ⅩLⅥ………デートの奴隷(文化祭・一日目)
文化祭ってのは不思議で、いつもの学び舎は一転して夢の遊び場に変わる。質素で簡素なそれぞれの出し物は、演じる彼らにとってかけがえのないステージなのだ。
夢の熱に浮かされ、廻る客も足取りが軽くなる。
典型的なのがそう、今僕の左にいる騒がしい美大生とかね。
「翔太郎!次はあそこ行きましょう!ジェットコースターだって、ジェットコースター!一体教室の中にどうやって作ったのかしら」
真由先輩に連れられ教室を抜け出した僕は、どういうわけか特に何か言い渡されるわけでもなく、二人ぶらぶらと校内をまわっていた。
私服姿ってだけでも目立つけど、柏木真由と言う人間はともかく騒がしい。どこを歩いても注目の的になってしまうのはもはや一種の才能だろう。
「先輩、僕そろそろ美術室に戻らないといけないんですけど」
いろいろなクラスでもらった景品を抱えて、バランスをとりながら真由先輩にもの申す。けれどそんなこと全くお構い無しで、真由先輩は次の遊び場を探しているようだ。
「大丈夫大丈夫。それよりそろそろお腹空いたわ。たしか一階の方でラーメン出してるとこあったはず……次はそこに決定ね」
レッツゴー!と声をあげてくるりと踵を返す。本当にこの人は一体何を考えているのやら。
「大丈夫じゃないですよ。今美術室に柏木さん一人なんですから。あんまり接客とか得意じゃなさそうだし……」
「もう、うるさいわね。せっかくだれもが振り向くほどの美人とデートしてるんだから、もう少し楽しそうにしたらどう?」
だれもが振り向いてるのは別の理由だと思うんだけど、まためんどくさくなりそうだから黙っておこう。
第一校舎棟と第二校舎棟の間の中庭。明日の一般公開用の仮設テントにて堂々と席を取り、生徒会特製の塩ラーメンを啜る真由先輩は、そうそう、と話を切り出した。
「瑞希から聞いたんだけど、パケメンがまたバカやらかしたんだって?絵葉書500枚でしょ。あっはは!もうどうするの?一体どうやって売るの?本当ウケるんだけど」
麺を啜っては笑い、チャーシューを咥えてはバンバンと机を叩き、スープを蓮華ですくっては「ひーひー」と過呼吸になりながらそれを啜った。なんと汚い食べっぷりだろう。いっそラーメン業界か何かに怒られてしまえば良いのに。
「……本当に困ってるんですよ。毎年の20倍近くを売らないといけないですから、一体どうすれば良いのか……」
大笑いしていた真由先輩も、僕の声のトーンからいかに悩んでいるか察してくれたようで、麺をズズっと落ち着いた調子で啜ると、ゆっくりと飲み込んで真顔でこう言う。
「決まってるじゃない」
そこで一度言葉を区切り、水を口に運んだ。
「PRすれば良いのよ」
はい?




