偶然
ホームルームが終わり、創太は下駄箱で靴を履き替えていた。どのクラスもほぼ同時にホームルームが終わったのか、一年生の下駄箱周辺は人が溢れている。
今日顔を合わせたばかりだからだろうか、高校生特有の騒々しさは感じなかった。
そんな中で、唯一空気が緩んでいふ場所があった。若干パーマーの掛かった男子生徒と、栗色の髪を肩まで伸ばした女子生徒が痴話喧嘩(?)をしているようだ。
創太はそんな2人を脇見しながらも特に気に留めず、帰宅の路に着いた。
※ ※ ※ ※
青葉荘と総文高校は徒歩十分掛からない程度の距離にある。しかし、ここ落合という地域は坂が多く、青葉荘と総文高校も七曲坂の坂上と坂下の関係にある。つまり、登下校時には必ずこの坂を往復しなければならない訳で…
ふぅ、つかれるな…
まさに創太は七曲坂に挑んでいるところだった。
重くなってきた足をひたすら前に前に進める。六つ目のカーブを曲がったところで女子学生が見えた。総文高校の制服をきている。同じ学校と分かったからだろうか。何とはなしにその総文生が気になった創太は重たい足に力を込め、足を速めた。
そして、追い越しざまにチラリと振り返った。いい香りがふわりと鼻腔をくすぐる。
創太の歩みが止まった。
「星宮さん?」
その女子生徒は創太と同じクラスの星宮雪菜だった。
「えっと…?」
「同じクラスの藤宮です」
「あっ藤宮君だ。ごめんね」
「いいよいいよ。気にしないで」
「藤宮君はこの辺に住んでるの?」
「うん、そうだよ。星宮さんは?」
「私もだよ!もしかして家、近かったりしてね?」
指を唇に当てて微笑みながら雪菜が言う。
そのあと、二人はクラスのことなど他愛もない話をしているうちに青葉荘の前に着いた。
創太は別れの挨拶を口にする。
「「じゃあ僕(私)の家ここだから」」
___2人の声が重なった




