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プロローグ

資源枯渇と環境汚染により星が死んだ近未来。

人類は巨大移動都市「ノア」を建造し、生き残りをかけた戦いを繰り広げる。

闘技場に響く熱狂、人々の心を操る歌姫ディーバの歌声。その裏で蠢く、巨大な陰謀の影。


過去を背負い、孤独に戦い続ける「沈黙の黒騎士」カイト。

彼の前に現れたのは、希望を歌う歌姫アリア。

出会うはずのなかった二人が出会う時、世界を揺るがす真実が明かされる。

歌と鋼鉄が織りなす物語が、今、幕を開ける——!


さあ、選べ。絶望か、希望か。

 星は死んだ。


 かつて輝きに満ちた惑星は、資源を貪り尽くされ、汚染に蝕まれた。

 荒涼とした大地と、鉄錆色の空。だが、人類は滅びなかった。


 巨大移動都市「ノア」。

 世界に8つ存在する鉄の巨城は、資源を求め、大地を彷徨う。

 互いに牙を剥き、生き残るために戦う。


 ノアⅣ。特異な技術と野心で繁栄を築き上げた新興都市。


 今宵、血塗られた儀式が幕を開け、

 来たるべき「星歌祭」に向け、鋼鉄の巨人が闘技場に舞う。



(歌姫の声:)

 罪深き血潮よ、滾れ!

 虚無を焦がす炎となれ!


 赤土が舞い上がる闘技場で、二体の人型兵器が火花を散らしていた。

 片方は、ノアⅣが誇る漆黒の重戦士「ベオウルフ」。鈍色の装甲は歴戦の傷跡を刻み、無骨なシルエットは圧倒的な力強さを誇示する。

 対するは、ノアⅦ(セブン)から参戦した白銀の疾風「ガルーダ」。流麗なフォルムは、翠玉色の輝きを放ち、その背には巨大なウイングバインダーが装着されている。スピードと正確性を極限まで追求したその姿は、ベオウルフとは対照的だった。


(歌姫の声:)

 剥き出しの魂、震わせ!

 刹那の煌めき、刻め!


 ガルーダが、ウイングバインダーを全開にし、超高速でベオウルフの周囲を旋回する。両腕のビームライフルが火を噴き、漆黒の装甲を削り取る。だが、ベオウルフは微動だにしない。

 ガルーダの攻撃パターンを瞬時に解析し、ベオウルフは重厚なシールドを構え、砲火を凌いでいく。その姿は、嵐に立ち向かう巨岩のようだった。


(歌姫の声:)

 甘美なる絶望、味わえ!

 狂気の宴を、咲かせ!


 ベオウルフが、重い足を踏みしめ、大地を震わせた。突如、背部のブースターを点火し、信じられない速度でガルーダに肉薄する。

 咄嗟に体勢を立て直そうとしたガルーダだったが、重装甲のベオウルフには、反応速度で劣る。ベオウルフの巨大なバトルアックスが、ガルーダのウイングバインダーを紙屑のように切り裂いた。


(歌姫の声:)

 破滅の調べ、高らかに!

 勝利の女神に、捧げよ!


 ガルーダは、必死に回避を試みるが、ベオウルフの追撃は容赦ない。バトルアックスが、ガルーダのコックピットを直撃し、白銀の機体は沈黙した。

 沈黙。勝利を収めた漆黒の機体は、ゆっくりと膝をつき、その巨体を休める。


 コックピットハッチが開く。姿を現したのは、若いパイロットだ。

 鋭い眼光、無表情に引き結ばれた唇。その顔には、勝利の喜びは微塵も感じられない。彼は、ノアⅣの英雄。無敗の記録を更新し続ける、伝説のパイロット。その実力は誰もが認めるところだが、私生活は謎に包まれ、誰も彼の素顔を知らない。人々は、彼を「沈黙の黒騎士」と呼んだ。


 アナウンスが響き渡る。「勝者、『沈黙の黒騎士』!」。観客席から、地響きのような歓声が沸き起こる。

 その時、一人の観客が、静かに呟いた。

「……カイト。」



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