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第5話 ブレーキ音は鳴らないまま何処までも

完結間近ですね。ははは。


 4


 それから四月一日は部屋から出てくることはなく。温泉川に連れ回されるまま調査員に必要な物をかき集め、知識を蓄えさせられる日々を送った。

 荷物を整え、バックを背負い、車に乗り込む。助手席にはボロボロのアタッシュケースが置かれており、直人は拳銃を車と一緒に都市の外に持ち出していたそうだ。

「——お祖父さん。お祖母さん。お世話になりました」

 オレは旅館の前に車を止めて祖父母に挨拶を交わす。

「本当に行くのかね」

「寂しいわ」

「ごめんなさい。でも、必ず帰ってくるよ」

「うん。できれば私たちが老死する前に帰ってきておくれ」

「縁起でもないこと言わないでよ」

「ははは。すまんすまん。でも、そろそろだからな」

「頼むから健やかに見送ってくれ。マジで行きずらいじゃないか」

「幸叶に挨拶はしないのか?」

「せめて最後くらい来てくれると思ってたんだけど会ってくれないからね。伝えたいこともあったし」

「告白?」

 祖母はワクワクした表情でそう言う。

 おい、従姉妹だろうが。

「そういうの死亡フラグって言うんだぞ。やめとけ」

「オレは死ないから大丈夫」

 なんだかんだ祖父母と未練たらしく喋り込む。

「思ったんだが、幸叶はお前が今日旅立つことを知っているのか?」

「玄関の隙間に手紙を残したから来ると思うよ」

「いや、その自信はどこから来るんだ」

「来ないと恥ずかしい写真をばら撒くって手紙に書いたし」

「クズじゃな」

「そうね。死になさい」

「酷いなこの祖父母」

「「お前だけには言われたくない」」

 来なきゃそれはそれでしかたない。伝えたいことはその手紙の中に書いておいた。

 再びギアをパーキングからドライブに切り替えて、ゆっくりハンドブレーキを倒した。

「じゃあ行ってくるわ!」


「——待って!」


 アクセルに足を踏み込む直前、後方を振り返ると待ち人が息を荒立てながらそこに居た。

 おお、めっちゃいいタイミングだ。まるでドラマみたいだ。

「世の中には怖い奴が沢山いて、飛行機を空高く飛ばせなくて、海にだって真面には出られない」

 綿貫は駆け足でゆっくりと発信する車の窓口をつかんだ。

 ブレーキに足を掛けると、なんだか後戻りができなくなる気がして止めはしなかった。

「そうみたいだね。怖くて、不思議だね」

「外の世界は辛いだけだよ」

「かもしれないな」

「痛いだけ。苦しいだけ。君が今まで受けた苦痛よりも外は真っ暗で、誰も自分を見てくれなくて、ふとした瞬間に消えてなくなる」

「きっと辛いとは思う。今も少し辛いけど」

「進んだ道を誰も褒めてくれやしない。君が誰かを思っていても、他の誰かは君を知ってくれなくなる」

「仕方ないよ。結果が出なきゃ全部そうだもん」

「こうして意気込んだところで絶対に損をするよ。お先真っ暗だ」

「だから君は灯っている世界で暮らすべきだ。僕は一人でも世界を少し見すえられる。気がするだけかもしれないけど」

「私を置いて行かないでよ……」

「じゃあ、一緒に来るか?」

 四月一日は顔を歪ませる。……俯いて、下唇を噛み締めた。

「私は調査員が嫌いだ」

「それでも君の親父を探してみようと思う。適当にだけど。見つけたら連れて帰るよ」

「父も嫌いだ」

「家族を放ったクズだもんね」

「君が言うな」

「幸叶はどうしたいんだ?」

「私は……君と一緒に暮らしたい。安心したい。不安になりたくない」

「それはなんで?」

「きっとこの先、家族が君しかいなくなる。君のことが家族として好きだ」

「そうだね。でもそれは幸叶の理由だ。オレの理由じゃない」

「……最低。なら聞かないでよ」

 幸叶はなんで言わせたんだ言わんばかりにこちらを睨む。

 それがなんだか可愛くて、愛おしくて、申し訳ない。

「憧れの人のようになりたい。それが調査員になる理由だ。他人からしたらちっぽけな理由で、オレも疲れたときとか辛いときには下らないものだと感じるよ。でも、そんなものは理由にならない」

 オレは彼女にずっとそう言いたかった。

 直人が要塞からオレを連れ出したみたいに……。

 最低だと思う。

 全然似ていないし。

 ただの自己満足。

 別れ際に無理矢理ねじ込んだだけだ。

「野良は彼みたいには成れないよ。絶対に……」

「そうかもね……また、会いに行くよ。君が兎みたいに寂しくて死ななない程度には会いに行く。それか有名になって名前を届けるよ」

「死亡者名簿に乗ったのは嫌だよ」

「きっとオレは特別だ。だから主人公補正ってのがついてるよ!」

 そっと触れていたブレーキペダルから足を離して、ゆっくりとアクセルペダルを踏み込む。

 幸叶は涙を溢しながら最後まで窓に手を掛けていたが、進んでいく車に追いつけずに手を離していた。


 元々考えていた展開だと、幸叶と観光して楽しんで、海底調査で神秘的な何かに出会い、危険な目に遭う出来事があったのですが、長すぎた為に辞めることにしました。

 終盤でタラタラしたくなく、書きたかった本編ろせんからずれてしまうので、全カットしました。

 B・P号での出来事を別編(間章)として投稿するかもしれませんが、今回は都市編での主人公のらの旅立ちを描いた巻なので、ごめんなさい。。


 もう、現段階で十二万文字越えちゃっていますからねw

 これ以上書いたら二十万文字越えちゃうよ。ƪ(˘⌣˘)ʃ


6月29日推敲済み

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