第39巻:『音のない映画』
物語が音に溢れ、言葉が飛び交う世界において、私たちは「音のない物語」をどう受け止めるでしょうか。
が第39巻では、健太が「音のない世界」に触れる、表現とは何か、伝えるとはどういうことなのか直問いしていきます。きっかけ
となるのは、一通の手紙と、手話という「動きと言葉の融合」。
沈黙の中にこそ宿る感情を描いた作品は、健太のために、また読者の皆様にとっても、新しい視点になることを願っています。
●第1章:静けさの向こう側
ある日、健太のもとに一通のメールが届く。それは、小さな劇団で手話劇を演じるろう者の青年・風真からのものだった。
>「あなたの映画に、音がなくても届く“物語”はありますか?」
その一文が、健太の胸を打った。
健太はすぐに風真に会いに行く。東京の小劇場で出会った彼は、手話で自らの想いを熱く語った。
「音がない世界だからこそ、感情は動きでしか伝えられない。でも、それは“表現”の原点だと思ってる」
●第2章:言葉のない脚本
健太は、風真とともに無音の短編映画を作ることを決意する。
脚本は、風真自身が手話と動きで描いた「母と僕の記憶」。セリフは一切なく、表情・手話・光と影だけで進行する物語。
スタッフの中には戸惑う者もいた。
「字幕もないのに、観客に伝わるのか?」
だが健太は言う。
「伝えようとする意思がある限り、人は“見よう”とする。音がなくても、心に響く何かがあるはずだ」
●第3章:静寂の中で響く
撮影は、風真の幼少期の記憶を再現する形で進んだ。
幼い風真が、母親の表情だけで“愛”を感じた日々。音ではなく、手のぬくもりとまなざしが、すべてを語っていた。
健太は、これまで経験したどんな撮影よりも“集中”を求められることに気づく。些細なまばたき一つにも、意味が込められているからだ。
●第4章:完成と静かな拍手
作品『Still Voice(静かな声)』は、音楽もナレーションもない、完全な“無音映画”として完成した。
初めての上映会。館内に流れるのは、映像と呼吸、そして…沈黙。
だが上映が終わると、ひとりのろう者の女性が涙を流しながら拍手を始めた。続いて、観客たちがそれぞれの想いで、ゆっくりと手を打つ。
風真が、手話で健太に語りかける。
「これは、僕らの“言葉”でもある。ありがとう」
●第5章:音を超えて
『Still Voice』はSNSで話題となり、国内外の映画祭から招待を受ける。
「音のない映画が、こんなにも語るとは思わなかった」
評論家の言葉よりも、健太の心に残ったのは、風真からのメッセージだった。
>「次は、僕があなたに“伝える”映画をつくります。表現は、誰のものでもない。僕の中にもあると、気づかせてくれたから」
健太はその言葉に、静かにうなずいた。
第39巻、完
『Still Voice』――その静けさの中に込められた「言葉」が、確かに誰かの心に届いた。
健太を悼み、この作品は技術でも演出でも、「想いを預ける場」でした。
ろう者の青年・風真との出会いは、彼の人生に深く刻まれ、表現者としての新たな扉が開きました。
音のない世界にこそ、豊かな「響き」があること。そして
、映画が持つ本質は「伝えること」であるという原点を、健太は再認識します。
静かで力強い物語を、ここまで読んでくださった皆様に、心から感謝を。




