収穫
プラチナたちが耕した畑に、シンシアさんの固有スキル『作物豊かにみのれ〜♪』を施した翌朝。
「すごいだらすごいだら! はやく起きるだらよヘンタイ〜!!」
子供の朝は早い。
ねぼすけかと思いきや、プラチナは朝型らしく今朝も早くから目を覚ましていたようだった。
「んんぅ……なんだよプラチナ。まだ日が昇り始めたばかりだろ? いったいどうしたんだ?」
俺はカーテンの隙間から見えるお天道様に視線をやりつつ、こちらを乱暴に揺らすプラチへと抗議する。
「いいから起きてウチと外にいくだらよ! ほらはやくするんだら〜!」
カブトムシでも見つけた子供のように、プラチナは生き生きとした表情で目を輝かせている。
既にいつもの格好に白いとんがり帽子を被った状態なので、大方早起きして辺りを探検でもしていたんだろう。
その際に何かを見つけてひとりテンションが上がっているに違いない。俺はその程度にしか思っていなかったのだが……
「ーーな、なんだよこれ……!?」
「なっ、驚いただら!?」
プラチナに目的地まで連れてこられた俺は驚きを隠せなかった。
なぜかというと、昨日耕して種を蒔いた状態の畑に、本来ならあるはずのない野菜がみのっていたからだ。
「かぼちゃ、なす、トマト、たまねぎ、にんじん、ピーマン、キャベツ…………すごい、他にもオーダー通りのものがしっかりみのってる……」
「なははははっ! ウチよりもヘンタイの方が驚いてるだら。これ女神の人の力だらよね? すんごいだらなぁ」
「ンンぅ……お二人とも、こんな朝早くからどうしたんですかぁ〜?」
プラチナが感心して畑を眺める中、家の扉が開いて眠そうに目をこするシンシアさんがこちらまでやってくる。
肩紐が片方外れ、滑らかな白い肩が顕になっている。
「見るだら女神の人! お前のおかげでこんなに野菜がみのったんだら〜!」
「ふぇ?」
プラチナに指摘されて畑の方を見るシンシアさんは、その光景を見て目が覚めたようでやがて破顔する。
「わぁ〜! やっぱり土の栄養がよかったんですね。一晩でこんなに大きくなるなんて、わたしも想像以上です。よかった〜!」
シンシアさんは手を合わせてにこにこして喜んでいる。
……「作物豊かにみのれ〜♪」か。
正直、スキル名が激ゆるすぎるのもあってなめてた。
魔族との戦闘では役に立たないのは明白だけど、日常生活を送っていく上ではかなりのチート能力だ。
「ありがたやありがたや……」
俺は思わず自然の恵みをくれた豊穣の女神を拝んでいた。
「わ、ヘンタイ、一人でなにやってるだら? 面白そうだし、ウチも混ぜるだら!」
ふざけるプラチナが俺の横にやってきてシンシアさんを拝む。
『ありがたやありがたや〜』
「え、ちょっと二人ともっ。わたしは自分のできることをやったまでです。恥ずかしいのでやめてください〜!」
照れるシンシアさんが赤くなって胸を抱きしめる。
とはいえこれで、野菜不足にならずに済みそうだった。
ふざけるプラチナとは裏腹に、俺は真心を込めて豊かなみのりを象徴するかのようなその膨らみを拝み倒した。
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