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1-1 見知らぬ土地

異世界ものは初めてです。

魔が差して、深夜テンションで書き始めたので何も考えず気楽にお読みいただければ幸いです。

 目が覚めると、見知らぬ土地にいた。


「・・・んぇ?

 どこ、ここ・・・??」


 辺り一帯見回すと、明かり一つ無い大自然の中だった。地面は草が生い茂り、周囲には木々が立ち並んでいる。どうやら山か森かにいるらしい。


「え・・・?

 なんでこんなところに・・・?」


 目が覚める前の、前日の記憶を思い起こす。朝、眠い目をこすりながら大学に行ったところまでは憶えている。しかし、その後なんの授業を受けたか、何を食べたかなどは何一つ思い出せなかった。


「・・・・ぅ」


 頭が痛い。幸い辺りが明るいため見通しは良かったが、独りで見知らぬ場所に孤立するのはとてもじゃないが耐え難かった。


「あれっ・・・?

 スマホもない・・・?」


 無意識に位置検索をしようとズボンのポケットを探るも、中は空っぽだった。スマホどころか、財布もない。およそ必需品と思われる物は一つも持ち合わせていなかった。


「どうしよう・・・。

 でも、大学の周りには山とか森とかなかったし・・・」


 きっと、少し歩けば街中に出られるだろう。そうすれば、自分の居場所も分かるだろうし、それ以降のこともなんだかんだどうにでもなるに違いない。季節は初夏を迎えていたというのに少しだけ肌寒いのも気になったが、とりあえず開けた場所を目指して歩くことにした。






 やはり山の中だったらしい。靴を土だらけにしながら、ようやく木々の合間を抜けると突然視界が開けた。しかし、待ち望んだ光景はそこには無く、相変わらず見知らぬ土地の見知らぬ人里の景色が眼下に広がるばかりであった。


「・・・・どこなの、ここ?」


 人里も、町というにはほど遠く、村という方がよほどしっくりくる。渓谷に集まったその住宅群は、藁葺き屋根という随分原始的なつくりをしていた。このような集落と言えば、白川郷くらいしか思いつかないが、それにしては壁は石造りでおよそ日本的とは言えなかった。

 村に下りても、地図などの看板も見当たらない。それどころか道路の舗装すらされておらず、街灯も電線も、およそ文明的といえるものが一切排除されているようだった。


「どうして・・・?

 こんなところ、まだ日本にあったの?」


 行き交う人々も、どうみても日本人ではなかった。どちらかといえば西洋的で、目鼻立ちのはっきりしたソース顔なのだ。服装も東欧の民族衣装のような恰好をしており、その上体格も平均して大きかった。


「あの・・・、あ、そっか。

 ええと・・・・。

 Where is here? Japan?」


 何語が通じるかも分からず、拙い英語で所在を尋ねる。すると、話しかけられた村の中年女性はなにやら怪訝な顔をした。


「・・・何言ってんだい?

 もしかして、王都から来たのかい?」


 あ、普通に日本語でいいのか。それにしても随分と練習したのか、ネイティブとも聴き分けられない程流暢な日本語である。顔と言語が一致しないとこんなにも違和感があるのか。


「あ、ええと・・・。

 ここってどこですか?」


「ここ? この村のことかい?

 この村は“トラッツ”の村だよ」


 女性はなおもいぶかしげな表情のままそう答えた。


「トラッツ・・・?

 日本ではないのですか?」


「二ホン? あたしゃ知らないけど、二ホンってとこから来たのかい?」


 日本を知らない? ジャパンといっても通じないし、一体どれほど田舎なのか。否、そもそも日本という言葉を知らない時点でここが日本国内でないことは明らかである。


「・・・ええと」


 もはや何を話せばいいのかも分からない。困惑しているのを見かねたのか、親切にも女性は背中をさすってくれた。


「・・・何か知らないが、困っているようだね。

 時間があるなら、あたしでよけりゃ話聞こうか?」


 私は泣きそうになるのを必死でこらえながら、とりあえず親身になってくれる人間の存在とそのありがたみを噛み締め、彼女について行くことにした。






「名前は何て言うんだい?」


「名前は、安菜です」


「アンナか。珍しい名前だね。

 あたしはプレーって云うんだ。よろしくね、アンナ」


 女性でプレーという名も珍しいが、私は素直によろしくお願いしますと頭を下げた。


「どこから来たんだい」


「それが・・・、分からないんです」


 日本という単語が通じない以上、何をどう話せばいいのか。大学名を言ったところで分かるはずもないだろうし、気づいたら山の中にいましたなどと、戯言もいいところである。


「記憶喪失のようなものかいね」


「・・・そうかもしれません」


「憶えていることは?

 歳はいくつなんだい?」


「今年で二〇になります」


「家族はどこに?」


「えっと・・・、広島に・・・・」


 ヒロシマ?と首を傾げるプレー。そうか、広島もやはり分からないのか。


「ここって、何ていう国なんですか?」


 とにかく、所在を明らかにする必要がある。話はそれからだ。そう思い尋ねたのだが、帰ってきた答えは想像とは全く異なるものだった。


「何言ってんだい。

 ここは“セイラーズ”王国領内に決まってるじゃないか」


 全く聞いたことのない国名。おそらくヨーロッパの、東の方のごちゃっとした内のどこかなのだろう。何度世界地図を見ても覚えられない、ブルガリアとかあるあの辺りの。

 しかしそうだとしても、何故そんなところにいるのだろうか。つい昨日までは、日本の地方国立大に通っていたはずなのだが。


「ヨーロッパ、で合ってますか?」


「???

 セイラーズはセイラーズだよ。

 なんだい、ヨーロッパってのは」


 信じ難いことだが、この村では私の持つ常識が一切通用しないらしい。言葉が通じるのもよく分からない上、思えば街灯など電気を使った文明機器の姿が一切見当たらないのである。


(発展途上国なのかな・・・。

 いや、でもヨーロッパに電気も無い国なんてあるの・・・?)


 謎は深まるばかりである。しかしそんな危機的状況であっても、本能には勝てないらしい。色々考えている内に、唐突にお腹の虫が元気いっぱいに鳴き声を上げたのだ。


「あ・・・」


「あらあら、お腹空いていたのかい。

 いいさね、もうすぐ旦那も帰ってくるだろうし、そろそろご飯を作ろうかね」


 見知らぬ土地、常識の通用しない環境。その中であっても、お腹は普通に空くし案外と頭は冷静でいられるらしい。


「あの・・・、手伝います」


 昔から母の家事を手伝っていた習慣が抜けていないからか、私は考えるよりも先に、行動に移してしまっていた。


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