表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星装機ヴァルキリア 〜最強の黒騎士は、歌姫の愛で未来を視る〜  作者: homare


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/67

黒耀再臨《オニキス・アドベント》

 闘技場アリーナ。数多の勝利と敗北が刻まれた戦場は、今日も喧騒に包まれていた。観客席からは、怒号のような歓声が響き渡り、興奮に満ちた空気が、アリーナ全体を覆っている。


「さあ、皆さん!本日も熱い戦いが、今、幕を開ける!大注目のハンディキャップマッチ!新生ベオウルフが、鉄壁の守りと、破壊の象徴に挑む!」


 バトルナビゲーターの甲高い声が、アリーナに響き渡る。中央のリングでは、早くも激しい戦闘が繰り広げられていた。


 漆黒の機体、新生ベオウルフ、ベオウルフ・リベリオンは、重装甲のGファランクスと、重武装のアサルト・ヴァンガードの、二機を相手に、孤軍奮闘していた。


「まずは、Gファランクス!鉄壁の盾で、ベオウルフ・リベリオンの攻撃を阻む!そして、アサルト・ヴァンガード!圧倒的な火力で、ベオウルフ・リベリオンを射抜く!」


 実況の声が、戦況を伝える。Gファランクスは、その名の通り、重装甲を活かした鉄壁の防御を誇り、ベオウルフ・リベリオンの攻撃を、ことごとく防いでいた。一方、アサルト・ヴァンガードは、肩に搭載されたビームランチャーや、ハンドミサイル、高出力ライフルなど、圧倒的な火力で、ベオウルフ・リベリオンを射抜こうとしていた。


 しかし、ベオウルフ・リベリオンは、その驚異的なスピードで、全ての攻撃を回避していた。まるで、重力から解放されたかのように、軽々と、そして優雅に、戦場を舞っている。


「なっ…!?あのベオウルフが、こんなに速かった!?」


 アサルト・ヴァンガードのリシェル・バートンはは、驚愕の声を上げた。


 ベオウルフ・リベリオンは、Gファランクスの死角から、攻撃を仕掛けようとしていた。Gファランクスは、重装甲に特化しているため、機動性が低い。そのため、背後や側面からの攻撃には、対応しきれないという弱点があった。


 漆黒の拳が、鉄壁の防御を潜り抜け、Gファランクスの装甲を叩く。


「ぐああああ!」


 Gファランクスは、吹き飛ばされ距離を離される。


 その様子を、闘技場の控え室で、三人の歌姫たちが観戦していた。


「うわー、カイトさん、マジすごいじゃん!」


 ミライは、目を輝かせながら、興奮気味に声を上げた。


「…まあ、当然の結果ね。あの程度の機体、私の歌声があれば、一瞬で終わらせられるわ。」


 ユナは、腕を組み、クールな表情を崩さない。


「相変わらず、血なまぐさい戦い方するわね…」


 シアンは、少し憂鬱そうな表情を浮かべた。


 彼女たちは、かつて、アリアのライバルとして、闘技場の舞台で戦っていた。しかし、今は、その座を奪われ、控え室で戦況を見守るだけの存在となっていた。


「カイトさんは、朧影とソウル・エンチャンターのペアにも勝ったんだよね?マジありえないんだけど。」


 ミライは、信じられないといった様子で言った。


「あたしたち、完全に当て馬にされたってことじゃん。むかつく!」


 ユナは、怒りをあらわにした。


「ま、あたしたちには、関係ないし。どうせ、またすぐに新しいのが出てくるんでしょ。」


 シアンは、投げやりな口調で答えた。


 闘技場の戦いは、彼女たちにとって、もはや日常の一部でしかなかった。生死の駆け引きもなく、ただ、機体を鼓舞し、戦うだけ。刺激もなく、緊張感もない、退屈な日々。


 アリーナでは、再び戦闘が開始されていた。ベオウルフ・リベリオンは、Gファランクスに、容赦なく襲い掛かる。


 その時、アリアの歌声が、闘技場に響き渡った。


  アリア:空に咲く、希望の光


  アリア:絶望を、照らし出せ!


 アリアの歌声は、人々の心を癒し、希望を与える。その歌声は、戦いの激しさを忘れさせ、穏やかな気持ちへと導いていく。


 イザベラの研究室。


 イザベラは、モニターに映し出される戦闘データを見つめながら、小さく呟いた。


「…さらに早くなっているな。」


 ベオウルフの機体性能、そしてカイトの操縦技術は、着実に向上していた。アリアの歌声が、その進化を加速させている。


 その時、ディーバシステムのゲージが、急激に上昇し始めた。


「来たわ!リミットブレイク!」


 イザベラは、興奮した表情で、モニターを見つめた。


 アリアの歌声が、さらに高らかに響き渡る。


  アリア:閉ざされた心の扉を


  アリア:開け放て!


 アリアの歌声に呼応するように、ベオウルフから、眩い光が放たれた。


【リミットブレイク発動】


「何っ…!?速すぎる!」


 アサルト・ヴァンガードのパイロット、リシェル・バートンは、驚愕の声を上げた。


 リシェルは、ノア軍のエリート出身。幼い頃から戦闘訓練を受け、数々の模擬戦で優秀な成績を収めてきた、戦いのエキスパートだ。彼女は、闘技場で戦うカイトの姿に、強い憧れを抱いていた。


(まさか、あのカイトさんが、ここまで強くなるとは…!)


 今、彼女は、尊敬するカイトと、闘技場で相まみえている。彼女の心は、高揚感と緊張感で満たされていた。


「歌いますよ!バートンさん!」


 アサルト・ヴァンガードの歌姫、カエデの声が、リシェルの脳に響き渡る。


 カエデ:貫く意思、鋼の誓い

 カエデ:炎となれ、我が魂!


 凛としたカエデの声が響き渡る。

 彼女は、アサルト・ヴァンガードにエネルギーを送り込むと同時に、自らを鼓舞していた。


 ベオウルフ・リベリオンは、アサルト・ヴァンガードの射線上から消えるように身を翻し、死角へと回り込む。


「甘いな!」


 Gファランクスのパイロット、バルトは、冷静に判断し、背後からの攻撃を防ごうとする。


 バルトは、下層区画の出身だ。かつては、ギャングの一員として、裏社会で生きていた。しかし、ある事件をきっかけに、ノア軍にスカウトされ、パイロットとしての才能を開花させた。彼は、Gファランクスの重装甲に、強い誇りを持っている。


 Gファランクスの歌姫、シアンの声が響く。


 シアン:傷ついた友を、守るため

 シアン:鋼の盾となろう


 シアンの静かで、力強い歌声が、Gファランクスのエネルギーを増幅させていく。


 重装甲を誇るGファランクスは、その防御力をさらに高め、鉄壁の守りを築き上げる。


(この盾は、どんな攻撃も防いでみせる…絶対に…!)


 バルトは、己の全てを懸け、Gファランクスの操縦に集中する。


 しかし、その防御は、アリアの歌声によってリミットブレイクを達成したベオウルフには、通用しなかった。


 音を立ててグシャリと潰れたGファランクスは、その巨体を地面に倒した。


「バルト!?」


 リシェルは、Gファランクスの撃破に動揺する。


 圧倒的なスピードでアサルト・ヴァンガードに迫る漆黒の機体。ベオウルフ・リベリオンは、迫りくるミサイルを切り裂き、ビームを回避しながら、一直線にリシェルへ向かう。


 リシェルは、焦りを感じながらも、迎撃態勢を整えようとする。


「歌いますよ!バートンさん!」


 アサルト・ヴァンガードの歌姫、カエデの声が、リシェルの脳に響き渡る。


 カエデ:貫く意思、鋼の誓い

 カエデ:炎となれ、我が魂!


 その瞬間、アサルト・ヴァンガードからも、眩い光が放たれた。


【アサルト・ヴァンガード リミットブレイク発動】


 腕部ランチャーから、次々とミサイルが発射され、雨あられのようにベオウルフに降り注ぐ。さらに、高出力ライフルから放たれるビームと、肩部のレーザーキャノンが、幾重にも重なり、レーザーの奔流となり、ベオウルフ・リベリオンを飲み込もうとする。


 凄まじい弾幕が、アリーナを埋め尽くす。


(高出力ライフルと肩部ビームランチャーと、ここまでの高機動連携とは…!)


「…これで終わりだ!」


 リシェルは、勝利を確信した。しかし、その確信は、次の瞬間、打ち砕かれることになる。


 ベオウルフは、信じられないほどのスピードで、その弾幕を切り裂き、リシェルの目の前に現れたのだ。


 ベオウルフは、アサルト・ヴァンガードの肩部ランチャーをも切り裂き、迫る高出力ライフルを弾き飛ばし、コックピット直下のヘッドセンサーを破壊した。


(マズイ!)


 リシェルは、頭部を破壊され、抵抗することもできず、墜落した。


 ベオウルフは、圧倒的な力で、Gファランクスとアサルト・ヴァンガードの2機の新型機を撃破したのだ。


 アリーナに、勝利を告げるアナウンスが響き渡る。


「勝者!カイト!そして、歌姫アリア!新生ベオウルフ、ベオウルフ・リベリオンが、Gファランクスとアサルト・ヴァンガードを撃破!伝説は、終わらない!」


 観客席からは、地鳴りのような歓声が沸き起こる。


(やった…!カイト…!)


 メンテナンスエリアから、ユキが、安堵の表情で戦況を見守っていた。


 ベオウルフのコックピット。


 カイトは、激しい息遣いをしながら、勝利を噛み締めていた。その顔には、疲労の色が滲み出ている。


(…ディーバⅢ…やはり、危険なシステムだ…)


 カイトは、コックピットに表示された、機体データを見つめた。リミッターをかけているにも関わらず、機体への負担は、想像以上だった。


 それでも…


(…もっと…もっと、強く…)


 カイトの瞳には、新たな炎が宿っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ