第二節 プロローグ
人生迷子になったことはあるだろうか?
オレは今まで一度もなかった。
人生の目標や方向性がなかったことはないし、そもそも持っている奴の方が異常だ。
たとえ目標がなくとも、進んで生きていけるし。別に楽しくなくとも、生きることだけが目標でもいいじゃないか。
人生を過大評価し過ぎだ。
方針を立てれば上手くいくと安易に考え過ぎだ。
運を過程に入れない成功者を鵜呑みにするな。
自称しない限り名の付かない職業の奴らに答えを聞くな。
頭脳明晰の奴が凄いのであって、その学校自体に価値を感じるな。
「……はぁ」
オレは肺に煙草の煙を入れながら、現実逃避に近い脳内戦争を垂れ流していた。
どうしてこんな愚痴を溢しているかと言うと、人生迷子というか今絶賛なにもない荒野で迷子になっているからだ。
道など存在しないのだから迷子というより、遭難と言った方が正しいのかもしれない。
車に搭載された人工知能の電源が切れて予備のモバイルバッテリーも空っぽになっている。
ここが人生の終着点。
あぁスマン直人、幸叶……。結局オレは外の世界で生活するだけで精一杯だったよ……。
諦めモードに入って運転席の背もたれを倒す。
岩の日陰で体力を温存するだからと言い訳をして、二本目の煙草を咥えた。
……カチッ、カチッ…………ォォ……あれ? ライターもガス欠じゃねーか…………ォォ…………ォォォォ………………ブォォォォ。
何処からしていた異音が少しだけ大きくなり、オレはそれが誰かの走行音だと気づいて車にエンジンを掛ける。
案外なんとかなるかも知れねぇー。
行き当たりばったりで生きているが、オレは着実に楽しい人生を送っている。
——誰か助けてくれぇー!
最初だけですが。明日辺りに後悔します。




