第17巻:『遠くて、近い空』
かつては肩を並べて歩いていたはずの道。
今はそれぞれ別の空を歩きながら、しかし想いは交差している――。
第17巻『遠くて、近い空』では、健太と美咲が「遠距離」という物理的・精神的な距離の中で、どうやって対処を見つめ直していくのかを描きました。
夢を語る中で、時に大切な人が「すぐそば」にいられなくなることは、誰にでもあるかもしれません。でも、離れ
ていても想い続けること、それ自体が「絆」の証だと、この巻心に伝えられたら嬉しいです。
●第1章:離れて見えた景色
健太はアメリカ・ロサンゼルスでの大型アニメーション映画制作に携わることとなり、日々目まぐるしいスケジュールに追われていた。
一方、美咲はヨーロッパを巡る映画祭ツアーの中で、多くの文化や人々に触れ、自らの表現を深めていく。
それぞれ別の空の下で、新たな挑戦を重ねる日々。だが、ふとした瞬間、どこかで相手のことを思い出してしまう。
> 「今、君はどんな空を見てるんだろう」
離れてもなお、想いは途切れなかった。
●第2章:言葉にならない想い
美咲はスペインでの舞台挨拶の夜、ふと携帯を開いた。
そこには、健太からの短いメッセージがあった。
> 「今夜、君の映画を見たよ。…やっぱり、君はすごい」
一言一言が心に染みた。だが、美咲は返信ボタンを押さず、画面をそっと閉じた。
> 「今はまだ…言えない。ありがとう、も、会いたい、も」
互いに想いながらも、簡単には届かない“言葉”のもどかしさ。
プロとしての道が深まるほどに、気持ちは複雑になっていく。
●第3章:変化と衝突
健太は現地のスタッフとぶつかりながらも、日本的な「情緒」をどう海外の表現に融合させるかを模索していた。
一方、美咲は、言葉の壁や文化の違いに苦しみながらも、心で伝える演技にこだわり続けていた。
ある日、互いに映像越しで再会するオンラインインタビューの機会が訪れる。
> 「この作品に“愛”はありましたか?」という司会者の問いに。
健太と美咲は一瞬、画面越しに視線が合う。
「はい。…でも、それはまだ完成していない“愛”かもしれません」
思わず、同じ言葉を重ねた二人。
それは偶然ではなく、心がまだ重なっている証だった。
●第4章:偶然の帰国
数カ月後。美咲の映画が日本で凱旋上映されることとなり、一時帰国する。
健太もまた、次回作の打ち合わせで久々に日本の地を踏んでいた。
同じ空港、同じゲート。偶然すぎる再会に言葉を失う二人。
「…帰ってたんだ」
「うん。少しだけ。あなたも?」
「少しだけ」
少しの沈黙のあと、健太がつぶやく。
「会えて、よかった」
美咲は小さく頷いた。その言葉だけで、今は十分だった。
●第5章:交差する言葉
短い滞在の間、二人は夜の公園で静かに話をした。互いのこれまで、離れて見えた世界のこと。
健太がポツリとつぶやく。
「君がいなかった時間、俺は…やっぱり何かが足りなかった」
「私も。けど、あの“足りなさ”が、きっと成長させてくれた」
「じゃあ今の俺たちは…?」
「少しずつ、また“揃って”いくところ、かな」
満開の夜桜が、二人の背を押すように風に揺れていた。
●第6章:遠くて、近い空
出発の日、美咲と健太はそれぞれ違う便で、違う空へ飛び立つ。
だが、今度はもう、互いの空が“遠い”とは思わなかった。
> 「次に会う時は、また一緒に何か作ろう。きっと“今”の私たちで」
遠くても、心はいつも近くにある。
それは、これまで重ねた季節と、再会を信じる二人だけが持つ確かな絆。
第17巻、完
健太と美咲がそれぞれの場所で成長し、また偶然という必然で
途中る姿は、書いていても胸が熱くなるものでした。
この巻は、その希望と優しさを描いてみました。
次巻では、いよいよ二人の物語が新たな「交差点」に差し掛かります。どうぞご期待ください。




