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第1話 ブレーキ音は鳴らないまま何処までも

 ちょっと短めです。

 次もその次も長いから許してね。


 ☆


 直人と未來はあれから姿を消してしまった。

 未だに友人以上の関係だと思っているが、今は彼をなんと評して呼べば良いのか分からない。壱真を通してでしか現状を知る術がないのは、やっぱり関係性に過大な評価をつけていた。

 気持ちを切り替えようと全ての部屋のカーテンを開け放ち、少しでも多く日の光を取り入れる。すると、直人の部屋のゴミ箱にまだ中身の残った煙草の箱を発見した。

 キッチンにあるチャッカマンで火を付け、そっと息を吸い込む。

「う……ごほっ、ごは、うぉぇ!」

 焦げたパンのような食感が口一杯に広がり、つい鼻呼吸をすると奥の方がツーンと痛む。少し吸い込んだだけなのに肺が燃えるような息苦しさと圧迫感に襲われた。

 なにかに依存すれば楽になれると思っていたが、そう簡単なものではなかった。

 火を消さずに灰皿の上に放置して副流煙を撒き散らす。直人から普段漂ってきた香りで不快感はない。あらためて、本当にいなくなったんだと実感した。

 ソファーに腰掛け、ぼんやりと天井を眺めていると、突然呼び鈴が鳴る。

 相手が誰なのか察しながらも、覗き窓を確認して扉を開ける。

「——やさぐれてるな」

 榮壱真は顔を合わせるなり、馬鹿にするように口端を上げた。

「直人はどうなったんだ?」

「その前にお茶を出すべきじゃないかな? 犯人蔵匿者」

 揚々とした態度で足を踏み入れた壱真は神妙な面持ちで鼻をひくつかせ、「……なんか臭いな。お前タバコ吸うのか?」と軽蔑に近い視線を向けてきた。

「直人の残りになんとなく火をつけたんだ」

「情けない奴だと思っていたがそこまでとはな」

「いいから早く要件を言えよ」

 思わず睨みつけると、壱真はやれやれと左右に首を振る。

「結論から言うと、直人の捜索は断念することになった。もう、外に出ちまったって考えだ」

「そうか……」

 都市の重要インフラが停止して一週間。通信基地局や一部の発電所は僅かに復旧しているらしいが、完全に戻すのには早くても二ヶ月先のことらしい。

 誰も彼を許しやしないのだろう。直人が容疑者だと報じられたことはないが、それでも重い業を背負ってしまった。

「……言っておくが、悲観的になっている暇はないからな。お前は早々に都市から出ていけ」

「なんでだよ」

「都市を復旧させたら親父は囚われの街の調査を始めるつもりだ。お前の存在もいずれバレる」

「……知っていたのか?」

 それはアンタが上に話すべきことだろ。

「散々巻き込まれたからな。そもそも、僕らは人間らしい感情を優先して作られている。仕草や態度で人の心が読めるし、感情移入し易い設定プログラムなんだよ」

「その割には性格と態度が合ってなくないか?」

「五月蝿い。こっちは十番目と違って失敗作扱いなんだ。だから、父親に似たアイツにさえ兄らしくしたくなっちまうんだ」

「そうなのか……ありがとな。助かるよ」

「アイツより先に生まれてんだ。当然だろ」

「大人だな。友達にはなりたくないが直人の次くらいに尊敬しとく」

 先ほどのお返しと言わんばかりに嫌味を返すと、壱真は不愉快そうに鼻を鳴らした。

「……じゃあな、いつか後悔しやがれ」

 そう言って、玄関にすら上がることなく帰って行った。

 一瞬寂しそうに見えたその背中を見送って、温泉川に電話をかける。

『おかけになった番号は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません』

 電波は復旧している筈なのに、これで十回目の着信拒否が流れた。

 すでに都市の外に出てしまったのか、もう会うことはないのかもしれない。

 仕方なくネットで調べた情報を元に旅立つ準備を始める。問題を起こした友人のおかげで時間だけは十分にあった。

 身支度を進めていくと、ふと、幸叶のことを思い浮かべる。まだ別れの挨拶なんて出来ていない。夜鶴のときみたいにハッキリとしないのは嫌だった。

『話があるんだけど。どこかで会えないか?』

 端的なメールを送ると、すぐに通知が鳴る。

『いつでもいいよ。ついでに海にでも行く?』

『その話もするつもりだ。明日、いつもの駅前で会えるか?』

『わかった。楽しみにしとく』

 メール越しでお別れを伝えられれば楽だったのに——、と送った後で気づいた。


「——すみません。アイスコーヒーを一つ下さい」

 喫茶店で気持ちを落ち着かせようと温かいコーヒーを頼む。

「じゃあ私はサンドイッチとホワイトシチュー。あと、海鮮グラタンとこの生クリームの乗ったプリンを一つ」

 飲み物を頼むと、万愚節は本格的な朝食を注文した。

 手短に要件を伝えるつもりだったが、なんだか帰り辛くなった。

 視線を落とし、掌を握り締める。

「あ、あのさ……」

 遠回しな言い方になったがオレは意を決して別れ話を伝える。彼女は少し残念そうに離れてくれると、その程度の関係だと考えていた。

「じゃあさ、海に行こうよ!」

 しかし、普段と変わらない態度でそう答えられた。

「いやだから、ここを出るんだって。理由は言えないけど、約束は守れないんだ」

 訴えかけるオレを他所に、万愚節は運ばれてきたサンドイッチをもぐもぐと頬張る。

「時間に余裕はあるんでしょ? だったら一週間くらい遊ぼうよ」

「出来るだけ早くここを出るつもりなんだ」

「海は都市外にあるんだよ。尚更ついでみたいなものじゃん」

「そうかもしれないけど、色々と不安なんだよ。ここの住人じゃないから検問の手続きとか面倒臭そうだし。一度出たら戻れなくなるかも知れない。慎重に行きたいんだ」

「だったら教えてあげるよ。これでも昔は調査員に憧れていたから詳しいよ」

「でもなぁ……」

 煮え切らない態度に、彼女は少しムッとした顔をする。

「詳しい理由は知らないけどさ、急いで都市から出て行きたいんでしょ? だったら悩んでいても仕方ないし、都市外の方が道具を揃えやすいんだよ」

「そうなの?」

「海と言っても希望ヶ丘っていう海岸にある街のことだからね。移都市は色々と規則が厳しいから尚更頼った方が効率いいよ」

「……わかった。一度断っといてなんだけど、連れて行ってくれないか?」

 これで最後だしな。折れてしまった方が楽でいい。

「じゃあ、早速準備しようか」

「え、今から行くの?」

 テーブルの上に並んだ食器はいつの間にか空になっていた。手品かよ。

「急がないとダメなんでしょ。持っていく荷物ってなにかあるの?」

「自宅にバイクがある。あと日用品はキャリケースに入れてきた」

「バイクは外でも使うの?」

「移動手段がそれしかないからね」

「中古車だったら海の街にもあるよ。燃費悪いし車に買い替えたら?」

「そうしようかな」

 囚われの街から移都市に来るまでに携帯食糧は五日で無くなった。そう考えると、もう少し積載量は欲しいところだ。

「まぁ取り敢えず行こうか」

 店を出ると、腕を掴まれて先導されるがまま駐車場を歩かされる。

「え、なに?」

 黒服スーツを着た大男が車の扉を開いて後部座席に乗るよう誘導してきた。

「——じゃあ、出発進行!」

 元気のいい合図に、男は無言で車のエンジンを掛ける。

 専属運転手プライベートドライバーがいるのを見て、彼女がお金持ちだったことに唖然とした。

 お前、今までなんの為に奢ってもらってたんだ……。


自分の文章力が足りて無い気がして、描きたかった描写で作者の想いとか意味メッセージが伝わっているのか心配です。


 誰か感想くれないかな……(チラ)



6月29日推敲済み

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