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推しの声が聞こえる  作者: 鏡野ミツル
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第41巻:『記憶の映画』

皆さん、こんにちは。第41巻『記憶の映画』を手に取っていただき、ありがとうございます。


この巻では、特別な依頼を受けて、健太が記憶というテーマにある深く向き合うことになります。 依頼者は、若年性認知症を患う元映画監督、佐藤久美子。 彼女の記憶は日々失われていく中で、彼女が残した映画の一部をどう映像化するかという挑戦が描かれています。


私自身もこのテーマに関しては非常に考えさせられました。記憶とは一体何か、そして、それをどのように記録するのか。映画という手段、私たちがどのように「忘れられないもの」を残していけるのかを掘り下げました。

ぜひ、幼い頃の物語、記憶の意味や、時の流れが人々に与える影響について深く感じていただければと思います。


では、どうぞお楽しみください。

●第1章:消えゆく記憶


健太が訪れたのは、東京郊外の静かな町にある小さな老人ホーム。

そこには、若年性認知症を患う女性、佐藤久美子がいた。彼女はかつて映画監督だったが、現在では毎日のように記憶を失い続けている。


久美子の娘である美沙から依頼されたのは、「母親の記憶を映画として残してほしい」というものだった。


「母が忘れかけている、あの頃のことを、映画にできませんか?」


健太はその提案に驚いた。記憶を扱う映画は過去に多くあったが、実際に忘れゆく記憶を映像として残すのは、非常に難しい挑戦だった。


●第2章:記憶の断片


健太は久美子に会い、彼女の話を聞き始める。久美子は少しずつ記憶が失われていく中で、昔の映画のエピソードや、監督としての誇りを話してくれるが、どこかぼやけている。


「映画の中では、どんな困難にも意味があった。でも、今はその意味すらもわからなくなってしまって…」


久美子は泣きながら、懐かしい映画のシーンを語り始める。そのシーンは、彼女自身が監督として撮ったものだったが、今となっては記憶の中でモヤがかかっていた。


健太はその話をメモし、映像として再現する方法を考え始める。


●第3章:現実と記憶の狭間で


映画の撮影が進むにつれ、健太は次第に不安を感じるようになる。

久美子の記憶は日々揺れ動き、時には別人のように振る舞うこともあった。


ある日、久美子が映画の現場で泣き出す場面があった。


「こんなもの、私の記憶じゃない…」


それは、過去の自分を映し出すことに対する恐れと、消えていくことへの恐怖の表れだった。


健太はその瞬間、彼女にとっての「映画」への執着と、「記憶の喪失」がどう交わるのかを真剣に考え始める。


●第4章:映像の中の“真実”


映画の制作が進む中、健太は次第に感じるようになる。

久美子の記憶を追い求めることは、彼女を理解するための手段ではなく、むしろ彼女が失ってしまった「真実」を映し出すことなのではないか、と。


それは、完璧に記憶された過去を再現することではなく、今、目の前にある「消えていくもの」をどう映像に残すかということだった。


健太は、映画の中で久美子自身の「記憶の欠片」を意図的に残し、観客にその“断片”を投げかけることで、見る人が自分自身の記憶を重ねるような作品に仕上げようとしていた。


●第5章:映画が語るもの


映画の完成後、健太は久美子を再び映画館に招待する。久美子はその映画を見ながら、少しずつ記憶が蘇る瞬間を感じていた。


「ああ、これが私だったんだ…」


映画のスクリーンに映し出されたのは、久美子が若き日の自分を見つめる場面だった。彼女はもう思い出せない、過去の記憶の中で迷子になっていた。しかし、映画という形で残されたその一瞬は、彼女にとってかけがえのない「真実」になった。


「私は、忘れたくなかったんですね。すべてを。」


映画は、単なる記録ではなく、今も生きている証だった。それを感じた瞬間、健太は心の中で「映画の力」を再確認していた。


●第6章:記憶の先に


映画が世に出ると、評価は予想以上に高く、特に記憶に関する深い問いを投げかける内容が多くの人々の心に響いた。


しかし、健太にとってその映画の最大の成功は、久美子がもう一度、過去を見つめ、彼女自身がどこに立っているのかを再確認できたことだった。


「映画は、ただの映像じゃない。人の心に触れ、過去と現在を繋げるものだ」


健太は静かに言った。その言葉は、次第に心の中に広がりを見せ、彼の新たな作品への道を照らし始めていた。


第41巻、完。

『記憶の映画』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。 今回はとても難しいテーマに挑戦しましたが、健太の成長と彼の周囲の人々との絆を描きながら、物語が進んでゆく過程に多くの感動を覚えました。


記憶をテーマにした作品は、私自身の心にも深い印象を残しました。人は生きる中で多くのものを忘れ、また、同時に多くのものを思い出していきます。ただし、記憶がなくても、私たちは「今」を生き続けているという事実を、健太の姿から無意識に感じることができました。


久美子の記憶を再現する映画を作り上げる過程で、健太が諦める悩みや葛藤は、私たち自身が人生で避けられないテーマに触れています。


次巻ではまた新しいテーマが待っています。これからも健太の冒険にご期待ください。

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