第62話 新日英同盟!?(前編)
最近忙しく、更新が遅くなっています。
すいません
対日副特使リッチモンド・カルロスは、護衛の10名の部下を従え、イギリス本国からソビエトに船で入り、モスクワからシベリア鉄道を乗り、14日掛けてウラジオストクに着きいた。
部下が10名というのも少ないが、この時期シベリア鉄道を使って極東に移動する人はほとんどいなかったので、スパイを警戒した為、仕方が無かった。
そして、そこからは満州の軍人国境線沿いで正式に名乗りを上げ、日本との会談をしたい胸を伝えた。
ロシアとの国境を守備する満州軍(部隊の半分以上は日本の義勇軍)は、この問題は自分等で解決できないと考え、すぐに東京に指示を、仰いだ。
東京では、緊急会議が開かれた。
今までは、常に戦略諜報軍の情報を頼りにしてきただけあって、予想外の事に戸惑つてしまったのだ。
さらに戸惑わせたのは、副特使だと言うことである。
本当の特使はどこに行ったのかという事である。
これは満州の義勇軍からの追加報告書で分かったのだが、本当の特使は地中海を経由し、紅海からインドに入りマラッカ海峡を通過し船でシンガポールに入る予定だという事だった。
この驚くべきイギリスの行動によって、戦略諜報軍もヨーロッパに対しては、高い諜報能力を持っていない事が分かってしまった。
中国や、フィリピンなどのアジア諸国には浸透しているスパイがたくさんいるが、イギリスには全くいないのだから仕方なかった。
日本は、直ぐに満州に空軍の輸送機(大型爆撃機銀河改造)を派遣し、カルロス対日副特使を日本本土に招いた。
カルロス副特使によると、ドイツ、イタリアに加え、フランス、スペインが戦争に参加しだした為、海軍に移動も安全とは言い切れないそうだ。
その為、副特使であるカルロスはソビエトに入りシベリア鉄道で日本を目指したそうだ。現在にらみ合いが続いているが、一応不可侵条約を結んでいるソビエトからならなんとか満州に入れると考えたらしい。
その10日後、その情報を伝えてあったシンガポールの南方方面空軍の偵察機が、マラッカ海峡に向かう怪しい旧式駆逐艦2隻を発見した。
怪しい駆逐艦とは、その特使が乗った駆逐艦ではあるのだが。
日本海軍は、シンガポールから重巡洋艦足柄と第22駆逐隊の皐月、水無月、文月、長月の計5隻をマラッカ海峡からその2隻の駆逐艦に向けて出港させた。
シンガポールを基地とする第四艦隊第十七戦隊旗艦足柄には、高橋伊望中将がイギリスからの特使を迎える為に乗艦した。
旧式駆逐艦2隻に、重巡洋艦足柄を含むこの5隻は過剰な戦力だが万が一の事を考えて重巡洋艦を含む部隊を派遣した。
シンガポールには、スマトラ島のパレンバンにある蘭印最大かつ東南アジア有数の大油田地帯である、ロイヤル・ダッチ・シェルが操業していた製油所から採られた重油を含む石油が大量に保管されていた。その為、海軍の艦艇は石油の残量を気にせずに作戦行動が取れたのだ。
マラッカ海峡にイギリスの駆逐艦が入る前に日本海軍のこの5隻は、イギリス駆逐艦と接触した。
まず、イギリス駆逐艦に銃器を扱うように訓練された水兵を送り込んだ。
そして、イギリス駆逐艦に反抗の意図がないかを確認した。
確認が取れたという合図を受けると、重巡洋艦那智の後部からオ式回転翼機が発艦しイギリス駆逐艦の元へ飛び立った。
いきなり、見慣れない兵器を見たイギリス駆逐艦の水兵らはとても驚かされたが、艦長の一声で騒ぎはすぐに収まったそうだ。
オ式回転翼機でイギリスの特使アーノルド・マリオンは、重巡洋艦足柄に運ばれた。
だが、アーノルド特使は、重巡洋艦那智で高橋伊望中将との会談を終えると、イギリスの駆逐艦に戻った。
日本海軍としては、駆逐艦なんかに比べれば圧倒的に移住性の良い重巡洋艦に乗ればと思ったが、アーノルド特使が帰ると言ったので帰ってもらった。
アーノルド特使が残した後の記録では、正体不明の飛ぶ機体に乗せられ連れていかれるのが人生最大の恐怖だそうだ。
イギリス駆逐艦2隻を引き連れた高橋中将率いる部隊は、何の問題も起こらずにシンガポールに帰港した。
アーノルド特使は、2日シンガポールで休息を取った。
それからは、空軍の大型輸送機(大型爆撃機銀河改造)に乗り、サイゴン、台湾の飛行場で補給をし、東京の羽田飛行場に降り立った。
この羽田飛行場は、戦争以前はハブ空港として運用されていたが、戦争が始まると空軍に接収された。そして、今は空軍の本土防空隊の中でも最重要の首都防空隊の飛行場の一つとして使用されている。飛行場は拡張され、全長1500mの滑走路を二本と1000m滑走路を一本になっていた。
羽田飛行場に降りたアーノルド特使は、大々的な歓迎をされること無く、ひっそりと飛行場から車で東京の中心部に向かった。
翌日、アーノルド特使らは、東京の某所でカルロス副使と共に会談に望んだ。
日本からは、谷正之外務大臣らが参加した。
谷正之外務大臣「ようこそ、はるばる日本へ。と言いたい所ですが、敵国の貴方がどのようなご用件でしょうか?」
アーノルド特使「東條英樹首相、私たちはチャーチル首相の考えを伝えに参りました。(会話は翻訳した形で日本語で記載します。)」
谷外務大臣「詳しい内容をお話下さい。ここの会話は漏れる事はありませんから。」
アーノルド特使「我々のチャーチル首相は、イギリス本土を絶対に死守するつもりなのです。ドイツはついにソビエトのウクライナ地方を占領しました。その武力を力にフランス、スペインを戦争に引き釣り混みました。
そして、公にはされていませんが、ドイツ、イタリア、フランス、スペインの4ヶ国で新たに4カ国軍事同盟を結びました。しかし、もとからドイツ、イタリアと同盟を結んでいた日本は、この新たな同盟に入っていないのです。ドイツ、イタリアから見たら、日本は価値が無いと思われているのです。
日本が、唯一ヨーロッパに無い国というだけで。
はきっりと言ってしまえば、そんな中で日本が一番枢軸国の中で裏切ってもらい安いというわけなのです。
それ以外に個人的な考えとして、チャーチル首相は、とても親日な方なのです。アジアの中で唯一ヨーロッパと肩を並べるまで成長をしてきた日本を認めているのです。日本がアメリカとの戦争を初めて以来、ワシントン会議にて同盟を破棄した事を失策だったと思っています。
そして、今の日本には期待しています。この数年間で変わった日本の新しい内部には期待しているのです。
1940年も終わる頃は、日本の軍閥の行き過ぎによって、アメリカと日本が戦争になってしまったら私は、日本に対して宣戦布告しなければならないと嘆いていたぐらいです。
今年の一月の宣戦布告もアメリカからの強い要請で仕方なく参戦しました。アメリカ太平洋艦隊が壊滅してしまったので助けを求めると言えないアメリカは、我々に武器の援助の要請を断るぞと脅して来たぐらいですから。」
そこまで一気に話したアーノルド特使は一息ついた。
谷外務大臣「もし、我々日本がドイツらを裏切ったとして、イギリスに何の得があるのでしょうか?
我々日本にヨーロッパまで行って戦争を継続する能力は皆無です。」
アーノルド特使「今の我々にとって、価値があるのはインドより西側です。
日本によって落ち着かされた中国には求めるものが少ないのです。
オーストラリアはというと、半分以上がお荷物です。
彼らのおかげ我々はアフリカで勝つことが出来ましたが、今の彼らに自国を日本から守りきる力はありません。
そして、オーストラリアには頼れるものがいないのです。
日本によってもうじき陥落させられるであろうフィリピンが無くなれば、太平洋からはアメリカの勢力は無くなります。
そうすれば、オーストラリアは孤立します。
我々、イギリス連邦としてオーストラリアを助けない分けにはいかないのです。」
谷外務大臣
「それは分かりました。
ですが、我々日本は、自らオーストラリアに対して攻撃したわけではありません。
宣戦布告をしてきたのはオーストラリアです。」
アーノルド特使
「そう言われてしまえばどうしようもありませんが………
アジアが安定化すれば、アジアの兵力を本国に回す事ができます。」
谷外務大臣
「それだけでなく、インド独立を目指していた亡命政権である自由インド仮政府首班のチャンドラ・ボース氏を支援している我々とイギリスは完全に対立します。
イギリスにとってインド独立は認められないはずです。
なのに、我々に戦争を終わらせようと言ってくるのですか?」
アーノルド特使
「インド独立は絶対に認められません。
戦争を終わらせようと言っているのは確かです。
ですが、日本にある程度有利な形でと考えております。」
谷外務大臣
「そのような曖昧な回答では、認める分けにはいきません。
最低でも既に我々日本が占領している地域は、日本のものに。
講和条約を結ぶにしても、損害が多いのはイギリスですよ。
よろしいのですか?」
アーノルド特使
「分かっております。
イギリスは、ビルマのの利権を手放すつもりでいます。
それでは、ダメでしょうか?」
谷外務大臣
「ビルマの利権だけでは、足りませんな。
我が軍の損害は、シンガポールでは多大なものでした。
ビルマだけの利権では少なくとも講和条約は結べませんな。
いったい誰に仲裁をしてもらうつもりなのですか?
世界が二極化しているなかどうするおつもりですか?」
アーノルド特使
「私が特使として、全権を任されています。問題はありません。」
谷外務大臣
「ならば、もう一度言いましょう。ビルマの利権だけでは認められません。」
アーノルド特使
「分かりました。再考してみましょう。
最後にあと一つだけ、よろしいですか。
ナチスドイツが行うユダヤ人迫害政策についてどうお考えですか?
近年の日本は人種差別を許していません。
それは、シンガポールで証明されたと聞きます。
それでもドイツ同盟を組み続けるのですか?」
谷外務大臣
「今日は、お引き取りください。
もう、今日の会談は終わりです。」
そう言って谷外務大臣は、無理やり話を終わらせると、部屋を後にしたのだった。
後に残されたアーノルド特使らは、何が谷外務大臣の逆鱗に触れたのか分からなかったが、交渉を積極的に行いし過ぎたと後悔したのだった。
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