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推しの声が聞こえる  作者: 鏡野ミツル
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第4巻:『迷いの先に』


人は、どれだけ努力しても、時に立ち止まりたくなる瞬間が訪れる。それは、目の前に突きつけられる壁に、どうしても乗り越えられないと思える時。美咲も健太も、そんな瞬間を迎えた。


健太は、自分の不安と向き合い、美咲のために支え続けることを誓う。しかし、その過程で、美咲の輝きがますます遠く感じられ、二人の間に少しずつ距離ができていくような気がしてならない。どんなに支え合っても、成功のプレッシャーやライバルの登場が二人に新たな試練をもたらす。


そして、玲奈という新たな存在が登場することで、物語は大きな転機を迎える。玲奈の告白は、美咲と健太の絆をどれだけ試すのか——。


『迷いの先に』では、登場人物たちが葛藤し、成長していく様子を描きました。果たして、二人の関係はどうなっていくのか。今巻でも、胸が熱くなるようなラブコメディと感動的な瞬間が待っています。どうぞお楽しみください。

● 第1章:新たな試練


美咲が新たなアニメの主役を勝ち取ったと発表された日の夜、健太は嬉しさのあまり興奮していた。しかし、心の奥ではひとつの不安が大きくなっていた。それは、美咲がどんどん遠くに行ってしまうような気がすることだった。


「彼女は本当にすごいんだな」と、健太は彼女の活躍を祝う一方で、自分の立場を再確認していた。彼女の成功を支える立場ではあるが、時々その距離の差に寂しさを覚えることがある。


一方、美咲は健太の心情に気づかぬまま、レッスンや新しい仕事に追われていた。最近は打ち合わせが増え、忙しい日々が続いている。そんな中で、二人の間に少しずつすれ違いが生まれ始めていた。


美咲は、健太の気持ちに気づいていたが、彼女自身も不安を抱えていた。これまでずっと支えてくれていた健太が、遠く感じることがあるのではないかと心配していたのだ。


ある日、二人が久しぶりに会った時、美咲は沈んだ表情をしていた。


「健太、最近私…少し気になることがあって。」


健太は彼女の顔を見ると、心配そうに答えた。


「どうしたんだ、美咲さん?」


「私、今、すごく忙しいけど…それでも、あなたとの時間が減っていることに気づいて、少し寂しいんだ。」


健太はその言葉に胸を突かれるような思いがした。彼女がこうして自分のことを気にかけてくれるのは、ありがたいことだと感じながらも、実は彼自身が抱える不安に気づいていないのだった。


「僕も、君ともっと一緒にいたい。でも、君の成功を支えるために、僕ができることをしっかりやりたいんだ。」


美咲はその言葉を聞いて、優しく微笑んだ。


「ありがとう、健太。あなたがいるからこそ、私はこんなに頑張れるんだよ。でも、少しだけでも、私に時間をくれない?」


健太は少し照れくさいが、彼女の頼みに心から応えようと思った。


「もちろん、君と過ごす時間は何より大切だよ。」


●第2章:ライバルの影


その頃、美咲の業界内では、次々と新しい新人声優が注目を浴びていた。中でも、玲奈は急成長しており、周囲からは「次のスターチャンス」として期待を寄せられていた。


玲奈は、努力家でありながらも周囲とのコミュニケーションを欠かさないため、あらゆる人から好かれる存在だ。美咲の後輩でもあり、彼女のことをとても尊敬していると公言している玲奈は、いつも明るく振舞っていたが、その裏に隠された思いは美咲との競争心だった。


玲奈が突如として美咲に話しかける。


「美咲さん、最近お忙しそうですね。私、ずっとあなたに追いつきたいって思っているんです。でも、それにはもっと頑張らないといけませんよね。」


美咲はその言葉を聞き、少し驚いた。彼女がどれだけ自分に対して尊敬の気持ちを抱いているのか、知っていたからこそ、何とも言えない複雑な気持ちが込み上げてきた。


「玲奈ちゃん、あなたの努力は本当に素晴らしい。私も負けないように頑張るから、一緒に切磋琢磨していきましょう。」


その後、美咲は健太と会って、その話をしてみた。


「健太、玲奈ちゃんが…私を追い抜こうとしているみたいで、少しだけ焦りを感じるの。」


健太はその言葉を受け止めながら、心の中で美咲の葛藤を感じていた。


「でも、美咲さんはそれに負けないくらい素晴らしいよ。玲奈も応援しつつ、君のペースで頑張っていれば、きっと大丈夫だ。」


美咲は少し安心したような顔を見せ、健太に感謝の気持ちを込めて微笑んだ。


●第3章:新しい始まり


美咲と健太は、二人で過ごす時間を増やすことに決めた。美咲が忙しい時期にあっても、健太は彼女を支え続け、二人の関係は深まっていった。美咲も、忙しさに追われる中で、自分を大切にしてくれる健太の存在に改めて感謝していた。


ある夜、美咲はふと気づいた。


「健太、私はやっぱりあなたと一緒に過ごす時間が一番大切だって思うんだ。どんなに忙しくても、あなたがそばにいてくれるだけで安心できる。」


健太はその言葉を聞いて、胸が熱くなった。


「僕も、美咲さんがそばにいてくれるから頑張れるんだ。君の声、君の笑顔、それだけで僕は幸せだよ。」


二人はしばらくの間、静かな時を共有した。外は夜の静けさに包まれており、二人の間に流れる空気はまるで何もかもがうまくいっているように感じられた。


しかし、その静かな時間が続く間に、思わぬ障害が待ち構えていた。


●第4章:予期せぬ告白


ある日、健太は美咲と一緒に歩いていたとき、突然、玲奈が現れる。


「美咲さん、健太さん、お久しぶりです。」


玲奈は笑顔で挨拶し、美咲に向かって真剣な表情を浮かべた。


「実は…私、声優としての次のステップに進むために、少しだけ相談したいことがあるんです。」


美咲は少し驚きながらも、玲奈を応援するために話を聞くことにした。


「何か悩んでいるの?」


玲奈は少しだけ躊躇いながらも、続けた。


「実は…健太さんのこと、気になってるんです。」


その言葉に、美咲は驚きとともに、胸の中で何かがざわつくのを感じた。


「え?」


玲奈はその後、真剣な表情で続けた。


「健太さん、あなたが美咲さんのことをどれだけ大切に思っているのか、知っています。でも、私は…もっと彼を支えたい。彼の力になりたいと思っているんです。」


美咲はその言葉を一瞬理解できず、ただ静かに玲奈を見つめていた。


●第5章:決断の時


玲奈の告白を受けて、美咲は心の中で何かが大きく揺れ動いていた。自分と健太の関係が、他の誰かによって揺らされることなど、考えたこともなかった。しかし、玲奈の思いに対してどう反応すべきか、美咲は迷っていた。


その夜、健太と美咲はしばらく無言で歩いていた。彼女は、玲奈の告白についてどうしても聞きたかった。


「健太、あの…玲奈ちゃん、私に何か言ってた?」


健太は少し戸惑いながらも、正直に答えた。


「はい。彼女、僕のことを気にかけているって言ってました。でも、美咲さんのことを僕はずっと応援してるし、君が僕にとって一番大切な存在だよ。」


美咲はその言葉に、心から安堵した。自分の気持ちが再確認できたような気がした。


「ありがとう、健太。私もあなたが大切だから、これからもずっと一緒に頑張りたい。」


健太はその言葉に微笑み、手を握り返した。


「うん、一緒に頑張ろう。どんなことがあっても、僕たちは支え合っていこう。」


第4巻:『迷いの先に』 終わり


ついに第4巻が完成しました。今回は、美咲と健太の関係がさらに深まり、二人の間で揺れる感情や葛藤を描きました。お互いにとって支え合う存在でありながら、少しずつ距離を感じてしまう瞬間や、ライバル登場という新たな試練に直面する場面が多く登場しました。これらは、どんなにお互いを大切に思っていても、現実の中で避けられない問題だと思います。


美咲と健太、そして新たに登場した玲奈というキャラクターを通して、愛情や友情、競争心、そして成長の過程を描くことができたと思っています。玲奈の登場は、二人の関係に大きな影響を与え、次の巻へと続く伏線ともなります。彼女の想いが、今後どう二人に影響を与えていくのか、ぜひ次巻もお楽しみに。


読者の皆様に支えられ、ここまで来ることができました。毎回、感想をいただくたびに励まされています。本当にありがとうございます。これからも健太と美咲の物語を描き続けますので、引き続き応援いただければ幸いです。


次巻では、更に多くのドラマと、二人の関係の新たな展開が待っています。どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。

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