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推しの声が聞こえる  作者: 鏡野ミツル
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第46巻:『記憶のフィルム』

「事実」で、どこ「想い」です。巻は、記録という行程、そしてその限界について考え直した物語を描きました。記憶とは、どこまでが「事実」で、どこからが「想い」なのでよろしくお願いします。

この巻では、記録という行為の価値、そしてその限界について、思い切って考え直す物語を描きました。


誰かと過ごした日々は、写真や映像で保存されていても、現時点では語りません。


記憶のフィル記録」に抗う物語それは、今のAI社会に生きる私、ささやかな問いかけでもあります。本作『記憶のフィルム』は、「完璧な記録」に抗う物語です。そしてそれ

は、今のAI社会に生きる私たちへの、ささやかな問いかけでもあります。

●第1章:思い出を撮るAI


健太は次の映画の題材に、“記憶”を選ぶ。人間の曖昧で不確かな記憶と、AIが記録する客観的な映像。その対比にこそ、現代が抱える「真実とは何か?」という問いがあると感じたからだ。


AIメモリーカメラ「Mnemosニーモス」は、日々の出来事を全自動で撮影・保存し、ユーザーの感情や脳波を解析して“重要な記憶”を自動分類する。それは、忘れることすら許さない監視装置のようだった。


●第2章:記録された「真実」


物語の主人公は、Mnemosを愛用していた青年・蒼汰。彼は恋人・美羽を事故で失ったが、Mnemosには彼女との日々の記録がすべて残っていた。


悲しみの中、彼は映像を何度も再生し、「なぜ彼女はあの日、自転車ではなく歩いていたのか?」という違和感に気づく。


Mnemosの記録は完璧なはず。しかし再生される映像の彼女は、どこか蒼汰の記憶と“違って”見えるのだった。


●第3章:記憶の捏造


調査を進めるうち、蒼汰はMnemosの開発企業が行っていた“感情補正アルゴリズム”の存在に気づく。記録された映像に、使用者の好みや記憶の傾向を加味して“見たい記憶”を編集する機能があったのだ。


「正確な映像は、必ずしも人を幸せにしない」


そう語る技術者。だが蒼汰は叫ぶ。


「それはもう“記憶”じゃない。フィクションだ!」


●第4章:過去と向き合うために


健太はこの題材に、ある「映像」の力を込めようとした。人は時に記憶を美化し、時に歪める。だが“記録”には救われる真実もある。


映画の中では、蒼汰がすべての記録を消去するラストが描かれる。しかし、彼の脳裏には美羽の“声なき映像”が残っていた。


あの日の空気、視線、沈黙――それは映像を通して蘇った、もう一つの真実だった。


●第5章:フィルムのゆらぎ


健太は映像演出に、「古い8mmフィルム」の手法を用いた。揺れる画面、ざらついた粒子、音の遅延。Mnemosの鮮明さとは正反対の“曖昧さ”を意識した。


観客たちはそれを“心の記憶の揺らぎ”として受け取り、涙した。


「思い出とは、保存するものではなく、育つものなのかもしれない」


と語る評論家もいた。


●第6章:記録と記憶のあいだ


映画『記憶のフィルム』は、上映後に一つの問いを観客に投げかけた。


「あなたの“本当の記憶”は、どこにありますか?」


それはカメラの中ではなく、心のどこかで震えている曖昧な感情。それを探し続けることこそが、人間なのかもしれない。


第46巻、完

記録するAI「Mnemosニーモス」が見つめていたのは、冷たい現実ではなく、揺らぎを孕んだ人間の心でした。


登場人物・蒼汰が記憶と向き合い、自らの選択で記録を手放すシーンは、AI技術の進化が進む中で「忘れる自由」をも囚われつつある今、特に大きな意味を持つと考えています。


過去は記録ではなく、今を生きて宿っている――

このテーマを、あなた自身の中でも少しでも感じていただければ幸いです

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