『キミの声で、僕は生きる』第58巻(最終巻)
皆さん、ついにこの時が来てしまいました。
ここまでの長い旅路を一緒に頑張ってくれた読者の皆様、本当にありがとうございます。
最終巻となる第58巻では、物語は5年後の世界へ。 健太と美咲が結婚し、家庭を目指し、子どもにも恵まれ、恐怖美咲がもう一度夢の舞台に立つ姿を描いています。
笑いあり、涙あり、そしての照れと感謝をちょっと込めて。
あれから5年が経った。季節は春。柔らかい陽射しの中で、桜の花がそっと揺れている。
健太は、少し痩せて、表情にも余裕が出てきた。相変わらずメガネはしているが、昔のような卑屈さはもうない。
「おーい、パパ!」
庭で遊んでいた3人の子どもたちが、満面の笑みで駆け寄ってくる。長男の奏太、次男の響、そして長女の美羽。
「こらこら、そんなに走ったら危ないぞ」
健太は笑って子どもたちを抱きしめる。その姿は、かつての孤独なコンビニバイトの男とはまるで別人だった。
リビングの窓越しから、エプロン姿の美咲が見守っている。彼女の髪は肩まで伸び、母親としての優しさと、どこか凛とした芯の強さを感じさせる。
「健太くん、そろそろお昼よ。子どもたち、手洗いなさい」
「はーい!」
3人が玄関に駆けていく。健太もそれを追うように、笑顔で玄関に向かった。
食卓には、美咲の手料理が並ぶ。
「今日のハンバーグ、形がなんかおかしいよ〜」
「それは美羽が手伝ってくれたのよ、文句言わないの」
笑い声が絶えない食卓。
ふと、美咲が真剣な表情になる。
「ねえ、健太くん……」
「うん?」
「私ね、もう一度、声優をやってみようかなって思ってるの」
健太は一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。
「いいじゃん、美咲ならきっとまた輝けるよ」
「本当にいいの?」
「俺が惚れたのは、夢を真っ直ぐに追う美咲なんだ。やりたいことをやってほしい」
美咲は少し目を潤ませた。
「ありがとう……やっぱり健太くんに言ってよかった」
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数ヶ月後、美咲は小規模なオーディションに参加し、実力を買われてある新作アニメのサブヒロイン役に決定した。
5年のブランクがあったとは思えないほど、美咲の演技は堂々としていた。SNSでも彼女の復帰が話題となり、かつてのファンたちも歓喜の声を上げる。
そして──収録が終わった帰り道。
健太と3人の子どもたちが、スタジオの前で花束を持って待っていた。
「ママー! おかえりー!」
「お疲れさま、ママ」
「美咲、おつかれ」
美咲は思わず泣きそうになりながら、笑顔で花束を受け取った。
「ありがとう……こんな幸せがあるなんて、信じられないよ」
健太は美咲の手を取る。
「美咲の声があったから、俺は生きてこれた。これからも、ずっと聞かせてほしい。君の声を──俺たちの未来の音を」
──完──
——ここまで読んでくださったあなたへ。
この作品を書き始めた当初、「こんなキモデブおじさんが主人公で、本当にラブコメになるのか?」と何度も不安に襲われました。でも、健太は諦めませんでした。それでも、ダメで、孤独で、情けない人間でも、「誰かのために動きたい」と本気で願った時、人は変わらなかったと、彼が証明してくれました。
最終巻で描いたのは、「幸せのその先」です。恋が終わっても、人生は続きます。家庭を築く中での葛藤や喜び、そしてまた、夢と決意。それは、誰にでも訪れる日常の奇跡です。
この物語が、あなたの心に少しでも何かを残したなら、私はただで満たされます。
ありがとう、そしてまた、どこかのページでお会いしましょう。
——鏡野ミツル




