、重光全権大使は、イギリスへ行くために11月15日日本を離れた。
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