過去
「ふぅ」
何とか入学式に間に合った創太は、ホームルームでの自己紹介を終えて一息ついた。窓から差し込む春の日差しに心を預け、ボーッとする。
※ ※ ※ ※
創太は中学校の視聴覚室にいた。数人の男女に囲まれている。
怖くなって逃げ出そうとした創太の腕を、その中の一人が掴んだ。
「おい、逃げるなよ。話は終わってねぇぞ」
その言葉を皮切りに、周囲も次々に口を開いた。
「だいたい、あんた注文が多過ぎなのよ」
「わ、私だって頑張ってるのに…」
涙ぐんでる者までいた。
「確かに、お前の絵はスゴイけどよぉ」
創太が耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言が続いた。
場面が変わった。
目の前にパソコンのディスプレイが広がる。どうやら、アニメやライトノベルが好きなオタクが集まるスレのようだ。
スレのタイトルには
『最近、コハク先生のイラストが……な件』
創太が操作するでもなく、画面が下にスクロールされていく。
自然と書き込みが見えてきた。
「最近のコハクのイラスト見ないよね」
「もうオワコンじゃねww」
「それなw俺も昔は好きだったけど飽きてきた」
「もって一年だったかww」
「まぁ所詮は中学生だよな」
コハクというイラストレーターの中傷が続いていた。
※ ※ ※ ※
突然、嫌な記憶の渦に、澄んだ柔らかい声が降ってきた。
創太はボーッとしてるうちに寝てしまったようだ。
創太は今見た悪夢を忘れようとするかの様に首を降った。それと同時に、その声の主をさがす。
声の主は意外にもすぐに見つかった。隣の席のロングヘアの女子だ。寝ているうちに自己紹介が女子の番になったらしい。
「星宮雪菜です。趣味は読書で、自分で物語を書くのも好きです。よろしくお願いします。」
創太は“ホシミヤ ユキナ”という名前に引っかかりを覚えたが、特に深く考えず、また船を漕ぎ始めた。




