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第一話 夕日に照らされて ➁

翌朝、いつものように7時30分にスマホのアラームが部屋に響き渡る。

総司はぼっーとしながらもアラームを解除し、大きく伸びをして、頭をガシガシと掻く。

ここは総司が借りている1LDKの一部屋だ。3階建てで日当たりもよく、駅に近くて駐車場も完備しているアパートだ。

 洗顔・歯磨き・朝茶漬け・着替えと済ませると、天気予報を確認する。


「今日一日も晴れか……」


 8時過ぎにお金を貯めて購入した中古の軽自動車に乗り込み、会社まで20分の道のりを運転する。 近くの月極駐車場に車を停め、のんびりと事務所まで歩いていく。


「あれ?」


 朝は総司が一番早く出勤し、事務所の解錠をするのだが、昨日に続き鍵が開いていた。


「おはようございまーす」


 ゆっくりとドアを開けると、ジャージにエプロンを付けた姿で床の掃き掃除をしている花蓮と、応接ソファに寝そべり新聞を読んでいる社長がいた。


「おはようございます。先輩」

「おはよう……」


 総司に気付くと華蓮はにこやかに、垣根は不機嫌そうな声色で視線を向けずに挨拶を返す。


「今日もよろしくお願いしますね」

「おぅ、よろしくー」



 総司は垣根に近付き、対面のソファに座る。

 垣根は一度だけ視線を総司に向けると、億劫そうに新聞を机の上に置く。


「今日もまた早いっすね」

「あぁ、規則正しい生活を――とか言われて、7時ぐらいに華蓮に起こされてな……」


 それだけ言うと、あくびをして総司に背を向けるように寝返りをうち、毛布をかぶった。

 それに気付いた華蓮が、ダメですよ。と、言って毛布をはぎとる。


「昨夜は遅かったんだ。もう少しだけ——」

「それは日付変わっても、お酒飲みながらネット麻雀してたからですよね。ダメですよ」

「んぐっ」

「これからは毎日ビールは一本。ゲームは22時までです」

「えぇー……」


 垣根の青ざめていく表情を見ながら、心の中で手を合わせておく。

 机に置かれた新聞紙の一面に見慣れた名称が目に入り、総司は思わず手に取る。

 そこには総司達のいる[歌鏡市(かきょうし)]で暴行事件があったことが書かれていた。

 人通りの少ない路地裏で犯行が行われたらしく、被害者は意識不明の重体で、近くの防犯カメラはジャミングで妨害されていたそうだ。


「[歌鏡市(かきょうし)]ってここじゃねーか」

「あぁ、噛みつき跡や引っかき傷からかなり大型の獣にやられたらしい」

「となると、獣人の仕業ってことか……?」

「こんな街中に獣がいるわけないから、十中八九そうだろうな……」


 顔色を少し良くした垣根はスマホをいじりながら、総司達に視線を向けずに答えた。


「執拗に暴行を加えられ、ジャミング装置も用意されているとなると、周到に用意された犯行だろう」

「じゃあ、通り魔の可能性は少ないってことか……?」

「それはわからん。まぁ、注意はしておけよ」

「はいはい」


 会話をそこで終えて、掃除の手伝いをする。


「それにしても、朝が早いな」

「はい。孤児院で朝食の準備を手伝ったりしてたんです。今朝も朝食を作った後に垣根社長を起こしたんですよ」

「へー……もっと早く起きてたのか。すごい早起きだな」

「え?これくらいが普通じゃないですか?」


 華蓮は不思議そうな顔をして、首をかしげた。

 そ、そうだな……。総司は苦笑いを浮かべながら、これからの垣根の生活に同情した。


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