さいしょうさま!!
胃薬を差し入れしようと固く心に誓った
「この陛下野郎ーー!!」
この城で1番よく響く言葉である。陛下とはご存知の通りこの国の王なのであって、まかり間違っても「野郎」なんて言っていい相手じゃない。それでも言わなきゃやってられん───!
これは、この国の王を唯一「野郎」呼ばわりできる漢─宰相様の物語である。
その漢の朝は怒号から始まる。本人曰く始めたくはないそうだが、そもそも怒号を上げたい人の方が奇特という事を分かっているのだろうか。
怒りポイントは日によって違うらしく、この日は期限ギリギリの書類が決済書類の一番下に見つからないように紛れ込んでいたらしい。「アンタは子供なんですかっ!!!」という漢の声がここまで聞こえてくる。全くもってその通りである。
「もうこれ今月入って何回目ですか陛下!!」
「せめて締切の1週間前、いや3日前にはやってくださいって私申し上げた筈ですが?!!!」
「知ってます??!あの口だけは達者な狸な大臣たちに文句言われるのは私なんですよ?!!!」
「アンタ外面だけはいいから!!私の!!せいになるんです!!」
「あーーもーー辛いわー、中間管理職は。陛下のせいでな、この野郎」
もの凄く怒っているように聞こえるが、実際のところ、これは日常茶飯事なのである。いや激怒していることに間違いはないのだが。
しかし陛下にあらせられては宰相のこの剣幕にお慣れになったらしく、「だってお前ならやってくれるだろぉ宰相〜。俺だって狸共が相手ならちゃんとやってるし〜」と言う始末。いや、大臣たちの前ではちゃんとしてるんかい。それは尚タチ悪いわ。大臣たちに文句言われるはずだって。
「あー今日のはNだな」
「そうだな。昨日の宰相様はSRだったし、流石の陛下も2日連続ではやらかさないだろ」
といった当直衛兵の雑談が聞こえてくる。至って平和である、宰相の精神的疲労以外は。
ちなみに、衛兵たちが話していた「昨日のSR」とは、名付けて【裸の王様危機一髪】事件である。陛下は朝シャンの習慣があるのだが、下着を忘れやがったのだ。ヲい、貴方朝シャン歴何年目ですか。もうかれこれ15年はやってるでしょうに。
まあ、百歩譲ってそんな事は人生で1回は経験するであろう事だ。だから、そこで人を呼ぶなり何なりすれば良かったのにあの陛下は。よりによって腰にタオルを巻き付けたまま廊下に出てきた挙句、大声で宰相を呼びつけたのだ。
そんな陛下を一目見た宰相様は「アンタそこに侍女がいるでしょうが侍女が!!」と極めて小声で言い放ったそうな。言ってる事は分からなかったものの、その息遣いは城中に届いたらしい。恐るべし宰相様の肺活量である。
そんな早朝ともいえる朝の時間が終わると、陛下の朝食の時間がやってくる。
これもまた、宰相様の胃に大きなダメージを蓄積する時間だ。なんてったって陛下は、食べるのにめっちゃ時間が必要なのだ。
「おい、このサラダにはどこで取れたものを使っているのだ?」
「このパンは酵母を変えたか?風味が昨日までと違う気がするが」
「料理長、この魚料理の説明を頼む」
等々、食べてる時間より話してる時間の方が多いのだ。その後のスケジュールに余裕があればいいものの、そこは腐ってもこの国の王であらせられるため、分刻みのスケジュールで動いている。
いや、陛下のその姿勢は民に寄り添っていて大変素晴らしいんですけどね……。あの、時と場合を考えていただければと、そう存じたい所存。
そこで、我らが宰相様は心を鬼にして陛下を制しにかかる。まず、前日から料理長とメニューと使用食材ついて相談。できるだけ旬の食材をふんだんに使いつつ、調理法を工夫したり食材を変えたりするとすぐに気づかれてお言葉を頂戴してしまうために注意が必要だ。陛下にバレないように慎重に調整を進める。しかし、何も変化させないのは陛下にお出しする食事として問題があるため、何ヶ所かは工夫を凝らす必要がある。
そして、陛下の予想される反応を事前に予想し、それに合わせた対応を関係各所と協議しておく。料理を食べる順番をこれまでの食事風景から予測。昨日からキャベツの産地を西部から南部に変えたから、その風味の違いを説明できるように。この前のお言葉に適切な返答が出来ず、3分時間を無駄にしたから対策を…等々。まるで、学生が試験前に過去問から傾向と対策を練るかのように『陛下対策』を行っている。
そう、全ては円滑な公務遂行のためである。
なんとか朝食を終えれば、本日は閣議があるため陛下は円卓の間まで移動される。まあ、その道中にも宰相様の頭を痛める事は多々あるのだが、そんな些細なことは省略して。
そう、閣議の時間は宰相の数少ない体力回復時間なのだ!!
実はこの陛下、『外面だけはいい』と城内で専らの噂で……。つまり、閣議の間は全力で猫を被ってくれるのだ。仕事だけはちゃんとやる御方である。「そのやる気を私生活にも見せていただけませんかねぇ!」という宰相の愚痴がここまで聞こえてきそうだ。
「だって大臣たちに下手なとこつつかれると面倒だもんね〜」と円卓の間に入る扉の前ギリギリ、声がギリ中まで入らない所でくるっと振り返りながら言い放ち、その一瞬後には雰囲気180°変えて『王』になる陛下。その後ろをため息をつきたいけど、今それをするととある箇所から盛大なお気持ちが表明されるために無理やり平静を保って控える宰相様。俺たちでなきゃ見逃しちゃうね。
しかし、体力が回復できるからといってお仕事が少ないかと言われればそうでは無い。むしろ、『宰相』としての一番の仕事の場であるといっても過言では無い。あぁ、「じゃあ今までのアレは何だったんだ?」となっているそこの君。本当になんなんだろうね?ちなみに宰相様の今年の抱負は「全ては円滑な公務執行の為に」みたいだよ。うん。
そう、彼の本来の仕事は、国王の政治の補佐をすること。この国がより良くなるよう、国王の意を汲んで政治の舵取りを行う。しかし、閣僚の全員が全員同じ目線で動いている訳ではない。特に、現在は国王の代替わりからまだ日が浅いこともあり、その傾向が強い。前王の時代からいる大臣が多い中、まだ若い国王は、言葉を選ばずに言えば『舐められている』のだ。それは、代替わりと同時に登用された宰相様も同様で。年齢が親と子ほどに離れていることもあり、まあ大変やり難い。でも責務は責務。何とか国王の政治体制を確立するために、大臣と国王の間でいい落とし所を探る。その最も大きな場がこの閣議なのだ。
本日の議題は今年の税率について。冷夏のため、今年は農作物の不作が目立つ。そのために税率の引き下げを要求しているのだが…。
「そんな事したら国庫が枯渇するじゃろうに」
「前に同様の事例のときも税率は据え置きだったのだから今回も下げる必要はなかろう」
「そんなに税率を下げたいのなら、宰相殿にはそれを補填する策がおありか?」
「ふん、下げるとしたら別の場所で上げて補填するまでよ」
「国王はお若くしていらっしゃるのだ。儂らの経験を蔑ろにされては国が傾く。そこを何とか諌めるのが宰相殿の役目では?」
「「「全く、最近の若者は」」」
お前らが言うな
言ってることはまともそうに聞こえるが、要は「国庫(儂らが自由に使えるお金)が消えたら困る」「お金が無いなら他から取ってくればいいじゃない」「お子ちゃまは黙って従え」という、中世欧州の某美食の国もびっくりの暴論である。前王の時代ならそれで何とかなったのかもしれないが、現王の意向は異なる。そもそもさっき言ってた事は殆ど自分の私腹を肥やすことしか考えてないし、何なら「周りから取ればいいじゃない理論」に至ってはそれのせいで村が一つ滅んだ事が記録に残っている。しかし、大臣たちにとっては下々の事は想像に値しないらしいのだ。それを何とか説得して勅事発布まで持っていくのが宰相の主な職務である。
「それは大臣の皆さまの仰る通りですが、これで村が滅んでは来年からの基礎税収に響きます。ここは少し我慢をしていただけないでしょうか」
なんて事を手を変え品を変え言い、今日も今日とて平行線のまま閣議終了の時間となった。前回よりも後退せずに少し前進したことが救いである。
閣議が終り、国王が円卓の間から出るとほぼ同時に狸どもは席を立ち、悠々と帰っていく。直に国王の退出より前に退出を始めそうな舐めくさりっぷり…いや、勢いである。
「おい宰相、言葉くらい取り繕っておけ。そんなばかばかしい事でお前も揚げ足取りされたくないだろう」
「はいはい、分かっていますよ」
なんて陛下と言葉を交わしながら『裏』へと入っていく。先ほどまでいた円卓の間のような『表』が国会と各省庁の合体版のような所謂【政治の場】であるとすれば、『裏』は陛下のプライベート空間である。そのため本来は大臣や宰相のような『表』で役職を持っている人物は入らないことになっている。執事や侍女長を頂点とした『表』とは別の世界が広がっているのだ。しかし、この宰相様は違う。朝からお付き合いいただいた諸君なら分かるだろうが、この宰相、『裏』でも結構な位置にいる。最早、宰相兼執事といってもいいかもしれない。
そんな宰相様と共に『裏』に入っていった陛下は昼食の時間である。お昼も朝と同様に陛下の「なぜなぜ期」が始まるが、朝と違って後に緊急性のある予定がない事が多い。予定は詰まってるには詰まってるのだが、それ全て国王権限(宰相根回しよろしく!)でなんとかできることが殆どだ。そのため、大幅な変化は朝ではなく、昼および夜の晩餐に持ってくることが多い。それでも、対策をしないとこちらの想定よりだいぶ時間を使ってしまう恐れがあるため、傾向と対策は必須である。
しかし、今日は違うようで。
「陛ー下ーー、今日は午後から視察があるって私何回も申し上げていますよね!!!」
「だって~、このディップに使ってる野菜って今から行くとこのだろぉ~。しっかり味わっておかないと」
「それはもっともでございますが……!!もう予定の時間を45分も過ぎております!時間調整するにしてもそろそろ限界です!!」
「ん~~、ならそろそろ終わりにするかの」
「……はじめからやってくれ、頼むから」
最後の宰相様の言葉はどうやら陛下までは届かなかったようで、そのまま昼食を終えて席を立たれた。そして、宰相を引き連れて『表』を通りすぎ、馬場に向かう。
馬場では、一人の騎士服を着た男が待っていた。
「ここからは私が誠心誠意お守りいたします」
「今日もよろしく頼むぞ、近衛師団長」
「はっ」
そう、その男とは近衛騎士団長である。国王であるがゆえに、文句は正規の順序を踏まずに直接訴えればいいと思っている奴が一定数存在する。それが言葉のみであればまだ可愛げがあるが、腕力に訴えかけてくる輩の多いこと多いこと。王城の中は当たり前だが警備が厳重なため、ワンチャンあると思ってこのような外遊のときに狙ってくることが多い。こっちはそれも織り込み済みだっていうのに…。こちとらそれを見越して近衛師団1つ付けてんだよこのヤロー。
「……宰相殿?」
「すまん師団長。それで、陛下を頼むぞ」
「もちろんです。この身に変えても陛下は必ず城内まで連れ帰ります。以前より落ち着いてきているとは言え、未だに利権派の力は顕在ですので。特に、今日陛下が外遊することを知っている大臣たちの子飼いには最大限の警戒が必要かと」
「それはもちろんだが……。道中の馬車の中で絶対に陛下は寝る。100寝る。だから到着したときに寝ぐせとか涎の跡がついてないか確認お願いします。また、今日の外遊先では旬の野菜畑の視察となっているので野菜の試食があるかと思いますが、その場で収穫したものであっても毒見は怠らないように。あ、いくら陛下が野菜を気に入って『持ち帰りしたい~~』とかほざいても聞き入れなくて結構です。ほかの上納野菜との兼ね合いもあるので。勿論、向こうの方々には不快な思いをしないような言い回しでお願いします。本当は陛下が堪えられればいいのですが…。そこは陛下なので。あと、陛下が帰りたくないとか子供みたいに言っても時間になったら問答無用で連れ帰ってください。これが今日の日程表です」
「承知しました」
「あとの細かいことは以前配布した『陛下の奇行対策全集』を参照してください」
「もちろんです」
「ねえねえ君たち~~。私、陛下ぞ。陛下の前でそんな話するなんてさあ。そりゃないんじゃない?」
「「だって陛下ですから」」
「あぅ」
「ちなみに聞こえるように話してますから。アンタが聞こえて当たり前です」
「当たりが、当たりが強いって宰相~」
「それでは師団長、くれぐれもよろしく頼む」
「お任せください」
こうして陛下を無事(?)送り出したら、漸く宰相様に一息つける時間がやってくる。現在、昼の13時半。朝6時から陛下に振り回されてきた宰相様のコーヒーブレイク……とはならない。『鬼の居ぬ間に洗濯』とはよく言ったもので、陛下という邪魔者(なんだって~ by陛下)がいないほうが執務が進んだりするのだ。『表』にある宰相執務室にこもって今までに溜まった仕事を片付ける。え、じゃあ今までのこの数時間は何だったんだって?それは聞かないお・や・く・そ・く♡だよ。
宰相の仕事は多岐にわたる。各大臣の職務を総括し、これから先どのような国のかじ取りをしていくか陛下と大臣の間で板挟みになる、いわば究極の中間管理職である。相談事なんかは陛下との会合や円卓の間での閣議でほとんど終わるものの、書類仕事というものも存在するわけで。それは陛下がいるとむしろ進まないため外遊の時間に効率よく進める必要があるのだ。
それだけじゃない。
「宰相様~!財務卿が本日中までの今年度予算の承認書提出してくれません~!!」
なんてのが多々やってくる。やって来る彼らは官吏であり、職責に従っただけであるため何も悪くない。大方、今日の閣議で思い通りに進まなかったことの腹いせだろう。
「…分かった。私が行こう」
「申し訳ありません。我らが何とかできればよかったのですが。宰相様の手を煩わせる事態となってしまい…」
「君たちでは財務卿には敵わないだろう。形ばかりではあるが上司の私が行ったほうがいい」
「ありがとうございます!!」
「いや、君たちもここまで知らせてくれてとても助かった。ありがとう」
こんなやり取りが大抵他の大臣付きの官吏からもやってきて、大臣の執務室をはしごする羽目になる。そして、中々承認してくれない大臣たちに嫌味を言われる大変有意義な時間を過ごすのだ。
ほとんど全ての大臣執務室を巡って宰相執務室に戻ってきたときには、もう陽が西に傾き始めた頃だった。
「あ‘‘ー今日は本当に陛下が外遊に行ってくれて助かった。お守りを他に任せられるってなんてすばらしいんだ。……って私何を、まるで子供を預ける親みたいじゃないですか」
こんな独り言が漏れてしまう宰相様。勿論、宰相っていう身分がこの国でも上から数えたほうが早い人なので部屋にひとりぼっちってことは絶対にない。でもそんなこと気にしてられないくらいに「今」言いたかった。それを解っている良くできた部下たちは、こんな時全力で気配を消すことにしている。おかげで、諜報部顔負けの隠密能力を手に入れたとか、いないとか。
そうして、陛下のお帰りの時間が近づいてきた。行きと同じく、馬場まで迎えにいく。今まで早馬が届かなかったということは、大きな問題は起こらなかったということだが、果たして。
「ただいま宰相ぉ~」
「……申し訳ありません。私の力不足でした」
うん、分かってたよ。師団長、君はよく頑張った。
上から下まで、正しく言えば頬や服に泥汚れをつけた陛下。その後ろでとても疲れた顔をした師団長。そのズボンのすそも普段の演習でも付かないほどに泥汚れがついている。目立たないようにってことで普段着ている白地の騎士服じゃなくてよかったねって感じだ。
「で、何がどうなってああなったのですか陛下」
場所を『裏』に移し、陛下を早めの風呂に突っ込んだ後、宰相様はそのように口を開いた。ああ、こうなるんじゃないかと思って侍女に風呂の支度を指示しておいてよかったー。
「どうなっての何も、成り行き?」
「その成り行きを聞いているのです!」
「いやぁ、その土地の者に混ざることが理解への一番の近道って言うじゃないか」
「それでも貴方様は陛下なのですから。体面というものが――」
「それ以上言ってくれるな。流石の私も萎えるぞ。……今日はいつもより芋虫が多いみたいでな。どれ私も駆除をしてみるかと思った次第だ」
「……はぁ。なるほど、今日の言い訳は芋虫なのですね。で、陛下がそれだけ言うってことはよっぽどだったんでしょう。どれだけいたんです?」
「それはもう、とても。詳しい種類は分からんが、民の言うことには5種類くらいは居そうな感じだった」
「浅学なのですが、その芋虫を農家たちはどうするので?」
「それこそ種類によるらしいぞ。特に害のない奴は放置しておくらしいが、今回のは見つけ次第駆除しているらしい」
「成程、勉強になりますね」
「嗚呼」
全く、陛下は恐ろしいお人だ。バカだバカだと言わせておけばコレである。この御方は、目的の為なら自分がどのように扱われようと全く気にしない。普通ならここまで徹底してやれないものだ。この『陛下』を知っているのは、現在いったいどれだけいるのだろうか。
とはいえ、陛下がコレなせいで宰相様に多大な負担がかかっている訳だが。
「私については問題ありません。で、陛下はその芋虫をどのようにお考えですか」
「いつかは国も本腰を入れて動く必要があるとは思うが。今は、な」
「民に任せるというのですか?」
「我らは虫の対処より『なぜ虫が出てきたか』を考えるベきではないのか、宰相?」
「……私の考えが至りませんでした。申し訳ありません」
「いや、私も実際にこの目で見たからこそ判断できたことだ。ここで留守を守ってくれる其方がいるからこそよ」
「勿体無いお言葉です」
お説教()はその後2時間ほど続き、夜の帳がそろそろ落ち切った頃に終わった。
「それでは、本日はこれで失礼いたします」
「おー、今日は晩餐食べて行かないのか」
「流石に毎日は。私の屋敷でも使用人が用意していますので」
「それもそうか。なんかお前がいるのが当たり前になっていたな」
「そうなった理由をぜひ胸に手を当ててお考え下さい」
「……?」
「……はぁ、失礼いたします。お休みなさいませ」
ようやく帰路に就く宰相様。時刻はもう夜の8時。立派な残業、社畜っぷりだ。
明日の朝も早い。明日に備えて簡単に夕食を摂り、お風呂に入る。あ、今日はちょっと時間あるから長湯でもしようか。寝落ちしないようにだけ気をつけよう。お風呂から出たら、少しくらいワインなんか飲んでも許されるだろう。そうと決まったら家令にワインとそれに合ったツマミを用意させなければ。ああ、この前手に入ったと聞いたクラッカーがいいな。今日はいい天気だったから布団もしっかり干されてそうだ。お日様の匂いのする布団に包まれての睡眠。うん、至福。たまにはこれくらい許されないと――
「――旦那様、入浴中申し訳ありません」
「どうした」
「王城から急使です。至急登城するようにとのこと」
「……なにがあった」
「どうやら、泡風呂にした結果部屋中が泡だらけ?になって人手が足りないとのこと」
「すぐ行く。支度を」
「畏まりました」
はぁーーーっ、全く。なんで風呂にもう一回入っただとか言いたいことは沢山あるが。
「この陛下野郎ーーっ!!!!!!!!」
ありがとうございました!
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《登場人物紹介》
◎宰相様
陛下のやらかしの尻拭いをして、上(陛下)と下(大臣たち)の板挟みになっている哀れな漢。城内で怒鳴り声が聞こえてきたらその9.5割は彼によるものである。年々その負担が増えている気がするが、歳のせいだと思っている。なお、それは間違いではなく、無駄に仕事が出来すぎるために、陛下から甘えられている結果であることをまだ気づいていない。
◎陛下
この国を統べる国王。対外的には賢王として知られ、建国以来の良君として国民から絶大的な支持を得ている。しかし、まだ年が若いため前代からの膿(大臣たち)を摘出できていないのが悩み。そんな時に登用した宰相が、狸共と結託せずに職務を全うする姿を見て心を許し始めた。それはそれとして、宰相へはそろそろ何かしないと胃がやばい。でも何やってもなんだかんだ許してくれるし〜という甘えはやめられない。
◎衛兵たち
陛下の暴挙と宰相の苦労を知っている。が、特に何をするでもなくレア度判定で盛り上がっている。平和。
◎料理人たち
食事という戦場を宰相と共に生き抜く、ある意味同士。毎日、いや毎食後に「本日の陛下の反応とその対応」という題でレポートが送られてくるため、それ専用の倉庫がある。こんなに陛下のことを考えて…流石宰相様!と思っている。平和。
◎近衛兵団
陛下の外遊(お城の外でのお遊び)に付き合う人たち。宰相といるときといないときとの陛下の違いに少しビビり気味。とは言え、宰相お手製の『陛下の奇行対策全集※年一回改訂有』はとても役立っている模様。ちなみに、軍部は全部こっち側()だよ。やったね。
◎その他城で働く人たち
宰相様の胃を心配しつつ、陛下のやらかしを止められるのは貴方だけ!と思っている。平和。
◎狸ど、クソジジィ──ん”ん”っ、大臣たち
前王の時代に利権を貪り尽くし、これからも貪る権利があると思い込んでいるおじいさまたち。近々陛下と宰相により鉈が振るわれる予定だが、何も気づいていない。最近自由に動けなくなってきているため、若い2人を苦々しく思っている。でも残念、貴方たちの味方は着々と削られてるよ。
では。