第31巻:『声の向こう側へ』
さあ、第31巻をお届けすることができました。 この巻では、健太が声優という枠を超えて新たな挑戦をする姿を描いています。
監督としての仕事は、声を届ける側ではなく、届けるために指導する立場です。自分の声だけでなく、キャストの表現を引き出す、音や映像が一体になって感情を伝える――その全てを一手に考えて難しいさと、そこから得られる喜びを、はどう思われたのでしょうか。
健太にとって、これまでの声優としての経験が早かった、そして新たな挑戦が彼にどんな影響を与えるのかを大切に。 ページをめくるごとに、その過程を皆様にお伝えできればと思います。
新たな挑戦を今度は健太の成長を、どうぞお楽しみに。
●第1章:新たなる扉
長年にわたって声優として活躍してきた健太は、ある日、旧知のプロデューサーから1本のオファーを受ける。
「健太くん、今度の作品は君に“監督”をお願いしたいんだ」
声優ではなく、監督――? それは健太にとって未知の世界だった。
「僕が、監督……?」
戸惑いながらも、彼の中にわき上がる好奇心と情熱は隠せなかった。
これまでの経験すべてを活かせるかもしれない。声を受け取る側から、届ける側の全体を見渡す立場へ――。
健太は決意した。「やります。やらせてください」
●第2章:声を導くということ
健太が監督を務めることになったのは、短編アニメ作品だった。キャラクターは3人、セリフは少なめ。しかし、物語には深い感情と哲学が込められていた。
キャスト選びから台本調整、演出指示、音響ディレクション――健太は初めての連続に戸惑いつつも、ひとつひとつに全力で取り組んだ。
彼がキャストに伝える言葉は、自らが受けてきた教えそのものだった。
「大事なのは、"どう聞かれるか"じゃなく、"どう伝えたいか"です」
かつて自分が学んだことを、今度は誰かに渡していく立場になったのだ。
●第3章:葛藤と対話
だが、順風満帆とはいかなかった。
メインキャストの一人が演技に迷い、収録が何度も止まってしまう。
「……健太さん、僕にはこのキャラの気持ちがわかりません」
その若手声優の言葉に、健太は静かに寄り添った。
「無理にわかろうとしなくていい。君の中にある”似た感情”を探してみて。それがヒントになる」
少しずつ、彼の演技は変化していった。健太は確信する。
導くということは、教えることじゃない。共に“見つける”ことなんだ、と。
●第4章:完成と試写会
完成した作品は、わずか15分のショートアニメ。しかし、そこには健太の魂が詰まっていた。
初めての試写会の日、健太は会場の片隅で観客の反応をじっと見つめていた。
笑い、涙、驚き――スクリーンの中の声が、ちゃんと人の心に届いていた。
上映後、ひとりの来場者が健太に声をかけた。
「この作品、息子と一緒に観たんです。彼、普段は無口なんですが……“あのキャラの気持ち、なんかわかる”って言ったんです」
その言葉は、何よりも健太の胸に響いた。
●第5章:声優から“表現者”へ
プロデューサーがつぶやく。
「健太くん……これは始まりだね。君はもう、声優という枠を超えてる」
健太は首を横に振った。
「いえ。僕は声優です。声で伝えることを、これからもやり続けたい。ただ、声優であることの意味が、少し広がっただけなんです」
彼の中で、何かが変わった。そして、何かが繋がった。
作品を創り、届けるという行為の尊さ。自分の声を信じ、他人の声を育む責任。そして、まだ見ぬ未来の可能性。
彼の目には、静かに、しかし確かに次のビジョンが映っていた。
第31巻、完。
第31巻を無事に完結させることができました。健太が監督という新たな役割に挑む姿を描くことで、声優という枠を越えた表現者としての成長を感じていただけたのではないかと思います。
私はこの巻を執筆する際、監督としての葛藤や、キャストとの対話の大切さについて改めて考えさせられました。健太がキャストと共に見つけていった答えは、私自身が感じていることでもあり、まさに“共に創る”という力強さを実感しました。
また、この巻では健太が“声優”としての原点に立ち返る瞬間も多く描かれています。彼が目指すのは、ただ単に声を届けることではなく、心に届く声を紡ぐこと。その姿勢は、皆さんにも何かしらの影響を与えられたら嬉しいです。
次巻ではさらに深い挑戦が待っていますので、引き続きお付き合いください。




