ARGO
ルール
道具
黒白0~11までのカード各一枚。計24枚
準備
2対2のチーム戦で、チームのプレイヤーは対角に座る。
四人のプレイヤーにそれぞれランダムに六枚ずつカードを渡す。その時他人に数字が見えないようにする。
プレイヤーはもらったカードを裏返しのまま左から数字が低い順に並べる。黒白同じ数字の場合は黒を低い側に置く。
例)黒256白247なら左から
黒2白2白4黒5黒6白7
これで準備は終了。
進行
ジャンケンで負けた人から時計回りで手番を進める。
1 自分のカードを一枚、味方プレイヤーに見せる。
2 自分の好きなカード(1と同じカードでも別でもいい)を一枚手に取り、相手プレイヤーの伏せられたカードの番号を一枚コールする。
3
当たっていた場合
当てられたプレイヤーはそのカードを表にし、手番プレイヤーはもう一度他のカードをコールするか、ターンを終了するか選べる。
外れていた場合
コールしたプレイヤーは手に取ったカードを表にし、ターンを終了。
以降ゲーム終了まで1,2,3を繰り返す
ただし持っているカードを全て表にされたプレイヤーのターンはスキップし、その次のプレイヤーのターンになる。
勝利条件
相手プレイヤーのカードを全部表にする。
敗北条件
味方の全てのカードを表にされる。
麻乃先輩が全員にカードを配っている間、入江先輩が平井さんにルールを教えている。
男子同士、女子同士がそれぞれ対面に座っており、俺の右が平井さん、左が麻野先輩だ。
なので今回は男子対女子のチーム戦という形になる。
まずは手札を確認。黒 2、10。白 7、8、10、11。……ってまた高いカードがえらい固まったな、これ。 ジャンケンの結果、手番は入江先輩から。
ちなみにみんなの配置は
低← →高(b黒 w白)
俺 b2 w7 w8 b10 w10 w11
平井w w w b w b
麻野b b b w b w
入江w w b b b b
という風になっている
「最初か、やだなぁ」
このゲーム、初手は情報が何もないのでほぼ運である。だからこそ負けた人が最初なわけだし。
先輩は二番目に高い黒7を見せてきた。そこで7ってことは結構低いな。……いや、俺が高いのを固まって持ってるから低いのも当然か。
「じゃあとりあえず白0」
「あたりです」
平野さんがめくった最左の白いカードには0の文字。先輩が見事に正解したわけだ。先輩はそのまま続けるかパスするかを選べるが、右端のカードを持ったままなので止める気はないようだ。
「んん、どっちだ?黒0」
「あたり……」
「うっし!ラッキー」
麻野先輩が少々悔しそうにカードを表返した。二連続で当てた入江先輩は勢いに乗ってさらに次の番号を指定する。
「11!」
「残念ハズレ!」
「くそぉ……」
入江先輩は外したので摘まんでいた黒の11を表にした。そして次は麻野先輩のターン。
「11」
「正解です」
自分の最右のカードを返した。右端が白なのは俺と麻野先輩だけなので麻野先輩からすれば白11は確実に俺とわかる。
「2」
「正解……」
そのまま続けて俺の黒2を当てた後、その隣のカードで間違えて、自身の白0を捲った。
次は俺のターン。
「ほぅ……」
「何、そのリアクション?」
「まあちょっとな」
白7を見せると、入江先輩は妙な声を漏らした。まああんな位置に7があったらそんな反応するよな。
俺は黒10を手に麻野先輩と平野さんのカードをそれぞれ一枚ずつ当ててからミスり、平野さんのターン。
それなりに分かってきたが、まだなかなか見えないところがある。だが次に回って来ればおそらく全部当てられる……かな?
さてどうなるか、と平野さんを見たとき、俺はほんの一瞬呼吸を忘れた。
「……3645、違う、472」
前のめりになってテーブルを覗き込む彼女の目はどこまでも深く、見ていると引きずり込まれてしまいそうな危うさがあった。
何事かを考え込んでいる平野さんの瞳はじっと盤上を見据えている。
「よしっ!」
そしておもむろに顔を上げた彼女は、ゆっくりとした動作で自身の中央のカードを手に取った。
「78103467」
平野さんは男子組の裏になっているカードを番号を述べながら片っ端に持ったカードの先で突く。
「……ぜ、ぜんぶあってる」
「……俺もです」
俺と入江先輩のすべてのカードが表になった。つまり俺の完敗である。
まだ一周目。けれど彼女はその場の全てを読み切った。
「平野さんすごい!」
麻野先輩が興奮して平野さんの手を握った。握られた方は一瞬驚いたようだが、すぐにはにかんで見せた
「えへへっ、たまたまです!」
なんて言っているけれど、そんなわけない。ARGOは論理が支配するゲームなのだから。
俺の胸の奥で燻っていた種火がじわじわと、その勢いを強めていく。頬が緩もうとするのをどうにも止められない。
「えっと、それでどうかな?入部の方は」
「その、私、ここに入ります!」
「やった、新入部員確保!」
「わっ」
感極まった様子で麻野先輩ががばっと平野さんに抱き着いた。その肩越しに麻野先輩が俺に目を向けた。
「よかったら深月君もどう?」
久しぶりにボードゲームをやってみたらあっけなく負けて。そのおかげか、心のどこかにあった『どうせまた勝ったら……』なんて馬鹿げた驕りも消えたようだった。
ならこの部活に入ってみるのもいいかもしれない。ここでならきっと楽しい三年間を過ごせるだろう。
けれど、その前にやることがある。
「先輩」
「やっぱりダメか……」
俺が断ると思ったのか、横で見守っていた入江先輩ががっくりと肩を落とす。いや、入る気はあるんですが……。
でも、それよりも――
「もう一回やりませんか?」
負けたままじゃ終われない!
おまけ 第二回戦
「今度は同じようにはいかないぜ」
入江先輩がカードを全員に配り終えて第二ラウンドへ。
「0」
「正解だ」
「2」
「はずれです!」
大きな動きもなくゲームは進み、端の方の数字が数枚捲れたところで俺の手番。次は平井さんか……。俺は自分が持ってる白の4を入江先輩に見せた。
そして俺は自分の黒の11のカードを持って平井さんの中央付近の白を指す。
「”4”」
「えっ?」
「違います!」
不正解だったので11を公開して手番は平井さんへ。また彼女は体を小さく揺らして顎に手を当てる。俺はただじっとその姿を見ていた。わずかな緊張感と高揚感によく似た期待を抱きながら。
「346――」
平野さんがそう言った瞬間、俺は大きく口を歪ませる。
「違う」
「……えっ?」
「よっし決めるぜ!」
動揺している平野さんを置いて、無情にも手番は入江先輩へ
そこからは一気に形勢が変わった。流石に一手まるごと無駄にした代償は大きかったようだ。
「やるじゃない深月君」
「どういうことですか?」
「ブラフよブラフ。深月君は自分で持ってるのにあえてその数字を言ったの」
俺は麻乃先輩がそういった瞬間、手元の白の4を表に返した。
「あっ……」
麻乃先輩が言った通り、俺は自分の持っている手札をあえて言い罠を仕込んだ。とはいえ成功するかは割と賭けだったので危ないところではあったのだが。失敗したら自分の手番無駄に相手に渡すことになるからな。
「うぅ……、もう一回です!」
涙目になって再戦を挑む平野さんはボドゲ―マーの素質があるのかもしれない。
悔しさは強くなる秘訣なのだから。
高校のときよく休み時間によく回していたのがこのゲームです。理系クラスだったのでかなり盛り上がりました。