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サンセットオレンジ  作者: ななる
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XLVIII………天災からの逃亡(文化祭・一日目)


「……PRって、例えばどんなのですか?」

 中庭で今もなお、ラーメンを啜る真由先輩に聞く。

 そんなの決まってるでしょ、なんていいながら真由先輩は、どこからともなくチラシを一枚取り出した。チラシには真ん中に大きく『ミスコンEX!!!』と書いてある。

「真由先輩が出てくれるんですか?」

 真由先輩は首を横に振る。

「ムリムリ、私もう生徒じゃないんだから」

 それもそうか。

「じゃあ柏木さん?」

 出てくれないと思うけど。

 真由先輩はまた首を横に振る。

「確かに瑞希なら優勝できるかもだけど……だめね、インパクトが足りないわ」

 インパクトって?首をかしげていると真由先輩がニヤリと笑った。何だかいやな予感がする。

「そう!PRにはインパクトが必要よ!ミスコンに来た観客だけじゃない、その客から他の人へ伝わるくらいの大きなインパクトが!つまりね……」

 真由先輩がふいに声を潜める。

 ごくり……思わず喉が鳴ってしまった。

「つまり翔太郎、あんたが出場すれば──!」

「そう来ると思った!絶対嫌ですからね!誰が出るか、バーカバーカっ!」

 もう女装はうんざりだ!しかも僕が出たからといって絵葉書がポンポン売れるとは思えない。

「あんたバカって言ったわね!この私をバカって!……ふん、まぁそれはいいわよ。でも絶対ミスコンには出てもらうから!」

「何でですか!絶対面白半分ですよね?さすがにそこまで付き合いきれません」

「違うわ!面白半分じゃなくて、割りと真面目に、100%で面白がってるわ!」

 なおたちが悪い!

「それじゃあ、僕は柏木さんと店番代わらないといけないのでこれで失礼します。サヨナラ!!」

「ああ、待って!待ちなさい!ミスコンは明日だから、ぜーったい、取っ捕まえて出場させてやるんだから!」

 なんと恐ろしい執念。明日は真由先輩から逃げ続ける日になりそうだ。それはともかく急がなきゃ、既に約束の時間を十分ほど過ぎている。

 叫ぶ真由先輩を置き去りにして、美術室へと急ぐ。

 全速力で特別棟の階段を駆け上がり、息切れしながら四階へ。なんとなく予想していたけど、どうやらお客さんは誰もいないようだ。

「あれ?」

 美術室前に設置していたブースが無くなっている。それどころか、売り物の絵葉書も、僕が描いた絵も、そして柏木さんもどういうわけかいなくなっていた。

 取り敢えず美術室の中へ入ってみると、いつも僕が座っていた席に置き手紙が置いてあった。

『翔太郎へ。漫研の部室にいます』

「え、なぜ!?」

 手紙の文字は確かに柏木さんの文字だった。だけど、それ以外何も書いていない。取り敢えず漫研に行くしかないのかな。

 特別棟ではあまり催し物が無いためか、文化祭の最中とは思えないほどここは静かだった。柏木さんはここで一人、何を思っただろう。

 急ごう。少し早足で漫研へと向かった。

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