第二章 「理想」
第二章 「理想」──夢で終わるなら見るな、設計図を描け!
主な障害:ビジョンの不在・現実逃避
人は「夢を持て」と言われて育つ。しかし、夢を持っただけで何かが動くことはない。むしろ、夢を持っているという“気分”に浸って、現実から逃げているケースの方が多い。結果として、行動も戦略もないまま時間だけが過ぎていく。これが典型的な「夢追い型現実逃避」の落とし穴だ。
夢には力がある。しかし、その力を現実に転化できる人はわずかだ。その違いは、「夢」止まりで終わるか、「理想」として構造化できるかの差である。
夢は抽象的で曖昧だ。一方で、理想とは設計図のある状態を指す。夢を“見る”だけでは意味がない。それを“組み立て可能な状態”にまで落とし込んでこそ、現実になる。
夢は抽象、理想は構造
たとえば「自分の会社を持ちたい」という夢があったとしよう。それは悪くない。しかし、それだけでは単なる“憧れ”にすぎない。夢はイメージ。言い換えれば、感情と願望の塊だ。
一方、「理想」は構造を持つ。そこには段階、工程、期限、リソース、役割、必要なスキルなど、要素が揃っている。つまり、夢を“理想”に変えるとは、抽象から具体へ、漠然から構造へ、感情から計画へとシフトすることだ。
この構造化がないまま夢を語り続ける人は、いつまでも現実に着地できない。いくら「こうなりたい」と強く願っても、それは設計図のない家づくりと同じ。立つわけがない。
だからこそ、最初にやるべきは、「夢を現実化するための構造」を描くことだ。
成功とは「実現可能な理想」を逆算して達成するプロセス
成功とは、天から降ってくるものではない。偶然つかむラッキーでもない。成功とは、ある明確なゴールを「現実的な理想」に変換し、それを“逆算”して地道に組み立てていくプロセスである。
たとえば、あなたが「年収2000万円を稼ぐ」という目標を持っていたとする。それは一見“夢”のようだが、実は理想に構造を与えれば現実になる。
まず逆算する。「年収2000万円=月収約166万円」。それをどう得るのか。1ヶ月に166万円を得るには、どんな商品やサービスを売る必要があるのか。単価は?販売数は?仕入れは?時間コストは?再現性は?──これらを一つ一つ割り出していく。
ここで見えてくるのが、「理想のプロトタイプ」だ。つまり、自分の理想に対して“構造と工程を与える”ことで、初めて「このルートなら可能性がある」「このやり方だと無理だ」と現実判断ができるようになる。
これが、成功における“逆算思考”であり、計画の骨格である。
ゴールを“見る”のでなく、“分解して持て”
多くの人は、成功のイメージばかり“眺めて”満足する。SNSで誰かの成功を見て、「いいなあ」「自分もいつか」「こうなれたら」と願う。それ自体は自然な感情だが、それを“見る”だけでは自分の現実は1ミリも変わらない。
成功したいなら、「見る」ではなく「分解して持つ」必要がある。
“持つ”とは、自分のものとして所有することだ。そのためには、ゴールを要素に分解する。たとえば、ある憧れの人が「講演家」として成功しているとする。その姿を見て「自分もああなりたい」と思うなら、まず彼がやっていることを全て分解する必要がある。
・どれくらいの頻度で話しているか
・話のテーマは何か
・準備に何時間かけているか
・どのような発信で集客しているか
・過去にどんな実績があるのか
・どんな勉強や経験を積んできたか
それらを要素ごとに分けて、自分の現実と照らし合わせて、足りないものを補う。それが「分解して持つ」ということだ。要素ごとに持てば、順番に取りに行ける。だから前に進める。
逆に言えば、分解できない目標は、いつまで経っても“絵空事”でしかない。見るだけで満足しているうちは、それは単なる消費。自分の血肉にはならない。
理想を持つとは、「構造化された未来」を所有すること
夢に熱狂することは簡単だ。セミナーに行けば、SNSを見れば、「夢を持とう」「高く掲げよう」といったポジティブな言葉があふれている。しかし、冷静に考えてほしい。夢を持っただけでうまくいった人を、あなたは本当に見たことがあるだろうか?
理想を持つというのは、抽象的な高揚感に浸ることではない。それは、「構造化された未来」を手に入れることだ。どうすればそこに到達できるのかを自分の頭で考え、自分の言葉で描き、自分の足で向かうという“戦略的なビジョン”を育てることだ。
理想が構造を持った瞬間、それは夢ではなく“工程”になる。その工程を持てた人だけが、目標に近づく。
まとめ:「夢を見て終わる人」と「理想を描いて動く人」の差
この章のテーマは「理想」。ここで伝えたかったのは、“夢”と“理想”は似て非なるものだということだ。夢に酔うだけでは人生は動かない。必要なのは、理想を「構造」に変える力だ。
・夢は抽象、理想は構造
・成功とは理想を逆算して達成するプロセス
・ゴールを「見る」のではなく、「分解して持つ」ことで自分のものにする
・構造を持たない理想は、現実に着地しない
現実逃避ではなく、現実攻略。そのために必要なのは「設計図を描く力」だ。自分なりの理想を、自分の言葉で、手書きのスケッチとして描いていけ。それが、あなたの地図になる。