お客さん確保の巻
むここは早速動き出した。珍しく昼休みになった瞬間に目覚め、急いで屋上に向かった。廉価で本を譲ってくれる古本屋の厚意にかまけて、ここまで本を買い込んでしまったことへの反省が、彼女を突き動かしたのである。背売りのような狼藉を働かないために、値段はなるべく抑えて。無論いつ手に入れたかわからない本や、創作世界から持ち込んだ本もちらほらあるものだから、具体的な利益に関して考えはじめると頭が回る。
「……こんなもんかなぁ。よし、っと!」
小屋の前に文机を引っ張り出して、その上にお勧めの本を10冊ほど並べた。と言ってもお気に入りのタイトルを無作為に選んだせいで、だいたいが目も当てられない様な変態小説になっているが。しかしラインナップ云々以前にこのままでは客が来るはずもない。
むここは昼寝をしながら呑気に待っていたのだが、流石の客の少なさに驚いていた。暫く考えて思い出す。そうだ、告知をすっかり忘れていた。取り敢えずビラでも校内に掲載しようと思い、貰った記憶さえ曖昧な課題プリントを数枚探し当てて、その裏面に「屋上で古本市開催中。無辜書房」とだけ書きなぐった。今日の昼休みはこれを配り歩こう。ばたばたと階段を下りて、C科の教室のある7階へ向かう。壁にぺたぺたとビラを貼っていると、背後から近づく影が。
「やっほー丸眼鏡!!」
青色のふさふさツインテールが揺れている。
「おうひゅっ!?? お前!!」
あまりにも突然の出来事に、驚きで名前すらも出てこなかった。瞬時にお前と怒鳴りつけつつ、力が抜けた様にへなへなと座り込む。吹雪丸はいつもこうやって驚かすように突然話しかけてくるのだ。どう対策すれば良いものか…考えても仕方がないと思いながら、彼女の顔を見上げた。
「あーごめんごめん、四葉ちゃん何やってんの?」
「な、何って古本屋の開設ビラを貼ってるんだよ……住み家がいよいよめちゃくちゃ狭くなっちゃってぇ……」
腰がまだがたがた震える中、眼鏡の角度を直して、なんとか立ち上がって袴のホコリを払った。
「それは四葉ちゃんらしからぬアクティブさでは?」
「…もしかして僕を馬鹿にしてる?」
吹雪丸は若干考えるそぶりを見せて、口元に手を当てた。
「冗談だよ~。えってか古本屋? 四葉ちゃんの本っていっつもめちゃくちゃヤバい! って感じのが多いからなんか凄そう。超気になる!」
「あ、本当? 今からでも全然売れるから来てみなよ、ちゃんとした本も用意してあるからさ~…イヒッ」
「マジ!? 行く~!」
こうして紆余曲折あって、むここはお客さん第一号を無事?に勧誘できたのであった。




