16-7 新しい生活が始まる
サーレットお兄様を見送った直後、「そういえばソフィアリリー様にお渡しするものがあります」とデボラさんに案内されたのは玄関先のちょっとしたスペースだった。
その片隅にはたくさんの荷物が積まれた台車が一台、置かれていた。ラピドスさんが押してきてくれたものらしい。
デボラさんは台車の荷を紐解きながら言った。
「伝書鳩でソフィアリリー様のお世話をさせていただくことは分かっていましたからね。朝一番村の雑貨店の者を叩き起こして、必要な物を一揃い買ってきたのです。“大食らいの狼”もいるとのことで──知らせを受けた時は何のことか分かりませんでしたが──載せられるだけの食料も用意しておきましたよ」
突然来た客人にこれほどまでの用意をしておいてくれたなんて。感謝するのと同時に、驚きを隠せず、私はポカンと口を開けて沢山の荷物を見上げる。
「お住まいが焼けてしまって着替えもなくご不便だったでしょう。お食事をご用意する間、どうぞこちらにお召替えください」
そう言って、デボラさんは私に着替え一式が入った箱を手渡してくれた。見ると、動きやすそうなワンピースに靴、防寒着、下着、それにアクセサリーまである。
「こんな片田舎の村のものですから、大した品でなくて申し訳ありません。ご希望のものは後で注文しておきますので、ご遠慮なくお申し付けください」
「そ、そんな! これで十分ですよ!」
不満などあるはずがない。この灰と煤で汚れた寝巻きから清潔な服に着替えられるだけで十分ありがたかった。
その時、後ろから声を掛けてきたのはライジーだった。
「これ、中に運ぶのか?」
「は? はい、そうですが……」
デボラさんがキョトンとした顔でそう答えると、ライジーは食料の入った箱を三個、軽々と台車から持ち上げた。箱ひとつでもかなりの重さがありそうだ。それを三個も積み上げて持つライジーに、デボラさんは驚いたようであんぐりと口を開けている。
けれど、ライジーがすたすたと食堂に向かって歩くのに気付いて、デボラさんは慌てて追った。
「お待ちください、お客人にそのようなことはさせられません」
「俺が運んだ方が早いだろ。そんで早く飯作ってくれよ。腹減ったんだよ」
ライジーにそう言われてしまい、デボラさんは助けを求めるように私の方を振り返った。
それに対し、私は申し訳なさそうに笑うしかなかった。私も、これまでライジーにはいろんなことを手伝ってもらってきた身だったから仕方ない。




