20-4 この夢を現実に
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緊張で息が詰まりそうになりながらも何とかそこにたどり着くと、私は何度か深呼吸した。それから意を決して、客間の扉を開く。
「──ソフィア!」
後ろからお兄様とライジーに背中を支えられながら入ってきた私に、部屋の中からレジナルド様が心配そうな顔で駆け寄ってきてくれた。
「もう起き上がって平気なのか?」
私に向かってそう問いかけた後、後ろのお兄様とライジーにも目で問いかける。
「……ソフィーが私たちに何か話したいことがあるそうだ」
むすっとした顔でお兄様がそう答えた。私が無理をしていると思っているのだ。
確かにまだ体がふらふらするけれど、このくらい問題はない。それよりもずっと大事なことがあるから。
「私は大丈夫です。皆様にご心配をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
私はそう言って頭を下げた。まずは皆に心配をかけてしまったことを謝りたかったのだ。
それから顔を上げて、本題に進もうかと思った矢先、レジナルド様が先に口を開いた。
「……いや、謝らなければいけないのは俺の方だ。アリア様を連れてきたのは俺だし、そのせいで君をこんな目に遭わせてしまったんだから」
レジナルド様の顔を見て、彼が本当に悔やんでいることが分かった。それからレジナルド様は視線を上げると、私の目をまっすぐ見て言った。
「けど、誓って君に聖女になってもらおうなんていう魂胆があって会いに来たんじゃない。君が賑やかで華々しい生活を苦手としているのは知っているから。君の穏やかな生活を壊したくないんだ。だから明朝、アリア様を連れて、ここを出て行くよ」
「……悪かったわよ。別に、倒れさせるほど追い詰めるつもりはなかったのよ」
レジナルド様の後ろで、ミリさんと共にソファーに座っていた聖女様が、気まずそうな顔でそう呟いた。彼女に続いて、ミリさんも「ソフィアリリー様、申し訳ございませんでした」と落ち込んだ様子で頭を下げた。
「どうか、お気になさらないでください」
そんな二人に、私は慌ててそう言った。聖女様やミリさんが私に害をなそうなんて微塵も思っていないことも、あくまで王国のためにしたことも分かっているからだ。
「あの、こうして聖女様がたにお集まりいただいた訳なのですが、どうしても今、お話ししておかなければと思いまして……」
私がそう切り出すと、聖女様の動きが一瞬止まり、一呼吸おいてから私を見た。
「……なに?」
「……先ほど、夢を見たんです。燃えたはずの私の家が、夢の中では元通りになっていまして、私はそこでたくさんの人と仲良く暮らしていたんです。お料理したり、楽しくお喋りしてました」
「……は?」
聖女様が呆気にとられたようにポカンと口を開けた。レジナルド様とミリさんも同じような反応だ。
「そこでは人間も魔物もなく、皆、種族を越えて親しげでした。私にはそれが、とても素敵な世界だと感じたのです。もし私に、聖女様がおっしゃったような力があるのなら……私はこの夢を現実にしたいのです」




