知ってか知らずか
薄明りの中、プラネット教室という授業の中で、地球という惑星に関する授業が行われていた。
「えー、この惑星は近年、我々モリオン人によって発見された美しい惑星です。見てごらんなさい、ここがアメリカという大陸です。大きいでしょう」
モリオン人教師が、宙に浮いた地球の中のアメリカ合衆国に指を触れて言う。
それを見ていた生徒たちは、つまらなさそうに大あくびをかいた。
「せんせー、そんな小さな球を見たって、何もおもしろくありませーん」
「そう言わずによく見てごらんなさい。この辺りには、この惑星の人びとが造りあげた素晴らしい彫刻があるのですよ。これを見れば、感動するに違いありません」
モリオン人教師はビサの斜塔のある辺りを指で触れ、もう片方の手に持っていた立体ホログラム映像機で、ビサの斜塔の立体資料映像を映し出した。
「どうですか、この傾き具合。これぞまさに芸術だとは思いませんか。そして、このギリシャという大陸のコロシアムは大変素晴らしい歴史を持っているそうです。他にも、建築物がたくさん密集している地帯があるんですよ。例えばこのホンコンという都市には、アメリカ大陸のラスベガスという都市並みに細長い建築物が密集していて――」
説明をしながら、モリオン人教師は次々と各地を触れていく。
しかし、モリオン人教師の独りよがりな授業に疲れた生徒たちは、既に別の星に興味の対象を移していた。
「あの星、ドッヂボールに使えそうだな……」
一方その頃、地球では、世界規模での非常事態宣言が発令されていた。各国の放送局では全ての番組が臨時ニュースに差し替えられ、地球の人々は某国が開発した新兵器だの、宇宙人の侵略だのと騒ぎ、慌てふためいていた。そんな中、キャスターは冷静に事実を伝えていく。
「大変です。世界各地の都市が謎の巨大物体により一瞬にして破壊され、多くの人々の命が今もなお失われ続けています。たった今入ってきた情報によりますと、つい五分ほど前に日本の本州が陥没したようで……」