ミノムシをつつくイクジナシ
教室のカーテンにくるまる。
これが君の日課だ。
学校のカーテンなんて、いつ洗ったのかわからないし、ホコリだらけなのに。
今日も君はおもむろに席を立ち、てくてく17歩。
日当たりのいい後ろの窓際が、君の秘密基地。
カーテンを広げてマントのように羽織ったかと思えば、くるくると2回転。
まるで足の生えたミノムシのようだ。
いたずら心で手を伸ばす。
でも、カーテン越しだとしても体に触れるのは躊躇った。
代わりにシャーペンを握る。
ツンツンとつつくと、ピクっとした。おもしろくてもう一度ツンとすると君は回り出した。
脱皮するんだと気づき、慌てて席にもどって寝たフリをした。
次の日も、君はミノムシになっていた。
思い切って今日もつついてみる。
そしてすぐその場から離れる。
そんな攻防戦を、毎日ひっそりとしている。
つついているのが私だとバレるのは、いつになるだろうか。
はやくバレてほしいような、やっぱり気恥しいような。
なーんて、悠長にしていたら、あっけなくクラス替えで離れてしまった。
君は今もミノムシなのだろうか。
自分はまだ、イクジナシのままだ。