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第一話 ②

次回から第二話になります。

書き忘れておりましたがR15は保険です。

よろしくお願いします。

 「ごちそうさま」

 僕は手を合わせて食事を終えた。あの後、顔を洗い、歯を磨いて、どうするべきか考えた結果。僕は大人しく富士山の如きチキンライスを食べる事にした。無論、全部食べ切れる訳が無い。おおよそ一人前を別皿に分けて電子レンジで温め、美味しく頂いた。

 けれど、考える事が一つある。昼飯がチキンライスだけというのは、栄養面で見てもカップ麺と同じ様な物じゃないか?そりゃ全く同じとは言わないが、チキンライスにも炭水化物、塩分、脂質等、カップ麺と同程度の量は含まれているのでは?どっちにしたってバランスが悪いのは明らか。せめて横に野菜スープでも付ければバランスは取れそうだ。作って貰った僕が言える立場ではないけれど。

 さて、眠気も消えた。腹も満たされている。コンディションはまぁまぁだ。

 ・・・何をしよう?何も思いつかない。

 今はボーっとテレビを眺めている。ドラマの再放送らしいが内容が分からず、頭に入らない。

 いけない。折角の休みだというのに、このままでは無駄になってしまうではないか。思えば先週もこんな感じで1日を浪費していたのだ。流石にあの時ばかりは後悔した。


 そもそもの話。特に趣味を持たない僕が休みを有意義に、充実して過ごせる可能性はとても低い。積極的に外出するタイプではないし、かと言って部屋でやりたい事も見つからない。切るカードが無いのだ。これぞまさに『お手上げ』の状態。

 世間の人、それこそ我がルームメイトとかはこういう時、「友達誘ってどっか行けば?」などと簡単に口にする。断言しよう。僕には無理だ。理由は3つ。

 1、誘いを断られた時に漂うどうしようもない空気が嫌

 2、僕が友人だと思っている人間は片手で数えられる程しか居ない

 3、そのほぼ全員が奇人変人の類で誘い出す事が非情に面倒

 以上だ。唯一まともな友人は僕にチキンライスの山を与えて外出中。今日からアイツがまともと言えるか怪しくなってきた気もするけど。それは置いといて。

 

「・・・・・・本でも読もう」

 外に出る気分でもないし、屋内で動き回る気にもならない。だったら一番無難で手近な物が良い。晩飯までの時間が潰れてさえくれれば何でも良いんだ。

 ルームメイトと共用の小さな本棚。僕のスペースは小説、漫画が半々ぐらい。読書は嫌いじゃない。読んでいる間は暇が潰れるし、集中できるし、周囲とのコミュニケーションを考える必要も無いというおまけ付きだ。好きと言っても良いかもしれない。

 駄菓子菓子。おまけ付きだけに。・・・・・・余計な事を考えるのは止めよう。僕以外に誰も居ないけれど、とても恥ずかしい。何も面白くねーよ。全然うまくねーよ。死んでしまえ、僕。


 だが、しかし。ここにある本はもう飽きる程読んでいる。登場人物も、ストーリーも、印象的なシーンも、ほとんど覚えてしまって感動が薄いのだ。まぁ、それでもまた読んでしまうのだけれど。

 なんとなく選んだハードカバーの小説を手に取ってテーブルに戻る。あ、これは最近読み返していない奴だった。話もおぼろげにしか覚えてない。良かった、問題なく時間が潰せそうだ。

 ページをめくり始めて十数分。ベッドの方から僕の携帯の着信音が鳴った。メールなら昼寝していたとでも誤魔化せば良いや。そう考えていたが、音が止まない。電話らしい。本を閉じてベッドに向かう。

 枕の横に震えながら着信音を出し続けているスマートフォンが一つ。画面を確認すると、相手の名前が表示されている。

 『和泉 春彦』

 ルームメイトだった。通話アイコンをスライドさせて、耳に当てる。


「もしもし」

『出るのせぇよ。アレか?まだ寝てたとかか?』

「まさか。僕に限ってそんな事ある訳無いだろ。しっかり計画を立てて、今は小休止って感じ」

『要するに先週と同じって事だな』

「・・・そういう言い方も出来るね」

『暇だってんなら丁度いいや。頼みがあんだけど』

 面倒事の予感がする。でも逃げようがない。《先週と同じ様に暇だ》と2秒前に認めてしまった。

「それの中身は?」

 もう諦めよう。回避不可能なら潔く頼まれてしまった方が楽だ。

『お?意外だな。すぐ断ると思ってたわ』

 なんて失礼な奴だ。

『まぁ、やってくれるんなら問題ねぇ。卵、買ってきて欲しいんだ』

 ただのお遣いじゃないか・・・「自分で行けよ」と言いたいが、わざわざ頼んでくるあたり、事情があるんだろう。仕方ないな。

「分かった、買って来るよ。他には?」

『あぁ、他にも色々あるんだ。メールで送るから、それ見てくれ』

「了解。それじゃあ」

『おう』

 通話終了。さて、出かける用意をしなくては。

 とは言ってもそんなに時間はかからない。ファッションに拘りなんか無いのでクローゼットから適当に服を引っ張り出す。カーディガン、シャツ、チノパン。何が良いのか分からないと春彦に相談した時に見繕って貰った一揃えその1。それに着替え、財布、スマホを持ち、準備完了。

 スマホが震えてメールが届いた事を知らせる。これは道すがら見れば良いだろう。

 テレビを消し、窓の施錠を確認する。問題なし。


「いってきます」


 誰も居ない部屋にそう呟いて、僕は部屋を後にした。

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