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年下に主導権を握られることだってある。

以前、フォレストノベルに掲載した作品です。

一昨日の夜、少女身代金誘拐事件の犯人が逮捕されたというニュースを見たわけだが。

「大人しくしてろよ?」

「……」

 まさか二十歳の自分が誘拐される羽目になるとは思いもしなかった。


――『人生いつ何が起こるか分からない』とはよく言ったものだ。高橋との待ち合わせ場所に行くために、人通りの少ない近道を歩いていたはずなのに、何故か今は古びた工場にいる。真昼間だからと安心しきっていたのが悪かったのかもしれない。突然現れた車にポイッと乗せられ、工場の一角で椅子にぐるぐる巻き。おかげさまで、高橋とのらぶらぶデートはパー。

自分の浅はかさに反省しつつ、薄暗い中、自分を取り囲む3人の男を見上げ、美祈は不機嫌そうに眉を顰めた。しかし、男たちはそれを恐怖心から来たものだと勘違いし、ケタケタと笑う。

「安心しろって。金が入るまでの辛抱だからさ」

「心配しなくても何もしねーからっ」

「大人しくしてろよ?」

 それぞれの口から出てくる言葉に美祈は沈黙で返す。大きな勘違いをしている男たちに眩暈がした。

(こんな馬鹿共に誘拐されたなんて人生の汚点だ……)

 恐怖なんてものはない。ただ、嫌悪感を抱くだけ。誘拐なら、まだ小さかった頃にも経験した。どうやら、社長令嬢というのは、幾つになっても嫌なものに巻き込まれるらしい。

(それにしても……)

 男たちは美祈が大人しいことに安心したのか、奥の部屋へと消えていく。美祈はその背中をぽかんと見つめた。

「体だけ縛って、口は自由で見張りはいない……おまけに携帯も没収しないって……やっぱり馬鹿なの?」

 美祈は悪態を吐きながら、背中に回された手を器用に動かし、電源を落として袖に隠しておいた携帯を弄った。感覚だけで、指を動かす。そして、再び電源を落とした。


――誘拐犯が警察の手に渡ったのは、高橋との待ち合わせ時間を五時間ほど過ぎた頃だった。


「あれは今までで一番間抜けな誘拐犯だったねえ」

「何を楽しそうに……」

 過去の誘拐事件から今日のことをその一言で締めくくった美祈に高橋はがくっと美祈の膝に頭を落とした。警察からの事情聴取を終えた美祈は、高橋の部屋にいた。ふたりの座る白いソファーが夕日でオレンジ色に染まる。美祈は辛そうに顔を歪めて自分を見上げる高橋の頬に、手を伸ばした。

「心配かけてごめんね?怒ってる?」

「すごく心配しましたよ。怒ってはないですけど……。……そうだ、社長にバレたんだった……」

 美祈の手を取り、高橋はゆっくりと起き上がった。美祈からのSOSが届いてすぐ、高橋は美祈の父親に連絡した。だから、美祈と待ち合わせをしていたことも話すしかなかったのだ。美祈は高橋が心配してくれたことに頬が緩む。

「あーあ、秘密のお付き合いってスリルあったのになあ」

 腕を絡ませ、肩に寄りかかる美祈に高橋は嘆息した。

「あのですねえ……俺にも立場ってものが」

「分かってるよー私の未来の旦那様!て立場だもんねー」

「……もういいです」

「あ、拗ねた」

 美祈はふいっと顔を背けた高橋の頬をぷにぷにと触る。たまに、子供っぽい顔をする高橋が愛しくてたまらない。

「た・か・は・し・さん!」

「ちょ!」

 高橋の首に腕を巻きつけ、美祈はストンと高橋の膝に跨るように乗った。耳に美祈の息がかかるのを感じた高橋は顔が赤くなる。それを見て、美祈は耳に悪戯を仕掛けた。

「――っ!」

 突然、耳に触れた生温かいものに、高橋は思考が停止する。首を捕らわれたまま高橋はぱくぱくと口を必死に動かす。美祈は、んー?と知らぬ振りをする。そして。

「心配かけちゃったお詫びに今日はずっと一緒にいてあげるね?」

「!」


――その晩。


『こんなのどこで覚えたんですかあ!?』と、とある部屋から男の叫び声が聞こえたとかそうでないとか。




fin?



読んでいただきありがとうございました。

高橋いじめるのが大好きな作者と美祈です!

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