第12巻:『君と住む世界に、愛を育てる』
いつか、ただ一緒に過ごすだけで幸せと思った日が来るなんて、思っていなかった。
第12巻では、同棲という新たな生活の中で、健太と美咲が「二人で暮らす」ということに真正面から向き合い始めます
。
穏やかで、少しだけ切なくて、ただ愛おしい。
そんな「ふたりの日常」を、今巻にぎゅっと詰め込みました。
●第1章:ふたりの生活、始まる
引っ越しから一ヶ月。健太と美咲の同棲生活が本格的に始まった。
朝のコーヒーをどちらが淹れるか。
シャンプーの香りの好み。
冷蔵庫に牛乳を買い足したかどうか。
些細なことが、愛おしく、時に面倒になる。
「健太、歯磨き粉またキャップ閉めてない」
「ごめんごめん、つい忘れた」
だけど、それすらも、共有できる幸せ。
●第2章:すれ違いの音
ある日、美咲が深夜まで生放送の準備で帰宅が遅れた。
健太は、出来上がったシナリオのチェックで先に寝ていた。
テーブルには、冷えた夕食と、置き手紙だけ。
「おつかれ。ちゃんと食べて。――健太」
美咲はレンジにかけた料理を前に、ふと溜息をついた。
(…なんでだろう。嬉しいのに、少し寂しい)
●第3章:初めての本音
週末。ちょっとしたことから言い合いになった。
「なんで私ばっかり家のこと気にしてるの?」
「俺だって仕事でいっぱいいっぱいなんだよ」
互いに、言葉が強くなった。沈黙。冷たい空気。
でも、数時間後――健太が口を開いた。
「ごめん。…本当は、言いたいこともっと早く言えばよかった」
「私も。ひとりで抱え込んで、勝手にイライラしてた」
そして、泣きながら笑った。
「これが“ふたり”で生きるってこと、なのかな」
「うん、たぶん…ね」
●第4章:君の声に、寄り添う
美咲が風邪を引いた。
喉が枯れ、熱でふらふらになりながらも、「明日、番組あるから…」と立ち上がろうとする。
そのとき、健太が背後から優しく抱きとめた。
「もう、頑張らなくていい。今日くらい、俺に甘えて?」
その言葉に、美咲の目から静かに涙がこぼれた。
「…ありがとう。なんか、すごく安心した」
健太は、何も言わず彼女の額にそっと唇を重ねた。
●第5章:愛は、積み重なるもの
少しずつ、“ふたり”の暮らしにリズムができてきた。
カーテンを選ぶ休日。
洗濯物を干しながら、じゃれ合う日曜日。
夜、眠る前の「おやすみ」のキス。
大きな事件はない。だけど、確かに育っているものがあった。
「ねえ、美咲。これから先も…ケンカしたり泣いたりするかもしれないけど、さ」
「…それでも、あなたとなら乗り越えられる気がする」
そして彼らは、そっと手を繋いだ。
第12巻:『君と住む世界に、愛を育てる』 完
最後まで読んでいただけて、ありがとうございます。
物語のスピードは少し暖かくなりましたが、それは二つですが「ちゃんと幸せになるための準備期間」でもあります。
言葉にしなければ伝わらないこと。
言葉にできなくても想いが伝わる。
第12巻では、そんな小さな感情の揺らぎを丁寧に描きたいと思って書きました。
感情の「温度」が、少しでも実現して嬉しいです。
次巻はさらに、ふたりが「外の世界」と眺めてみたいお話になります。
変わっていく周囲、そして変わっていく自分たち




