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わんもあげ~む  作者: 夜咲ひつぎ
4/4

ラブレター

「桐生先輩、5番ですね?」

「うがぁー!なんでわかるんだよ!」

「勘ですよ。桐生先輩ならあてずっぽうでもあたるんで」

「やっぱり先輩、ラブレター弱いですね……」

「お前ら覚えてろよ……」

 放課後、部室に来ると何やらにぎやかな様子で先輩たちが話していた。

「こんにちは」

「お、深月。よく来たな」

「おっす深月」

「深月君、こんにちは」

 あれから少し日が経って、少しお互いの呼び方も変わったりした。

「それ、何してるんですか?」

「ん、これか?『ラブレター』って言うゲームだよ」

「あ、名前は聞いたことあります」

 確かカードの効果を使って他の人を脱落させていくゲームだったっけか?

「俺もやっていいですか?」

「もちろん、と言いたいところなんだが、もうすぐ西園寺が来るからそれからにするか」

 西園寺?聞き覚えのない名前に首を傾げていると、それに気が付いた麻乃先輩がフォローしてくれた。

「そういえば深月君たちはまだ会ってなかったっけ。この部活にはもう一人、三年生の先輩がいるのよ」

「西園寺蛍先輩。この部の副部長だぞ」

 それは知らなかった。ならこの部活は俺と平井さんも入れて全員で6人ということか。

「ところで、深月君は平井さんと一緒じゃないの?」

「日直らしいです。そのうち来ると思いますよ」

『きゃぁぁぁ!』

 そんな会話をしていると、教室の外から叫び声が聞こえてきた。あの声は……!

 慌てて外に飛び出すと、声の主、平井さんが一回り大きい女の人に抱きしめられていた。

「ちっちゃくてかわいい……!」

「いきなりなんですか!?」

 俺が眼前の光景を前に固まっていると、後ろから顔を出した麻乃先輩が女の人に話しかけた。

「西園寺先輩、唯ちゃん困ってるのでやめてください」

「あら、ごめんなさい。苦しくなかったかしら?」

「い、いえ。大丈夫です……」

 西園寺、ということは……?

「この人は西園寺蛍、うちの副部長よ」

「話は聞いているわ。深月君に平井さん、これからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「……よろしくお願いします」

 平井さんは先のことがあったからか、西園寺先輩に少し怯えている様子で俺の陰に隠れている。

「怯えさせちゃったかしら。……そんなところも可愛いわね」

「!?」

 平井さんがさらに俺の後ろに潜り込んだ。まあ、初対面でこんなことされたら怖いわな。

「ふふ、冗談よ。桐生君がゲームしたくてうずうずしてるし、中に入りましょうか」

「そうですね。昴も待ちきれないみたいだし」

 四人で部室の中に入ると、すでにゲームの準備が整えられていた。

「んじゃ、『ラブレター』を早速やってくか」


ラブレター

ゲーム内容

あなたはあるお城にいる姫に恋をした。あなたはお城の様々な身分の者と協力し、他者を蹴落としながら彼女に恋文を届けよう。

内容物

1 兵士 5枚

2 道化 2枚

3 騎士 2枚

4 僧侶 2枚

5 魔術師 2枚

6 将軍 1枚

7 大臣 1枚

8 姫 1枚


ゲームルール

1 各プレイヤーは初期手札として一枚ずつカードを引く。

2 その後、スタートプレイヤーから順番に山札からカードを引く→二枚のうちどちらかを場に出す→次のプレイヤーへ。という流れを繰り返す。


各カードの効果は以下の通り

兵士 プレイヤー一名と兵士以外のカード名を宣言する。対象プレイヤーの手札が宣言と一致していれば、対象プレイヤーは脱落する。

道化師 プレイヤー一名の手札を見ることができる。

騎士 プレイヤー一名と手札の数字の大きさを比べ、小さかった方が脱落する。

僧侶 次の自分のターンまで選択の対象にならない

魔術師 (自分含め)プレイヤーを一人選択する。そのプレイヤーは手札を捨て、山から新たに一枚引く

将軍 プレイヤー一名と手札を交換する

大臣 あなたの手札の合計が12以上になった場合脱落する。

姫 このカードがあなたの捨て札に置かれたときあなたは脱落する。



勝利条件

他のプレイヤーがすべて脱落した場合、生き残ったプレイヤーの勝利となる。

山札がなくなったとき複数のプレイヤーが生き残っていた場合、手札に残っているカードの数字の最も大きいプレイヤーが勝者となる。




「ちなみに王様って言う引いたら即脱落のカードもあるが今回は抜いてやるぞ」

「え~、入れてやりましょうよ桐生さん」

「そうですよ」

「お前ら分かってて言ってるだろ……」

 桐生先輩がすごく嫌そうな顔をしている。運ゲーが嫌いなんだろうか?

「まあまあ、一回くらいいいじゃない」

「しょうがねえなぁ……」

 などと渋々取り除かれた一枚をデッキに入れる桐生先輩。

「桐生先輩は運ゲー嫌いなんですか?」

「嫌いと言うかなんというかだな」

 そう言いながら俺たちはカードを一枚ずつ引いていく。

「桐生さんはゲームの実力は部内一なんだけど、運が壊滅的なんだよ。だから王様入れてやると……」

 入江先輩がそう言った直後、桐生先輩が山からカードを引いた。オチが読めてしまった……。

「うがぁぁぁ!!」

 机にカードを勢いよく叩きつけながら叫び声をあげた。

 うん、なんか知ってた。

「こうなる」

「あはは……」

「だから嫌だったんだよ……」

 そのあと何事もなかったかのようにゲームが再開された(桐生先輩は考慮しないものとする)。

 麻乃先輩がカードを引き、1番の兵士を出して平井さんに視線を向けた。

「唯ちゃん、3番の騎士じゃない?」

「違います」

 それに対し平井さんはカードをチラ見して首を横に振る。

「じゃあ深月のカード見せてもらおうかな」

「……これです」

 入江先輩に手札の魔術師を見られた俺は、次の手番に引いてきた兵士を残し即座に魔術師を切った。残しておいて兵士で脱落させられるのも嫌だしな。

 さて、魔術師を使うからには姫を落としたいが、まだ情報がほとんどないし、適当にやってしまおう。

「入江先輩で」

 捨てられたカードは6の将軍。

「むしろ捨ててくれて助かったよ。これ、使い道に困るからな」

 空振りか。まあ仕方がない。

 次の西園寺先輩がカードを引いた。

「悪いけど、深月君」

「っ!?」

 西園寺先輩は不敵で妖艶な、それでいてどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべる。場に出たカードは騎士。

 俺のカードは1番の兵士。あのカードを出された時点で負けが決まってしまっている。

 先輩のカードは7の大臣。

 姫以外に勝てるカードだが、相手のカードが高ければその分自分のカードがばれる危険が高くなる。俺が1のカードを持っていたところに当てられたのは、果たして運か、はたまた狙ってのことなのか。

「あちゃあ、負けちゃったか」

 それからゲームが進み、桐生先輩、俺に次いで麻乃先輩が脱落し、生存者は平井さん、西園寺先輩、入江先輩となった。

 山のカードは残り二枚、そのうち一枚を今西園寺先輩が引いた。

 残りカードの内訳は兵士、僧侶、騎士、大臣、姫が各一枚ずつ。うち大臣は西園寺先輩がもっている。このままゲームが終われば姫を持っているプレイヤーの勝利となるが果たして。

「ねえ入江君?あなた、“さっきからやけにそのカードを大事に持っているわね”」

「いやぁ、なかなか使い時が見つからなくて」

「そうなの?“使えないんじゃなくて”?」

「……」

 カマかけ。ボードゲームでよくみられる光景だ。これに対し入江先輩は無言で返した。

 西園寺先輩が切ったカードは、

「じゃあ私は――」

 またも、騎士。

「入江君、勝負と行きましょう」

 そして二人はカードを見せ合い、

「あら、負けちゃった」

「くっそぉ」

 大臣を持つ西園寺先輩の敗北。

 なぜか勝った入江先輩が悔し気で、負けた西園寺先輩がどこか上機嫌に見える。

 そしてこれで、入江先輩の手札は一つに絞られた。

「勝てると思ったのだけれど」

 そう言いながら西園寺先輩は平井さんに軽くウインクを送った。

 もしかしてこの先輩、わざと……?

「入江先輩、姫ですね?」

「参りました……」

 入江先輩が手札の姫を捨てゲーム終了。

「やったー!勝ちました!」

 平井さんの勝ちだ。

「おめでとう唯ちゃん」

「ありがとうございます!」

 平井さんは楽し気に、満面の笑みを浮かべている。勝てたことがよほどうれしいのだろう。そんな彼女の様子をみんなが微笑ましい目で見ていた。

「王様抜いてもう一回やるかぁ」

「そうね。流石に桐生君がかわいそうだわ」

「そんなこと言ってられるのも今のうちだからな」

 その後も何戦かやり、勝ったり負けたりしつつも下校のチャイムが鳴る前楽しんだのだった。


というわけでアークライト社のラブレターでした。たくさんの人数でできて5分程度で終わる軽いゲームなのでぜひぜひやってみてください。

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